ベラルーシの小児甲状腺癌罹患者と福島県民健康調査の甲状腺癌罹患者の年齢分布を比較する:事故時年齢ベースと診断時年齢ベースの比較

福島民報記事(2016年8月4日付) 「「小児甲状腺がん増加考えにくい」 長崎大高村教授ら」 http://www.minpo.jp/news/detail/2016080433415 記事で取り上げられている論文(英文、無料) Noboru Takamura, Makiko Orita, Vladimir Saenko, Shunichi Yamashita, Shigenobu Nagataki, Yuri Demidchik. 続きを読む
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上のまとめの主な内容
1)ベラルーシの小児甲状腺癌患者数(1989年までは自覚症状が出てから検査し診断確定した発症例数、日本の笹川プロジェクトによる超音波検診が導入された1990年以降は発症例数+無症状のうちに超音波検診で発見された発見例数)には大きな地域差があり、チェルノブイリ原発のあるウクライナと国境を接する南部のゴメリ州とブレスト州が高い。
2)ベラルーシの人口分布から推定した笹川プロジェクトの実施期間中=1991-1996年のこどもの甲状腺超音波検診の受検率はよくて10%が関の山で、福島県民健康調査(1巡目で81.7%)とは比べ物にならない。
3)ベラルーシの小児甲状腺癌患者数の地域分布(州別よりさらに細かい郡別の分布)は、チェルノブイリ事故で飛散した放射性ヨウ素I131の影響に加え、事故前からの窒素肥料由来の硝酸イオンによる地下水汚染の影響(甲状腺刺激ホルモンの分泌量が増え、細胞の分裂増殖のアクセルが常に踏み込まれた状態になっている)が重なっている。

基礎知識:自然発生甲状腺癌の診断時年齢別罹患率の男女差、人種差

nao @parasite2006

@hkemo1 甲状腺癌の男女比は年齢により、また国により異なります。前回お話ししかけていた広島大学・西先生の解説bit.ly/1M8OpnW に出ていた震災前の日米の比較表(青枠内)を見直す所から始めましょう pic.twitter.com/D3KusqMfra

2015-11-11 16:05:48
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nao @parasite2006

@hkemo1 この表pic.twitter.com/D3KusqMfra の日本の数字は2011年の論文bit.ly/1HGZMl8 に掲載の2005年の数字、米国の数字は2005-2009年の米国がん統計bit.ly/1HGZZEE の年齢別分布

2015-11-11 16:12:58
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nao @parasite2006

@hkemo1 50歳以降も見てみたいし、日本の数字ももう少し新しいので比較したいと思って、国立がんセンターのがん統計グラフデータベース甲状腺癌の部bit.ly/1HH0r5U から2009年の男女別罹患率を取ってきました。(続く)

2015-11-11 16:18:07
nao @parasite2006

@hkemo1 (続き)書き直した比較表がこちら。年齢範囲は0歳から85歳以上まで、男女比も出しました。米国の数字は全人種の値の他に白人と黒人の人種別集計結果も掲載しました。この表をもとに描いたグラフを2枚、次に見ていただきます。 pic.twitter.com/RTtJWE8mbn

2015-11-11 16:24:24
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nao @parasite2006

@hkemo1 1枚目のグラフは甲状腺癌の男女別罹患率が年齢ととともに変化する様子です。このグラフを作って初めて知りましたが、米国の白人と黒人には罹患率の大きな差があり、日本人は男女とも白人より黒人に近いことがわかります pic.twitter.com/yiG17038lV

2015-11-11 16:29:08
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甲状腺癌の自然発症率は、診断時年齢ベースでは男女ともに10歳あたりから立ち上がって、60-70歳ぐらいまでは年齢とともに上がり続けます。したがって「小児」の年齢範囲を18歳までとする考え方に立てば、この範囲では10歳で立ち上がった年齢分布曲線の右上がり部分を見ることになります。
これに対し、福島県民健康調査1巡目の甲状腺癌罹患者数(二次検査の悪性あるいは悪性疑い例数)を事故時年齢ベースで年齢分布図に表すと、18歳での人数が減って見かけ上17歳にピークがあるように見えますが、これは高校生には小中学生と違って学校での集団健診が行われなかったためもともと受診率が低いことに加え、高校3年生は受験のため検査をうける時間をとりにくく、18歳以上になると就職、進学による住所移動のため受診率がさらに下がるためです。この傾向は事故から時間がたつほど強く見られるようになります。

nao @parasite2006

@hkemo1 2枚目は甲状腺癌罹患率の男女比が年齢により変化する様子です。10-14歳と15-19歳では、日本人の男女比は米国の白人の男女比より常に小さいことにご注目ください(黒人は未成年の発生件数が少なすぎて罹患率算出不能) pic.twitter.com/NBTfbdg6AR

