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女ニンジャ……イディアルプロットは破顔した。渋面を作るモビーディックをよそに、彼女は口と手を動かす。「弟がねえ、来るんだよ」「ほう」「敵としてだけど」「……それでなぜ上機嫌になれるのか。儂にはわかりかねる」「アッハハ!元気な姿を見るのも久しぶりだからね」3 #4215tk
2016-07-05 20:12:34イディアルプロットのサイバネが静かに駆動する。背中の圧縮空気タンクと接続されたクナイ・ダート射出用ガントレットが、太陽の光をわずかに反射した。「私の弟はねー、強いよ。それなりに強い。でもまあモビーディック=サンほどではないね。私の記憶にある限りでは」4 #4215tk
2016-07-05 20:16:34「つまり、今はわからんということだな」「だって会ってくんないんだもんさー。今の住所さえ教えてくれないし……モビーディック=サン、ちょっとがんばって捕まえてきてよ。そしてらインタビューするから」「ビズに私情を挟まんでくれ」モビーディックが溜息をつく。5 #4215tk
2016-07-05 20:20:29「チェッ、ケチンボ。いいよ、後ろの子たちに頼むから」「あたしからも言わせてもらうが、ビズに私情を挟むんじゃあないぞ。イディアルプロット=サン」咎めるような声が彼女らの後ろから飛ぶ。声の主は、身長10フィートはあろうかという巨体の女ニンジャだ。トランプラー。6 #4215tk
2016-07-05 20:24:05見張り塔に佇むのは、何も彼女だけではない。まだ三人ものニンジャが控えている……黒い巨塔めいたシルエットのブラックルーク。メタリックホワイトのサイバネアーマーを装着する小柄なロードパラディン。そして少年めいたイニクスティングイッシャブルである。7 #4215tk
2016-07-05 20:28:13いずれもイディアルプロットの姉、コンセプションを介して集まった手練れのニンジャたち。ここまでの精鋭が集まるとは、正直モビーディックも予想だにしていなかった。あの暴虐極まりないニンジャ王の率いる王国に対抗するフリーランスなど、現れないだろうと思っていたのだ。8 #4215tk
2016-07-05 20:33:06ゆえにキビシイ軍のニンジャも動員している。マイティセイラー、アクアマリン、レティアリイ、ムルミッロ。いずれも粒ぞろいのワザマエ者たち。……しかしモビーディックの見立てでは、ここまで揃えてもまだ互角。「さて、お客さんが来たみたいだよ」軽やかな警告。9 #4215tk
2016-07-05 20:36:25モビーディックのニューロンが加速する。彼の目には未だ船影は見えない。が、イディアルプロットは違うのだろう。イディアルプロットは右のサイバネ・アイのターゲット・サイトめいた瞳孔を収縮させた。「んー……武装船が9隻かな。こっちの倍だね。割と本気っぽい」10 #4215tk
2016-07-05 20:40:06「いずれにせよ迎え撃つのみ……!イヤーッ!」ナ、ナムアミダブツ!モビーディックが見張り塔から身を躍らせる!そしてそのまま飛沫をあげ、海中へ!「気がハヤイなあ……じゃ、みんなー。カラダニキオツケテネ」イディアルプロットは笑い、傭兵たちに手を振った。11 #4215tk
2016-07-05 20:44:20海上!ニンジャ王国の武装船「ヨンゴウ」に乗り込んでいたショートセンテンスは、眉間にしわを寄せて青い海の向こうを睨む。少しずつ姿を現してきた、キビシイ・アイランド所有の見張り塔を。「COFF!COFF!」その背後で、病んだ咳の音が聞こえた。13 #4215tk
2016-07-05 20:48:04咳の主は女である……無論、ただの女ではない。赤い胸当て付きのグレー装束にマントを羽織う、中世の軍人めいた女ニンジャである。コンキスタドールだ。「大丈夫ですか、コニー」そこに心配そうな声をかけたのは、一分の隙もないブラックスーツ姿の女。こちらもまたニンジャ。14 #4215tk
2016-07-05 20:52:44「COFF!……アリガト、ロイ。平気。もう平気だ」コンキスタドールが弱々しく笑った。スーツの女……ロイヤルソヴリンは彼女の肩に手をかける。「船室で休んでいた方がいいです。今日は日差しが強いから」「今の私は指揮官だぞ?情けない姿を見せるわけにもいかないさ」15 #4215tk
2016-07-05 20:57:22「ならばなおのこと!イクサ前に体調を崩しでもしたら……!私は心配でなりません」「フフ!相変わらず優しいね、ロイは」二人の顔が近くなる。ショートセンテンスは黙って視線を前に戻した。その横に、のしのしと歩いてくる巨大な影あり。「あいつらは気にすんな」16 #4215tk
2016-07-05 21:00:02