【すみゆ忍】「ペイ・オマージ・トゥ・オブリヴィオン」

記憶喪失のニンジャ、ハタモトサイの度はここから始まる! (この小説は #すみゆ忍 の企画でお送りいたします)
0
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「「グワーッ!」」スモトリ崩れとリーゼントは血を吐いて泥の中を転がった。「ッたくよォ…」ニンジャは、ハタモトライノは呆れた脳に3人の男を見下ろした。「墓場で盛ってんじゃねーよタコ共」「グワーッ!」モヒカン男が悲鳴を上げる。「ニンジャ!ニンジャナンデ!」 18 #すみゆ忍

2016-06-07 22:43:39
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ナンデって」ハタモトライノは呆れたようにモヒカンを見下ろした。「居るもンは仕方ねェだろ」「ニンジャ!ニンジャ!」スモトリ崩れも悲鳴を上げた。「何だお前さん等」「そんな」逆リーゼントは呻くように言った。「ニンジャは味方じゃないのか…」「何?」「イヤーッ!」 19 #すみゆ忍

2016-06-07 22:48:56
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

その時、ハタモトライノがアンブッシュのトビゲリに反応できたのは殆ど偶然であった。ハタモトサイは己のニンジャ第六感に従い、5連続バク転で回避。1秒後、ハタモトサイがいた場所を巨躯のニンジャがカワラ割りで砕いていた。「ニンジャだと」ハタモトサイは驚愕の視線を向けた。 20

2016-06-08 20:10:16
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ドーモ」土煙を払い、巨躯のニンジャはアイサツをした。「ムテキシールドです」その巨躯は山の様に盛り上がった筋肉を持つハタモトライノと比較してもなお大きかった。「ドーモ、ムテキシールド=サン。ハタモトライノです」「ハタモトライノ?フンッ」ムテキシールドは鼻を鳴らした。 21

2016-06-08 20:10:53
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「聞かぬ名だな」「そりゃそうだろうな」ハタモトライノは肩を竦める。「ここに来たのは数日前だからな」「余所者か…俺たちの遊びの邪魔をした覚悟は、出来ているんだろうなぁ…?」「兄貴!」「兄貴ヤッチマッテクダサイ!」地に塗れた男達が口々に叫ぶ。舎弟の類であったか。 22

2016-06-08 20:11:15
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」ハタモトライノは仕掛ける。((こいつ等を追い払わねば…教会へ逃げたの女を追って、こいつ等が神父様に害を為すのは必定!))ハタモトライノは勝負を決めるべく、カラテを構えきれていないムテキシールドにチョップを叩きこむ!だがそれはムテキシールドの策であった! 23

2016-06-08 20:12:23
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ムテキ!」ムテキシールドはカラテシャウトを発し、全身から鈍色の光を放った。ハタモトライノのチョップが鈍い音を立てて弾かれる。((これは…))ハタモトライノは驚愕に目を見開く。まるで鉄を殴りつけたかのような感触であった。ムテキシールドがカラテストレートを繰り出す! 24

2016-06-08 20:12:47
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「グワーッ!」ハタモトライノは地面に叩き付けられ、泥に塗れる。「ハハハーッ!」ムテキシールドが勝ち誇るように笑う。「これが俺の必勝の形よ!俺のムテキ・アティチュードを破れる奴はいない!」「「「兄貴!兄貴!」」」舎弟達が活気づく。ハタモトライノはどうにか立ち上がる 25

2016-06-08 20:13:45
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ムテキシールドは悠々と自分の体重を誇るかのように音を立ててゆっくりと近寄る。「ハァーッ…ハァーッ…」ハタモトライノは荒く息を吐き、ムテキシールドが近づく様を見た。((畜生…ガッタガタな俺のカラテじゃ無理があったか…?))ハタモトライノの主観時間が泥めいて凝る。 26

2016-06-08 20:14:17
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ムテキシールドがゆっくりと近づいてくる。ソーマト・リコールか。ハタモトライノは虫食いの知識から辛うじてその単語を引き出した。((ハッ…勝てるか?それとも、死ぬか?))ハタモトライノは己を嗤う。ソーマト・リコールは生き残る知恵を壊れたニューロンから探し出さんとした。 27

2016-06-08 20:14:47
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((あるのか、俺に…生き残るための記憶って奴がよ…))ハタモトライノは自嘲した。彼の記憶は未だ戻らない。ニンジャネームが馴染まないのもそれが原因だ。((俺の過去…過去か))心の中でハタモトライノは近づくムテキシールドを睨んだ。そのスモトリめいて肥えた巨体を。 28 #すみゆ忍

2016-06-08 20:15:08
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

不意に、ムテキシールドの姿が複数ブレた。((何だ…?))ハタモトライノは訝しむ。((ジツ…いや、違う))ムテキシールドの姿は霞み、それは複数のスモトリの姿となった。顔は朧げで伺い知ることができない。((なんだこりゃ…けど、俺はどこかで…この光景を見たような)) 29

