【ビギン・トゥ・ドロウ・ア・ガリョウ】#3

アジャイトー @agito710515

「ッ！待て！」アジャイトーが駆けようとするが、「イヤーッ！」アビスクロークの6連スリケン！アジャイトーは防御に回らざるをえない！「続き。あなたとカラテをしたいわけじゃない。オタッシャデー」アビスクロークとクビジッケンの体がみるみる影に沈んでいく！ 20 #agatxt

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「イヤーッ！」スリケンを弾いたアジャイトーは跳びながらカラテパンチを繰り出す！ズガン！…だが、そこに二人のニンジャの姿はなく、拳は突き当たりの壁を破壊した。壁に刺さっていたスリケンと壁の破片が、床に落ちた。 21 #agatxt

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「すいません…その、窓とか壁とか」事務所の医療キットでタカラダの手当をしながら、アジャイトーは謝罪した。「ハハ。まぁ、しょうがないです」タカラダの笑顔はやや引きつっていた。タカラダを縛っていた縄は、今はマキチを縛るのに使われていた。 23 #agatxt

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「まだ、俺たちは生きてるんです。それに金だって残ってる。チョージョーってやつです」タカラダは右側へ視線を向ける。素子や宝石を入れた大きな袋の中身をヤクザたちが改めていた。二つあったうちのもう片方の袋は、ウバイ・クランが持って行ったらしい。抜け目ないことだ。 24 #agatxt

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「…」もはや言葉もなく、アジャイトーは再び頭を下げた。そして。「…彼は、どうします」アジャイトーは背後で縛られ項垂れているマキチを見た。「……」タカラダは無言で目を細めた。息を吐き、よろめきながら立ち上がる。駆け寄るヤクザ達を手で制しながら、マキチに近づく。 25 #agatxt

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マキチは情けない顔でタカラダを見上げる。タカラダは言った。「お前、アテはあるのか」「…」マキチは頭を振る。タカラダは再び息を吐き、言った。「なら、ウチにこのままいろよ」マキチが、そして他のヤクザ達が驚愕の表情でタカラダを見る。 26 #agatxt

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「な…」「ちょ、オヤブン！こいつは俺達を裏切ったんですよ！？いや、初めから騙すつもりでやってきたんです！そんなやつを…」「うるせぇ！！」抗議するヤクザ達をタカラダが一喝！ヤクザ達は黙り込む。「俺の決めたことだ」タカラダが念を押すように付け加える。 27 #agatxt

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マキチは理解できないといった様子で震えていた。「…こんなことになったのは俺達が弱いからだ。俺達は強くならなきゃならん。ナメられねぇようによ」タカラダの言葉に、ヤクザ達はたまらず泣きだす。マキチは震えが止まらない。「お、俺…」 28 #agatxt

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「マキチ。てめえがどんな思惑でいようと、ウチに入ってきたんならてめえはヤクザだ。覚悟決めろや」しゃがみ込み、マキチの目をまっすぐ見ながらタカラダが凄む。その目力に押され、マキチはしばし黙り込む。が。「…ハイ」うつむき、そう返事をした。 29 #agatxt

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「ま、そういうことです」タカラダは立ち上がり、アジャイトーに向き直りながら言った。「俺達は強くなりますよ。ニンジャにも負けねえぐらいに」力強い笑みを浮かべるタカラダを前に、アジャイトーはほんの少し、逡巡した。 30 #agatxt

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このネオサイタマでそんなことは可能だろうか？いや、これからのこの世界で…「…」だが。アジャイトーは考えを振り払い、同じく力強く微笑んだ。彼のこの笑顔を、ヤクザの力を信じたい。アジャイトーはそう思ったのだった。 31 #agatxt

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「どのみち、暫くウチらは身動き取れませんが…ま、なんとかやりますよ。アジャイトー＝サンには大事な探し物があるんでしょう？」タカラダの言葉に、アジャイトーは神妙な面持ちで頷く。「ハイ。これよりもっと長く、いなくなってしまうかもしれません」 32 #agatxt

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またあのニンジャ達が、あるいは別のヤクザ・クランや、ハイデッカーが。ヤクザとして生きていくことは、そういうものを相手取っていかなければいけないということだ。だがこのタカラダの笑顔。それは紛れもない強さの証であった。 33 #agatxt

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実際このマッポーの世において、あれだけの財を隠し持つほどの強かさだ。アジャイトーは再び笑みを浮かべる。「お互い、強く生きましょう」「もちろんです」そうして二人は、固い握手を交わした。 34 #agatxt

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その後、事務所の片付けを手伝ったアジャイトーは、タカラダから貰った報酬（アジャイトーは断ったが、タカラダが無理やり押し付けてきた）を懐にしまい、帰路に着いた。外は日も落ちかけ、仕事終わりのサラリマン達が道に増えてくる頃だった。 36 #agatxt

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アジャイトーはふと、携帯IRC端末を確認した。あのイクサの最中も壊れることなく、それは動いていた。ホッと息を吐き、アジャイトーはメッセージが一件届いていることに気づいた。差出人は情報屋のキリツギだ。 37 #agatxt

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｜｜教会の座標を送る｜｜そこにはそんなメッセージとともに、確かにある地点の座標が添付されていた。さらにその下には、｜｜オンライン手数料請求｜｜というメッセージと、金額、振込口座番号が記されていた。アジャイトーは苦笑し、心の中でキリツギに感謝した。 38 #agatxt

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あの記憶の彼方の教会が、いまは目の前にまで近づいていることを感じる。逸る気持ちを抑え、アジャイトーは人ごみの中を歩いていくのだった。 39 #agatxt

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【ビギン・トゥ・ドロウ・ア・ガリョウ】終わり #agatxt