2015-11-11 16:40:07
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年齢40-60歳では日本(青線)と米国白人(緑線)の男女比の差はほとんどわからなくなりますが、それ以下の年齢では日本の男女比は米国白人の値を超えることがなく、特に20歳以下では常に下回っているのです。

nao @parasite2006

@hkemo1 この2枚のグラフpic.twitter.com/yiG17038lV pic.twitter.com/NBTfbdg6AR から言えることは、甲状腺癌の発生には人種差があるので、これを考慮せずに白人と日本人のデータを安易に比較するのは危険だということです。

2015-11-11 16:50:38
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nao @parasite2006

@hkemo1 甲状腺癌の発生にこれだけの人種差がある以上、福島のデータは震災前の日本人のデータと比較するのが筋です。pic.twitter.com/yiG17038lV pic.twitter.com/NBTfbdg6AR

2015-11-11 17:13:50
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(余談:「甲状腺癌罹患の男女比で放射線由来かどうか判定できる」説の誤り)

nao @parasite2006

@hkemo1 お申し越しのパンフレットの図pic.twitter.com/cu3AMiGXzL は深川市立病院の松崎道幸医師のスライド(2014年3月26日付け)bit.ly/1ko1eU7 の最後から3枚目の図と同じで(続く)

2015-11-11 17:31:47
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nao @parasite2006

@hkemo1 (続く)福島県の甲状腺検査で悪性又は悪性疑いと診断された子供の男女比をチェルノブイリ事故の翌年以降に生まれて甲状腺がんと診断されたベラルーシの子供&小児がんの放射線治療後に甲状腺癌を発症したベラルーシの子供と比較し、福島の子供の男女比が小さいから放射線が原因と主張

2015-11-11 17:40:19
nao @parasite2006

@hkemo1 「放射線が原因の甲状腺癌なら男女比が小さい」という主張の底にある考え方は、「自然発生の甲状腺癌なら女性ホルモン=エストロゲンにより促進されるので発生率に男女差があるが、放射線照射は男女無関係だから発生率に差がつかない」というもの。

2015-11-11 18:17:58
nao @parasite2006

@hkemo1 この考え方は松崎道幸医師のスライド(2014年3月26日付け)bit.ly/1ko1eU7 のベラルーシのデータの出典になっている2012年のこの論文bit.ly/1ODGmp5 で述べられていますが(続く)

2015-11-11 18:21:10
nao @parasite2006

@hkemo1 松崎氏のスライドが作られる1ヶ月以上前に同じ趣旨のまとめbit.ly/1ODGHbg が公開されている所からみても、「放射線が原因の甲状腺癌なら男女比が小さい」というのはよほど魅力的な仮説なのでしょう。

2015-11-11 18:23:40
nao @parasite2006

@hkemo1 松崎氏がベラルーシと比較した福島の甲状腺検査データは2013年12月31日現在で、当時一巡目の一次検査がまだ進行中でした(一次検査完了は2014年3月)。一巡目の確定版(2015年6月30日現在)との比較がこちら pic.twitter.com/HOX5qeYv0a

2015-11-11 18:35:10
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nao @parasite2006

@hkemo1 日本、米国白人、ベラルーシの10-18歳の小児甲状腺癌の男女比較。日本のがん統計(2009年)は自覚症状が出てから検査し診断確定した発症率がベース。死後解剖の発見率では男女差が縮小。福島の男女比は一巡目完了時には増大 pic.twitter.com/pjSKwCLpUM

2015-11-11 19:01:07
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重要なつけたし:診断時年齢ベースの年齢分布の比較

泉智紀 @jsdfq43wtr

この本出たの随分前だよねぇ. なんで今頃と思ったらliteraかw news.biglobe.ne.jp/domestic/0811/…

2016-08-12 21:52:19
リンク BIGLOBEニュース 福島の子供のがん多発はやはり原発事故が原因だった! 統計学の専門家が証明、原発推進派の「過剰診断」説は嘘 このお盆、全住民がいまも避難生活を余儀なくされている福島第一原発がある福島県双葉郡大熊町で、一部住民に自宅への宿泊を特別に認める特例宿泊が始まった。しかし、こう
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