2016-06-08 20:15:35
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

(チャンコを飲め)(飲め)(飲むんだ)(飲まないなら死ね)ハタモトライノの脳裏に響く呪詛めいた声。((何だこりゃ…俺はこれを知っている…))ハタモトライノがそう認識すると同時に、ニューロンの奥底から湧き上がって来た。怒りが。((そうだ、俺は…こいつらに殺された)) 30

2016-06-08 20:15:59
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

その時、ハタモトライノのニューロンに怒りと共に映像が雪崩込んできた。過去の記憶が、屈辱の記憶が。((そうだ…俺は昔スモトリだった…だが憧れのゴッドハンド=サンの真似をしてチャンコ072を拒んだら、先輩スモトリに殺されたんだ…そして俺は、俺はニンジャになった…)) 31

2016-06-08 20:16:20
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

思い出した記憶はそれだけではなかった。ニューロンにこびり付いた恐るべき赤黒の影が実像を結ぶ。それは赤黒のニンジャであった。「忍」「殺」のメンポを付けた恐ろしいニンジャであった。((コイツは誰だ…!いや、今はそれはどうでもいい!))ハタモトライノの瞳に炎が灯る! 32

2016-06-08 20:16:42
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

((コイツが俺の記憶の鍵を握るなら…コイツに会うまで死ぬわけにはいかない!こんな奴に負けるわけには…いかない!))ハタモトライノの目に燃え上がる生存本能の炎。それが全身に巡り、カラテを研ぎ澄ます!主観時間が元に戻る。「イヤーッ!」ムテキシールドのカラテパンチ! 33

2016-06-08 20:17:03
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イヤーッ!」ハタモトライノはその拳に掌打を叩きこんだ。双方のカラテ衝突が生み出す斥力で雨粒が吹き飛ぶ。「貴様!」「生憎…」ハタモトライノは睨む!生気に満ちた目で!「死ぬわけにはいかないんだよ!」もう片方の手で掌打を…ハリテを叩きつける!「イヤーッ!」「グワーッ!」 34

2016-06-08 20:17:41
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ムテキシールドがたたらを踏んだ。ハタモトライノは全身の筋肉を隆起させ、ハリテを構えた。「ッ!…ムテキ!」ムテキシールドは咄嗟にムテキ・アティチュードを構える。彼は自分のムテキに絶対の自信を持っていた。例えトレーラーであろうとも自分を殺すことは出来ぬと。 35

2016-06-08 20:18:13
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「イィィィ…」ハタモトライノはもう一つ思い出していた。己のヒサツ・ワザを。困難を撃ち砕く己の矛を!右腕にカラテを込め、ハタモトライノは叫ぶ!己のヒサツ・ワザの名を!「イィィィイヤァーーーーーッ!バズーカ・ハリテ!」KRA-DOOOOOOM!「アバーッ!」 36

2016-06-08 20:18:37
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ムテキシールドは上空を舞い、激痛に悶える。そして見た。臍の部分から千切れ跳んだ己の下半身を。拉げた上半身で吹き飛ぶ己を。「バカナーッ!」ムテキシールドにハイクを詠む暇はなかった。肉塊と化した上半身が地面に叩き付けられ、そして!「サヨナラ!」爆発四散!ナムアミダブツ! 37

2016-06-08 20:19:06
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「「「アイエエエエエエ!兄貴が死んじまった!アイエエエエエエ!」」」舎弟達はムテキシールドの死を認めると、一目散に山を下る。ハタモトライノはそれを追わなかった。必要が無いと感じたからだ。「……」彼は天を仰いだ。重金属酸性雨が一瞬止み、微かに陽が差した。 38

2016-06-08 20:19:33
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ハタモトライノはひとしきり太陽を見上げた後、イクサ前に放り捨てたPVC傘を拾い、再び山を下り始めた。「ハタモトライノ…ハタモトライノ…ちょっと噛み合ってきたぜ」ハタモトライノは己の名の噛み合わせを確認し、記憶を取り戻してから始めて笑った。 39

2016-06-08 20:20:22
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「俺はニンジャだ。戦えば記憶が戻る…なら、俺は戦おう」ハタモトライノは独りごち、そしてネオショーナンの海を見据えた。「まずはあのニンジャだ…赤黒のニンジャ…アイツを辿れば、俺の記憶は必ず見つかる!やるぞ!記憶探しの旅だ!イヤーッ!」ハタモトライノは勢い良く跳躍! 40

2016-06-08 20:20:47
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

ハタモトライノは色付きの風となり、ネオショーナンの街並みへと消えていった。やがて再び、重金属酸性雨が降り始めた。雨は墓所で行われたイクサの痕跡を洗い流した。全てを忘却の彼方へ。いずれこの墓所を敬意を持って訪れる誰かのために。粛々と。粛々と。 41

2016-06-08 20:21:02
Ricardo Berenguer @entry_yahhoo

「ペイ・オマージ・トゥ・オブリヴィオン」おわり #すみゆ忍

2016-06-08 20:21:16