【ある冒険者の失敗】

サザンクロス @Mizuho_K

【ある冒険者の失敗21】「毒にやられた患者が増えたな……何事だ？」「先生、最近こんな本が出てまして……」それは世にも珍しい毒への耐性を持つ冒険者の手記だった。そこには『空腹に耐えかね薬草毒草問わず食べるうちに毒が効かなくなった』と書かれている。「どいつもこいつも馬鹿だ……」

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【ある冒険者の失敗22】「君への依頼は３つだ。『骨折り拷問器具テスト一日』『新毒薬臨床試験一週間』『飯がまずくなる呪い実験一年間』さあどれがいい？」「いくら実入りがいいとはいえ……じゃあ呪いのやつで」――「うう失敗した……生きる気力が湧かねえよ……」実験終了まで、あと11ヶ月。

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【ある冒険者の失敗23】「武器もない仲間もいない優男に何ができる。わかったらさっさと金を――」男が言い終える間もなく、エルフの優男――ウィンは素手で男の体を貫いた。「冒険者が賊に落ちぶれるとは、悲しいねえ」死体には目もくれず腕を拭う。「エルフは華奢で非力、まあそういう印象だよな」

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【ある冒険者の失敗24】「盗品を取り戻したら『褒美に望むものをやろう』って王様に言われてな」「ほう」「冗談で『この国をください』って言ったらさ」「おいおい」「『ならばこのワシと戦って倒してみせよ』って」「えっ」「めっちゃ強かった……」「俺、この国で悪いことしないと誓うわ……」

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【ある冒険者の失敗25】未熟な死霊術により大騒ぎとなった例は枚挙に暇がなく、そのため術師たちは周囲に細心の注意を払って術を行使する。「ここは墓地も遠いし大丈夫ですよね。ではこのネズミ君を――」それでも人知れず打ち棄てられた死体に術が及ぶこともあり、今宵も術師ロマは町を騒がせる。

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【ある冒険者の失敗：登場人物4】『ロマ』……死者を操る死霊術師の見習い。

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【ある冒険者の失敗26】海賊の財宝が海底洞窟の奥に隠されているという噂を耳にした冒険者たち。素潜りの技術を磨き、数々の罠を退け、かつてない凶悪な魔物の群れを掻い潜り、満身創痍の冒険者はついに財宝のもとへと辿り着いた！「それで、どうやって持って帰るんだこれ……」

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【ある冒険者の失敗27】今月の悲惨な死に様ランキング、第一位は「一発芸、二重人格やりまーす！」と自分に怨霊を憑依させてそのまま呪い殺されたＺさん（仮名）です。Ｚさん（仮名）には、ギルドより蘇生費用と同額の金貨が贈られます。おめでとうございます。～冒険記者ネウおよび編集部一同～

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【ある冒険者の失敗28】「オーク退治かー洞窟に潜るの面倒だなー」「そうだ、洞窟に煙を送って出てきたところをやっちまおうぜ！」「なるほど、そりゃ楽でいいな！」彼らは洞窟に別の出入り口があることに気付かず、煙に追い立てられた大勢のオークにあわや取り囲まれてしまうところでした。

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【ある冒険者の失敗29】「このダンジョンは手付かずの金銀財宝が眠っているが、魔物が手強いって話だ」「じゃあ水攻めしようぜ！ お宝は俺たちのもんだ！」「よし、やっちまえ！」魔法で呼び出された大量の水はあちこちに浸透してダンジョンは崩落、財宝はすべて埋もれてしまいました。

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【ある冒険者の失敗30】「宝の地図にあった塔はここか……」「ここに伝説の、絶対に燃えない壊れない錆びない究極の剣があるんだな？」「なら、面倒だし火攻めしちまおうぜ！」塔を勢いよく包み込んだ炎は、中に巣くう魔物とともに剣の在処を示す二枚目の宝の地図を飲み込んでしまいました。

