提督代行 加賀:番外 未成の魂 其の四

三人寄れば。
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猫を愛でる加賀@猫航戦 @love_cat_Kaga

晴れ渡った空の下を南に進みながら、三人は互いの身の上話に花を咲かせていた。 隔離された空間の中で接する相手と言えば、基地の研究員及び職員のみ。他の艦娘と接する事が禁じられていたという理解はしていたが、そもそも他の艦娘が存在するかどうかすら疑わしいほどだった。 #未成の魂

2016-07-03 00:49:07
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三人それぞれがそのような境遇で気心の知れた相手がいなかったため、話す事は幾らでもあった。 「それにしても、そこまでして個別に演習を積ませた理由ってなんだったんだろう。結局はこうして三人で海に出てるわけだし」 腑に落ちない!と太く力強い字体で天城の顔に書いてあった。 #未成の魂

2016-07-03 00:50:06
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「何か理由があって、予定が変わったんでしょうか。私達って、その、色々と秘匿事項が多い扱いでしたし」 眉尻を下げて土佐がこれまでを振り返る。 #未成の魂

2016-07-03 00:52:22
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「……やはり、我々が未成艦由来の艦娘という事に何か重大な意味があるのだろう。今回の航路での護衛がない代わりに、どうやら数日前から大規模な掃討作戦が断行されたようだ」 「え、なにそれ。じゃあこのまま進んでも敵出てこないの?ホントに移動だけ?」 #未成の魂

2016-07-03 00:53:06
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先行していた天城が思わずツェッペリンに振り返る。 「そういう事になるな」 「実戦なしかぁ~……。ちょっとくらいチャンスあるかなぁって思ってたけど、はぁ、これは無理そうだねぇ」 #未成の魂

2016-07-03 00:53:49
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進行方向に背を向けたままがっくりと項垂れる。 高速航行のままよくそんな芸当が出来るものだとツェッペリンは内心呆れた。天賦の才というやつだろうか。 #未成の魂

2016-07-03 00:54:26
猫を愛でる加賀@猫航戦 @love_cat_Kaga

「鎮守府に着けばたくさん実戦出来ますよ、きっと。今は早く行って、みんなを安心させたいなぁって」 「おーそれもそうだねぇ。土佐ちゃんは良い子だなぁ。加賀が羨ましいよ。こんなに優しくて可愛い子が妹なんだもん」 「いえ、あの、私はそんな……」 #未成の魂

2016-07-03 00:54:58
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顔を赤くして土佐が小さくなる。 「赤城さんだって、天城さんに逢いたがっていますよ、きっと」 二人で笑いあい、天城は前を向いた。 「どんな子かなぁ。逢ったら、最初になんて言おう」 遠くを見つめながら、そっとつぶやく。 #未成の魂

2016-07-03 00:55:46
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「あの子の事はなにも知らないけど、資料で初めて顔を見たときに、なんだか懐かしい感じがしたんだ。あたしが知らないだけで、魂はきっと覚えてるんだよ」 #未成の魂

2016-07-03 00:56:23
猫を愛でる加賀@猫航戦 @love_cat_Kaga

魂。その言葉を聞いて、ツェッペリンは不思議な繋がりを感じた。それがあるからこそ、今こうして艦娘として存在しているのではないだろうかと思う。 「私も早く二人に逢ってみたいものだ。今や伝説の艦娘となりつつある一航戦……。その力にどこまで渡り合えるかを試してみたい」 #未成の魂

2016-07-03 01:00:46
猫を愛でる加賀@猫航戦 @love_cat_Kaga

「ははは、ツェッペリンはそういうの好きだねぇ。でも多分、あの子もそうなんじゃないかな」 「アカギがか?」 意外な事にツェッペリンは驚いた。 「そう。あんた達、本質的な部分は多分似てるんだよ。なんとなくそう思う」 楽しみだねぇ、と軽やかに天城は笑った。 #未成の魂

2016-07-03 00:57:24
猫を愛でる加賀@猫航戦 @love_cat_Kaga

「ふむ、何の確証もないとしても、アマギにそう言われると妙な説得力があるな」 「見当違いでも怒んないでよ?」 「笑い話くらいにはなるだろう」 「ははは、そりゃ違いない」 向かう先には雲一つなく、青空が続いていた。 #未成の魂

2016-07-03 00:57:38