【Lancer】Beginning of Rebellion -後編-
- gr_starneon
- 1490
- 0
- 0
- 1
「これで四回目だからな……そろそろギルド軍も無対策とは思えなくて」 大型モンスターを追い立て輸送隊の下へ誘導することで事故に見せかけるいつも通りの手口。だがそういつまでも通用するのだろうか。-82
2016-07-06 00:10:08「ハッ、大丈夫だろ。あそこまで行けばディアブロスの被害を止めるなんてそう容易くはないさ」 アレックスはヘリックと対照的に自信満々な様子である。それでもヘリックの不安は尽きない。そもそも輸送隊は何故あんな見晴らしのいいルートを選んだのだろうか。-83
2016-07-06 00:11:02「でも何か今回は違和感が……」 輸送隊を真っすぐ捉えたディアブロスの角が標的を穿つと思われたまさにその瞬間、ディアブロスの巨躯が砂の中に飲み込まれるように沈み込んだ。 「お、落とし穴だと!? それに護衛のハンターもいるみたいだ」-84
2016-07-06 00:12:01「おい、あれを見ろ!」 緑髪の男、セインの指さす方向を見ると輸送隊の荷車から『兵器』が次々と姿を現す。 「『兵器』が動き出してる……? ご丁寧に搭乗員まで用意してきたってのか!」-85
2016-07-06 00:13:03護衛のハンター達と『兵器』に取り囲まれたディアブロスは罠から抜け出す暇もなく集中砲火を浴び、無力化されてしまった。おまけにギルド軍の兵士達は散開して更なる行動に移っている。明らかに人間を捜している動きだ。 「何てこった……一先ずここを離れよう」-86
2016-07-06 00:14:01この周到さは最早完全に意図的な行動だと気づいた上での対応だ。この場に留まっていてはギルド軍に自分達がディアブロスを嗾けたのだと気付かれてしまう。慌ててこの場を去ろうと振り返ると羽帽子を被った影が立ち塞がった。-87
2016-07-06 00:15:07「そうはいかんな。これ以上貴様達に邪魔をされては困るのだよ」 「なっ!?」 驚いてる内にヘリックの身体から前触れもなく十字に血飛沫が上がった。 「ヘリック!」 地に崩れ落ちるヘリック。対峙する男の手には血の滴る双剣が握られていた。-88
2016-07-06 00:16:02「くそっ、ギルドナイトだと……!?」 噂には聞いたことがあった。ギルドナイトは表向きは特別な任務を受け持つハンター。だが裏ではギルドの危険となるハンターの暗殺も行っているという。 「う、うわぁ!」 一行は凶刃に倒れたヘリックを見捨てて逃げるしかできなかった。-89
2016-07-06 00:17:07「いつまで逃げ回るつもりだ!」 一方のシンキは岩場から岩場へと身を隠しつつ『兵器』の射線から逃れていた。相手はその兵装に物を言わせ正面から追い詰めてくる。 「どうだ! 手も足も出まい!」-90
2016-07-06 00:18:01やがて二つの石柱が聳え立つエリアまでやってきた。シンキは相手に見られる前にその内の手前の石柱の影に身を隠す。『兵器』も綺麗に横一列の隊列を乱さず姿を現した。散開して挟み撃ちにするでもなくただ真っすぐ追いかけてきただけだ。-91
2016-07-06 00:19:03「ふん……奴ら、自分達の優位に慢心してるようだがその連携の雑さが命取りだ」 シンキはギリギリまで引きつけてから身を隠していた石柱から飛び出し、石柱を背にする形でその姿を相手に晒した。バリスタの照準が一斉に彼を中心に捉える。-92
2016-07-06 00:20:06「そこかぁ! 食らえ!」 一斉に放たれる砲撃。だが同時に飛んできた故に避ける事は容易だった。そして代わりにシンキのすぐ背後の石柱が軸を砕かれ、矢を放った彼らに向かって倒れてくる。-93
2016-07-06 00:21:07「うわぁっ!?」 完全に油断していた敵は予想外の出来事に泡を食って車両から逃げ出そうとする。隊列真ん中の二両が石柱の直撃を受けて吹っ飛び、更に両端の二両も吹き飛ばされた車両に巻き込まれ揉みくちゃになる。-94
2016-07-06 00:22:02まだ、生きているようだった。 ヘリックはおぼろげながらも意識を取り戻す。勿論、先程のギルドナイトから受けた傷は深い。本当なら既に死んでいてもおかしくなかった。-96
2016-07-06 00:24:07「……っ」 声が出せない。身体も焼けるように痛みが走る。それでも何故か、立ち上がることができた。 少し遠くを見ると、仲間達がギルド軍の兵士達に引き摺られていくのが見えた。その身体には無数の矢が突き刺さっている。-97
2016-07-06 00:25:05(全部……俺のせいなんだな……) あの様子を見るに間違いなく三人は死んでいる。そしてその元凶は偶然にも『兵器』の存在を知り、それを仲間に話してしまった自分である。ヘリックはその責任に押し潰されそうだった。-98
2016-07-06 00:26:02周りは満場一致でギルド軍への反抗を決めてしまい、慌てて慎重姿勢を説くも空しく妨害活動が始まった。犠牲者を生む過激なやり方に頭を悩ませ、いずれギルド軍に粛清される未来に震える日々が続いた。そして現に最悪の結末を迎えてしまった。-99
2016-07-06 00:27:07何故、皆を止める事が出来なかったのか。悔やんでも悔やみきれなかった。 (俺……どうすればよかったんだろう……なぁ、シンキさんよぉ……あんただったらどうしてたんだろうな……) そう考えつつ、何かに突き動かされるようにヘリックは無意識に歩き始めた。-100
2016-07-06 00:28:01「さて、その乗り物には頼れなくなったようだがどうする?」 苦境を脱したシンキは、辛うじて装甲車から脱出した兵士達の前に立ちふさがる様にして問いかける。 「くっ、あくまで我らに楯突くつもりか!?」-101
2016-07-06 00:29:03「俺はお前らが都合よく話を進めて一方的に襲い掛かってきたから安全を確保しただけだ。何の問題がある?」 シンキはすっかり呆れた様子だった。とにかく話が通じないおかげで『兵器』の相手をするより言葉を交わす方が疲れるのだ。-102
2016-07-06 00:30:20「き、貴様……! こんなことをしてタダで済むと思うなよ」 「そいつはこっちの台詞じゃないか? この状況なら『兵器』が壊れたのは事故にしか思われないし、お前らをここで始末してもそこらのモンスターの餌になるから証拠は残らないだろうな?」-103
2016-07-06 00:31:04「ぐぅ……貴様……」 シンキの鬼気迫る口振りを前に兵士達は怖気づき、後退る。 「て、撤収だ!」 兵士達は蜘蛛の子を散らすように逃げて行った。 「やれやれ、この場は凌げたがまだ弁明が必要だな」-104
2016-07-06 00:32:08結局のところ連中の疑いを晴らすこともできないまま逃がしてしまった。後日ギルド軍からの追及を受けるのは免れないだろう。どうしたものかと考えつつ、シンキは集会所への帰還に向かうのだった。-105
2016-07-06 00:33:03不安を抱えたまま夕暮れの集会所に戻ってきたシンキ。いつものテーブルに着くもそこには誰もいなかった。 「ヘリック達はまだ帰ってきてないのか……遅いな」 その時、集会所の入り口辺りに人が集まり始めている事に気付く。ここにいても仕方ないので様子を見に行くことにした。-106
2016-07-06 00:34:03