稲川淳二の『つぶやき怪談』(2016.06.28)

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稲川淳二 @Junji_Inagawa

その翌日の夜、土田さん、なーんとなくやる事も無いので、 『昨日釣れなかったから、今日もこれから釣り行こう』 と、一人で行ってみたんです。

2016-06-28 22:27:27
稲川淳二 @Junji_Inagawa

舟は繋いだままの状態で、自分の舟に、 ひょいっ、と乗ってね。

2016-06-28 22:27:47
稲川淳二 @Junji_Inagawa

水路に棹さして動かしたんです。

2016-06-28 22:28:19
稲川淳二 @Junji_Inagawa

いつもだったら、他に何人もいるんですよ、釣り人が。 でも、誰もいないんです。

2016-06-28 22:28:47
稲川淳二 @Junji_Inagawa

『今日に限って、誰もいねぇなぁ』 辺りは、シーンとしているんですよ。

2016-06-28 22:29:18
稲川淳二 @Junji_Inagawa

暗い闇です。 時折、この葦の原を風が、すーっと抜けて行くんです。

2016-06-28 22:29:44
稲川淳二 @Junji_Inagawa

『うーん、釣れないなぁ』すると、 ”カプッ” と、音がしたんです。

2016-06-28 22:30:17
稲川淳二 @Junji_Inagawa

『うーん? 何だろう』 と思って、ひょいっと見たんです。

2016-06-28 22:30:46
稲川淳二 @Junji_Inagawa

月明かりの中、向こうの方の水中から、何か丸い物が、 プッ、 と浮き上がったんです。

2016-06-28 22:31:16
稲川淳二 @Junji_Inagawa

ボールのような、どうも、浮きらしいんですがね。

2016-06-28 22:31:36
稲川淳二 @Junji_Inagawa

『おー、なんであんなもん、浮いてんだ?』 と思ったんです。

2016-06-28 22:32:02
稲川淳二 @Junji_Inagawa

その浮きみたいな物は、下半分が水の中なんですよ。

2016-06-28 22:32:26
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それが流れに乗って、 スーッ、と近付いて来たのですが、

2016-06-28 22:32:53
稲川淳二 @Junji_Inagawa

『あーぁ、来るな』 と気にもしないで、見てたんです。

2016-06-28 22:33:14
稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、突然、魚が引っ掛かった浮きのように、それが、 シューーッ、と動いたので、

2016-06-28 22:33:42
稲川淳二 @Junji_Inagawa

『あらーっ?』 っと思ったんです。

2016-06-28 22:34:02
稲川淳二 @Junji_Inagawa

そしたら、ヒューーッ、 と自分のすぐ傍まで来たので、

2016-06-28 22:34:45
稲川淳二 @Junji_Inagawa

『あららっ?』 って思ったから、それが急に、 ボコン、って全部が水面に浮き上がったんです。

2016-06-28 22:35:15
稲川淳二 @Junji_Inagawa

それを何気なーく見た土田さんは、 『ぅうおぉーーーっ!!』 実はそれ、浮きじゃなかったんですよ。

2016-06-28 22:35:45
稲川淳二 @Junji_Inagawa

青黒ーくぶよぶよに膨れ上がった、 男の顔だったって言うんです、髪の毛の抜けた。

2016-06-28 22:36:10
稲川淳二 @Junji_Inagawa

目が、 グーッ、と前に飛び出していて、それが、 ボゴンッ、 と浮いてるので、

2016-06-28 22:36:46
稲川淳二 @Junji_Inagawa

『ぅうおぉっ!』 と思って固まっていたら、それが、

2016-06-28 22:37:12
稲川淳二 @Junji_Inagawa

トントントン、 と流れて来て、自分の腕の所に、 ベトッ、と貼り付いたんです。

2016-06-28 22:37:44
稲川淳二 @Junji_Inagawa

”ペトッペトッ” 「ぅおおぉっっ!!」 もう、無我夢中ですよ、怖いから。

2016-06-28 22:38:14
稲川淳二 @Junji_Inagawa

「うわぁ、うわぁ、うわぁ~~~!」

2016-06-28 22:38:43
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