「実録 ブラック鎮守府24時」完結編

ブラック鎮守府の日常、大和編、および終戦編。
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オットセイ @tobashisakichi

――その一部始終を目撃し、中将と吹雪は立ち尽くしていた。 吹雪が恐る恐る、中将に尋ねる。 「司令官、今のは……」 「……呼びに来たんだ」 「え……?」 「海の底の鎮守府に……」 酷く哀しげな横顔で、中将は告げる。 「彼は否定していたが。艦娘にも、魂はあった。無念という名の……」

2016-05-23 23:07:16
オットセイ @tobashisakichi

「無念……」 噛み締めるような声色で、吹雪は繰り返した。 「ならあの人は……因果応報だったんでしょうか」 「彼は艦娘を虐げ続けた……それは魂への暴虐であり、何より……」 「何より……?」 「……母なる海への冒涜だ」 西日が傾き始めた水平線を見つめ、中将はそう語った。

2016-05-23 23:07:38
オットセイ @tobashisakichi

「赤城も沈んだ。大和も沈んだ。もう彼女たちを戦わせちゃいけない。海がそう告げているんだよ」 「……終わるんですか? この、長い戦争が」 「終わるとも……いや、終わらせなくちゃいけない。彼女たちを安らかに眠らせるためにも」 「……そう、ですね」 吹雪は中将に寄り添い、そっと頷く。

2016-05-23 23:08:02
オットセイ @tobashisakichi

――その後、間もなくして、戦争は終わった。 全ての艦娘は役目を終え、戦後の占領下において初めて人権を与えられた。 彼女たちはそれぞれの道を歩んだ。家族を得た者、職を得た者、それぞれ。 しかし、彼女たちは今でも忘れない。暁の水平線に死者を想い、ただ静かに敬礼を捧げることを。 完

2016-05-23 23:09:06