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ニンジャスレイヤー二次創作集『テイルス・オブ・ギブン・ネームス』より【レッツ・ロスト・イン・メモリー・ウィズ・チープ・サケ】 #4215tk #すみゆ忍
2016-07-08 23:12:50カコーン……電子コケオドシ音がゼンめいて鳴り響く。オコトのBGMに紛れるようにして流れるのは、ネオサイタマでは聴くことができぬであろう川のせせらぎ音だ。ネオサイタマのとある路地裏に居を構えるパブ「水面」のリラックス・デー。とはいえ、もう客の姿はほとんどない。1 #4215tk
2016-07-08 23:16:19もはやウシミツ・アワー。閉店も近い。残っているのは、カウンター席で突っ伏しているコート姿の男と、それを仕方なさそうに見つめるバーの女店主である。その肌は常人とは違った水色であり、そしてしっとりと湿り気を帯びている。一風変わったバイオ手術の産物か?答えは否。2 #4215tk
2016-07-08 23:20:27一般市民であればそう思い込むのも無理はないだろう。無関心に近い奥ゆかしさから、その由来を聞くこともないはずだ。だが実際は違う……この者はそうした手術を一切受けていない。これは超自然のものなのだ。ニンジャソウルのいたずらによって得られた、予期せぬ産物。3 #4215tk
2016-07-08 23:24:30「どうしようかしらねえ……」女店主、ウェットランジェリーは困ったように呟いた。見下ろす客は豪快にいびきをかいている。ちょっとやそっとでは起きるまい。「もう店じまいしたいのだけれど」溜息混じりの言葉がせせらぎBGMに溶けて消える。そこに来客を知らせるベルが鳴った。4 #4215tk
2016-07-08 23:29:50ウェットランジェリーは視線を移す。フードを目深に被ったレインコートの客が、音もなく入り込んできていた。「スミマセン。もう閉店の時間で」「スワンプクレイン=サン。いるか」客は呟いた。男の声で。ウェットランジェリーは目を細めた。「シツレイですけど、どちら様?」5 #4215tk
2016-07-08 23:32:05「センセイ……ゴッドファーザー=サンの使いだ」客がフードを脱ぐ。無愛想な男の顔が覗いた。そしてメンポが。ナムサン。ニンジャである!「ドーモ。はじめまして。ショートセンテンスです」「ドーモ、ショートセンテンス=サン。ウェットランジェリーです」6 #4215tk
2016-07-08 23:36:13女店主もまたアイサツを返す。彼女がNRSに陥ることはない。同類だからだ。「ゴッドファーザー=サンの?またなにかビズでも頼むのかしら」「知らん。いるのか」ウェットランジェリーは肩をすくめ、カウンター席の男を指差した。男は相変わらずの高いびきだ。7 #4215tk
2016-07-08 23:40:08「ドーモ、スワンプクレイン=サン」男に近づき、ショートセンテンスがアイサツする。男は答えない。ウェットランジェリーが苦笑した。「なにがあったかは知らないけど、だいぶ飲んでたみたいだから」「簡単には起きない?」「たぶんね」そして肩をすくめてみせる。8 #4215tk
2016-07-08 23:44:27ショートセンテンスは低く唸る。彼は眠りこける男を見た。突っ伏す男の腕は謎めいたサイバネティクスであり、背負って帰ろうものなら労力がかかるのは明らかだ。「……起きるまで待つ」「それがいいかもね」ウェットランジェリーは軽く言った。「ご注文は?」9 #4215tk
2016-07-08 23:48:21藍色装束のニンジャが怪訝な顔で女店主を見やる。「注文とは?」「あら。ただ待つだけじゃ退屈だろうとおもったのだけれど」彼女は悪びれた風もなく返事をする。ショートセンテンスはやや考え込み、「ホット・サケを」端的なオーダーを行った。「アイ、アイ。銘柄は?」10 #4215tk
2016-07-08 23:52:12ウェットランジェリーの問いに、ショートセンテンスは眉根を寄せた。「任せる」「そういうこと言っちゃうのね……そっちの懐具合は考えないわよ」女店主は悪戯っぽく笑い、手早くサケの準備を行う。ショートセンテンスはコートの男の隣に座った。彼はまだ寝ている。11 #4215tk
2016-07-08 23:56:15「今日はずいぶん飲んでたのよ、その人」注文の品を差し出しながら、ウェットランジェリーは言った。「酔いが覚めるまでには時間がかかるかもね」「ウカツなことだ」「さあ?その判断はどうかしら。アルコールが入るのもフーリンカザンの一つなのよ。少なくとも、彼にとっては」12 #4215tk
2016-07-08 23:59:03ショートセンテンスは疑わしげに隣の男を見た。そして身動き一つせぬ彼から視線を外し、用意されたトックリからサケを手酌すると一息に煽る。カコーン……電子シシオドシがゼンを引き立てた。静かなひと時が流れる。が、それは来客を知らせるベルの音で破られた。13 #4215tk
2016-07-09 00:04:24「ドーモドーモ、まだやってるかい」甲高い電子音声が響く。ウェットランジェリーは曖昧に笑った。「もう閉店の時間なんですけどね」「でも客がいるじゃねえか。じゃあオレも飲んでもいいよなァ……ああ、ところでよォ」足音が近づき、ショートセンテンスの背中で止まった。14 #4215tk
2016-07-09 00:08:03「お前まだスシ握ってんのか?ショーティ」ショートセンテンスは弾かれたように振り向いた。そして声の主を見て目を見開く。そこにいたのは、痩身の重サイバネ者……「へへ、ショーティ、ショーティ!お前もそんな顔すんだなァ?ドーモ、タイヤキキです。ゴブサタしてまます」15 #4215tk
2016-07-09 00:12:09