お風呂に入りたい艦娘の話

暑くてシャワーを浴びたい気分だったときに考えました。
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同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

燦々と日差しの降り注ぐ中、気持ちいいくらいの晴天の下で、しかし気分は最悪そのもの。 何物にも遮られずに容赦なく降り注ぐ日光と、海面からの照り返しのダブルパンチ。風があるのがせめてもの救いだが、それは状況が多少”まし”になるという話であって、解決を意味しているわけではない。

2016-06-25 14:22:46
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

身体がべたついて気持ち悪い。頭がかゆい。蒸れた汗のにおいが、乾き張り付いた海水が、いい加減我慢ならない。 どうしようもないから、ただ恨み節だけが頭に浮かぶ。

2016-06-25 14:23:23
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

親の仇を見るがごとく足元をじっとりと睨み付ければ、そこにはキラキラと輝いた、透き通った海がある。今すぐ艤装を脱ぎ捨てて、ここで水浴びをすればどれほど気持ちのいいことだろう。 ……しょうもない妄想だ。そもそも私は、あの海面自体が罠だと知っている。

2016-06-25 14:24:05
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

最初浴びているときは具合が良いが、終えてしまえばそれまでとは比にならない不快さが残る。 海のあれやこれやを含んだ海水はどうしようもなく臭く、塩が肌にしみてどうにもひりつき、極めつけにこし切れていない不純物が乾いた後も体中にまとわりつく。

2016-06-25 14:26:05
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

考えればわかる話だ。海水で体を洗えるなら、海水浴場にシャワーなんてあるわけがない。 結局のところ、冷たい汚水でその場をしのいだだけなのだ。あとから真水のシャワーで潮を落とせるならいざ知らず、そんなもの望みようもないここではやるだけ無意味、どころか汚れを継ぎ足す愚行に過ぎない。

2016-06-25 14:27:28
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

浴びるなら、最初から真水でなければならない。 流石に飲料水には手を付けられない。ボイラーは無尽蔵に水を作り出せるのだが、溜めおけるタンクの容量に限界があるのだ。 となると海にある真水は雨くらいしかないが、しかし今度はそれをどうやって利用するかが問題になる。

2016-06-25 14:29:39
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

ちょうど右30度80くらいに雨域がある。あそこに突っ込めば、さぞ気持ちのいいことだろう。 ……雨を浴びることが出来ればの話だが。

2016-06-25 14:32:06
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

ありがたくも艤装の加護は、降り注ぐ雨を弾いてしまう。だったら波飛沫も弾いてくれればいいのに。 まあ、おかげで嵐の中でも実際の軍艦並みの航洋性を発揮できるのだが、いまこの状況では恨めしさばかりがつのる。

2016-06-25 14:34:49
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

加護を切ってしまえば済む話なのだが、残念なことに私の記憶は、そうして一緒に雨を浴びていた友人が奇襲攻撃で血霧になって散ったことを覚えている。

2016-06-25 14:38:43
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

雨で視界が悪く、お互いに接近に気付かなかったのだ。 あわてた哨戒機の、苦し紛れの機銃掃射。加護があれば欠片の痛痒もなかった。

2016-06-25 14:39:29
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

あの日文字通りに消し飛んで、艤装だけになった友人を、私は持ち帰ることはできなかった。 悲しいかな、私達の敵は全く容赦がなく、激しく、抗う術は艤装のみ。唯のか弱い少女が生き残るには、一時たりとも加護を絶やすことはできないのだ。

2016-06-25 14:42:15
同志雪の人@セーラー服 @yuki_8492

結局現状を解決するには、愛しき我らが母港に帰るほかないのだ。 だから早く帰ろう。キンキンに冷えた麦茶、冷房の効いた部屋に、熱いシャワー、柔らかい毛布が私を待っている。 それはとても、気持ちがいいのだ。やわらかくて、あたたかくて、それで……

2016-06-25 14:42:56