ネタ帳

今無ヅイ @imanashidui

#DeepSeaBloom

今無ヅイ @imanashidui

草木も眠る丑三つ時。南の海に浮かぶ霧。ソレは意思を持っているかのように動き、増え、世界を飲む。 #DeepSeaBloom

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草木も眠る丑三つ時。その霧に向かっていく流星が、六つ。 意思を持った霧という恐怖にさえ躊躇せずまっすぐと突き進むその流星はやがて霧の中へと消えていった #DeepSeaBloom

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キラキラと月の光を反射しながら突き進む流星のその先頭。 箒のように白のマフラーをたなびかせながら叫ぶ声がする。 その声は重厚な酸素マスクに遮られた無線機越しの叫びだった #DeepSeaBloom

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「夜戦っっっっっっだあぁあああ！！！！」 #DeepSeaBloom

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流星がたなびくのを遡ること12時間。 佐世保鎮守府。彼女たちはそこにいた。 「提督、呼んだ？」 緊急招集である、との言伝で一番最後に執務室に顔を見せたのは川内だった。 「あぁ。川内、神通、那珂、そして綾波、夕立、江風。貴様らに任務が下りた」 #DeepSeaBloom

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「三日前。コロネハイカラ島周辺の海域に、大規模な深海の霧の発現を確認した」 顔色を変えぬまま告げるその言葉は、聞く者の顔色を変えるには充分だった。 「そこは、現在我々の勢力下のはずでは……？」 開いた口がふさがらないといった面持ちの神通がそう応える #DeepSeaBloom

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「そうだ。現在南洋から豪州までの群島はおおかた我々が抑えている。だが、これは事実だ」 そういって提督が机に投げた航空写真には、青々とした海と煌めく空とそれを覆い尽くさんとするドーム状の黒黒とした霧が写っていた。 #DeepSeaBloom

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「たった3日で、ここまで勢力を……！？」 「そうだ、川内。それが問題だ。この侵蝕の速さ、この規模。おそらくここにいるのは『姫級』だ」 『姫級』 その言葉に、六人に動揺が走る。 #DeepSeaBloom

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「すでにラバウルから艦隊が出撃し、周辺海域の防衛を行っている。が、なにしろ勢力がでかすぎる。大本営も呉と横須賀から長門、陸奥からなる第一艦隊と赤城、加賀からなる機動部隊をすでに編成、出撃させた」 だが、とここで言葉を切り、苦々しく煙草に火をつける #DeepSeaBloom

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「侵蝕の速度が早過ぎるということですね」 神通の発言に肯定の意思を載せて煙草で指す。 「たしかに呉・横須賀の一線級の連合艦隊ならば、撃破・制圧は可能だろう……だがそれでは遅きに失する」 提督は海図にコンパスで丸の線を引いていく #DeepSeaBloom

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「1週間、2週間。そのまま同じ速度でこの霧が広がっていったとして、だ」 2週間、と言いながら描いた円は、パプアニューギニア、珊瑚海、そしてオーストリアのシドニーまでもを含んでいた。 「こ、こんなのって……！」 思わず綾波が顔を青ざめる。 #DeepSeaBloom

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「ニューカレドニア、モルッカ海、下手をするとセレベス島まで。この侵蝕を早急に止めねば、我々は豪州への航路を失うどころか南洋での作戦行動拠点を失う」 そこでだ。ぐしゃりと灰皿に吸いかけの煙草を押し付けつつ、目線を目の前の六人に移す。 「君たちの出番だ」 #DeepSeaBloom

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「でも、もう主力艦隊が出てるんだろ？今更佐世保から向かったって……」 「空でも飛ばないかぎり無理っぽい？」 腕を組んだ姿はああ姉妹なんだなと思わせるふたりが口をそろえて言う。 その発言ににやりと笑みを浮かべた提督が言う。 「そう、飛べば間に合うのだ」 #DeepSeaBloom