提督代行　加賀：番外　未成の魂　其の壱

猫を愛でる加賀@猫航戦 @love_cat_Kaga

「艤装の最終調整も良好。明日は予定通り出航できるわね」 「感謝する、クロシマ主任」 白衣の女性の声に対し、グラーフ・ツェッペリンはドックの中から声だけを返した。本当は一礼を返したいところだが、視認できない壁の向こうの者にはそうする他になかった。 #未成の魂

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「貴女は終始、かつての自分が未成艦である事を危惧していたけれど、結局それは大した問題ではなかったわ。過去の記憶が曖昧な艦娘は珍しくないし、その武勲からはおよそ想像できないくらいに物静かな子もいるもの」 #未成の魂

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「やはりそういうものか、なるほどな。しかし、私自身がそれを実体験として確認出来た事は、大きな成果だろう」 浴槽の縁に身体を預けて仰向けになる。 #未成の魂

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慣れ親しんだこのドックの世話になるのも今日が最後と思えば感慨深いが、それ以上にこの先広がっているであろう未来と可能性に心が躍っていた。 「私がこれまで聞いてきた話から想像するに、アカギもその”意外な性格の持ち主”に含まれるのだろうか」 #未成の魂

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そうかもしれないわね、と声が返ってくる。 一体どんな艦娘なのだろうか。 この施設で閲覧できる資料は全て公的なものであり、個人にまつわる私的なものは一切残されていない。ツェッペリンにとっては噂のアカギとやらの人物像を想像するには施設に勤務する者から伝え聞く他になかった。 #未成の魂

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「そうそう、明日の出航について一つ訂正事項があるわ」 一度閉じた眼を開き、身体を起こす。 「明日の出航は貴女を含めて三隻で行います。同じ身の上の艦娘同士、仲良くしてあげてね」 「何……私がいくら扱いの面倒な艦だからと言って、秘匿するにも程があるのではないか」 #未成の魂

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単独で遠方の基地まで行けと言ったかと思えば、今度は事前演習も無しに艦隊を組めと言う。ツェッペリンは眉をひそめた。そもそも、同じ身の上とはどういう事だ。 「貴女の言い分は分かるけれど、天城と土佐の出航となれば、我々が神経を尖らせる理由も分かるでしょう？」 #未成の魂

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「アマギとトサ……だと……」 アカギと同じくらい何度も見聞きしたそれらの名前に、強く胸が高鳴るのを感じた。 #未成の魂