稲川淳二の『つぶやき怪談』(2016.06.28)

稲川淳二 @Junji_Inagawa

家に帰って来て、 時間構わず駐在さんへ電話を入れ、村の組合にも電話入れて、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おい、今、俺、えれぇもん見た！大変なもん見た！」 言うだけ言って、自分は寝込んじゃったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

よっぽどショックだったんでしょうね…。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

そんな事があってから、１０日程経って、また雨が、 ザァーッ、 と降る日があったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

土田さんは食事が終わった後、部屋へ行って、 布団に潜り込んでいたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

寝ようと思うんだけど、なんだか眠れない。 外は雨が、ザーーッ、 と降ってるんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『あー、雨降ってるなぁ』 と思って、 「うーん」 寝るとも寝ないともつかない感じでいたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

すると、降る雨に混じって、 ”タッ、タッ、タッ、タッ、タッ、タッ” って音が聞こえたんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『ん？　誰か歩いてるなぁ』 外はかなりの雨なんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『何だろ、一体』 と思ったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

この辺りは、家と家の間が離れてるんです。 いわゆる、隣近所と言うのは無いんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

でも、自分の家の周りを歩いてる…。 ”チャプッ、チャプッ、チャプッ”

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『なんだか、俺んちの周りを、ぐるぐる回ってるようだなぁ。 誰なんだろうなぁ』 と思ったんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

”チャプ、チャプッ、チャプッ” そのうち、その足音が、 ”ピチャッ、チャッ、ピチャッ、チャッ”

稲川淳二 @Junji_Inagawa

自分の寝てる部屋の方に、 だんだん、だんだん、近付いて来たんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『あらぁー？』 と思った。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

”ピチャッ、ピチャッ、ピチャッ、ピチャッ” ますます近付いて来て、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

”ドンドンドンッ、ドンドンドンッ” って、今度は雨戸を叩くんです。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『なんだ、玄関から来りゃ良いのに』 と思って、 「あーい？」って言ったら、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ザーッ、 って降っている雨音に混じって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

「おい、これから、水門行かねぇか？」 って声が聞こえるんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

聞き覚えの無い声なので、 「誰だ？」って言ったら、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

ザーッ、 ていう雨音に混じって、 「俺だい」って言うんですよ。

稲川淳二 @Junji_Inagawa

『俺だー？』 っと土田さんは思ったんですが、 『あーぁ』 って立ち上がって、

稲川淳二 @Junji_Inagawa

部屋の明りを点けて、障子を開けて廊下に出て、 「今、開けるよ」って言って、