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【ある冒険者の失敗31】ある勇猛果敢な冒険者は、魔物との戦いの最中に火口へと落ち帰らぬ人となった。人々は彼の死を惜しみ嘆き悲しんだ。ある無名の冒険者は、魔物との戦いの最中に火口へと落ち帰らぬ人となった。人々は火口を戦場に選んだ彼の愚かさを笑い、反面教師として後世へ伝えたという。

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【ある冒険者の失敗32】冒険者であり医師でもあった彼は旅を続けながら新薬研究に力を注ぎ、ついに難病をも治療する万能薬を開発した。人々は彼を賞賛したが、開発の過程で病を患った冒険者や魔物すらも実験対象にしていたと判るやいなや一部の人間は猛反発。やがて彼は追放され薬は闇に葬られた。

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【ある冒険者の失敗33】「世界の半分をやろう」迂闊にも魔王の誘いに乗ってしまい、まんまと世界の半分……闇の世界を渡された。だが世界の支配権までもが得られたので私は闇の世界を統一、魔物を従え新たな勢力を築き、光の世界を魔王から取り戻すべく侵攻を開始した。奴らの軍を一掃する日は近い。

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【ある冒険者の失敗34】飛行機械の発明は冒険者に革命をもたらす――そう思われていたが、実際には高度を維持しなければ墜落の可能性が高く、整備された土地以外には着陸不可能。期待が落胆に変わるまで時間はかからなかった。頑丈さに自信のある者が飛び降りを試みたものの、結果は言うまでもない。

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【ある冒険者の失敗35】今月の悲惨な死に様ランキング、第一位は「死人の気持ちを理解することこそが死霊術師の第一歩！」と墓地に生き埋めになったＮさん（仮名）です。Ｎさん（仮名）には、ギルドより蘇生費用と同額の金貨が贈られます。おめでとうございます。～冒険記者ネウおよび編集部一同～

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【ある冒険者の失敗36】「弓なんて剣も持てない非力な奴が使うもんだろ？」「おっ、その喧嘩買わせてくれよ」聞こえるやいなや、飛来した矢は男の持つ戦斧を砕いた。「すまんね、俺は非力だから粉々にはできなかったよ」「わ、悪かったよ！ どんな技を使ったんだ？」（力任せ、とは言えないなあ）

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【ある冒険者の失敗37】「完全に囲まれたぞ！」「こんな事もあろうかと！」「小麦粉なんかどうする気だ？」「僕知ってる！ フンジンバクハツってやつだね！」「ああ、俺に任せな！」しかし屋外では一向に爆発する気配もなく、悪化した視界に紛れて逃走が成功したのは不幸中の幸いであった。

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【ある冒険者の失敗38】「完全に囲まれたぞ！」「こんな事もあろうかと！」「また小麦粉かよ！」「前は外だったから駄目だったんだ！ 建物の中なら絶対に成功する！」「駄目で元々だ、やっちまえ！」幸か不幸か粉塵爆発の目論見は見事に成功し、「敵」も「味方」もすべてを吹き飛ばした。

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【ある冒険者の失敗39】不老不死が成就した者は不幸に見舞われる。それは「不老不死」だけでは不完全だから――文献を読み漁った彼はそう結論付け、そして願った。不老不死、病、怪我、あらゆる苦痛や不幸を受け付けない体にしろ、と。瞬間、彼は時間の概念から切り離され永遠不変の存在となった。

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【ある冒険者の失敗40】彼が好きなのは友人と一緒に冒険することであって、冒険そのものではなかった。だから友人が引退の際に彼が貰った上質な装備を活かすことなく物置に仕舞っても不思議なことではない。それを知った友人と彼が仲違いをしたとして、間違っていたのは果たして誰だったのだろうか。

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【ある冒険者の失敗41】無敗を誇るブーメランの名手に取材を試みるため、ある城下町を訪れた。噂によれば丁度彼女が闘技場での試合に出場するらしい。取材の前に勇姿を拝見しようと闘技場へ赴いたまでは良かったのだが「いくら強くても"投げないブーメランの使い手"では、さすがに没……ですよね」