使えない自転車レーンが作られ続ける? - 自転車専用通行帯の仕様を道路構造令に加える改正案(4月11日までパブコメ募集)についての対話

全国の道路設計の基本仕様を定めている「道路構造令」に自転車レーン(自転車専用通行帯)に関する記述を加えるという改正案が出ています。これに伴い、2018年4月11日までパブリックコメント募集が実施されていました。当初案の問題点、そしてどうすれば良くなるのかを対話形式でまとめています。同タイトルのTwitterモーメントがベースです。
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要旨

現在の改正案では:

  1. 路上駐停車対策が全く示されていない。
  2. 1.5mという不十分な幅員が自転車レーンの標準となる恐れがある。
  3. 「自転車道」の整備対象が60km/h道路のみに縮小されようとしている。

こう変更するのが理想:

  1. 路上駐停車需要が高い道路には単なるペイントのみの自転車レーンは採用せず、代わりに
    • 自転車道を採用する。
    • 自転車レーンであれば、自転車同士の追い抜きに十分な幅を持ち、路上駐停車に塞がれない次のようなレイアウトのものを採用する(将来的に自転車道化することも見据えて)。
      • ドアゾーン余白を持ったparking-protected bike lane(=路上駐停車スペースを用意)
      • 樹脂ポール等の簡易的な構造物により分離された自転車レーン(=路上駐停車スペースは用意しない)
    • 交通量とスピードの抑制を行った上で車道混在形態を採用する(幅員の狭い道路の場合)。
  2. 自転車レーンの幅員を自転車同士の追い抜きに十分なものとし、道路の種類に応じて追加の安全策を施す。
    • 最低1.7m、最大2.25m
    • 幹線道路であれば(自転車道を整備すべきだが、もし自転車レーンを採用する場合は)一般レーンとの間に最低0.5mの緩衝帯を設ける
    • 片側一車線x2の道路では中央線を無くし自動車の実勢速度を抑制
  3. 自転車道の設置要件を緩和する。
    • 60km/h道路にのみ、との設置要件は削除
    • 道路片側集約型の双方向通行自転車道も可能とする(オランダの指針にも含まれ、ロンドンでは主要な整備形態である)

そもそも道路構造令とは

ここから対話本編です。自転車インフラに詳しく、 昨年「世界の潮流から外れる日本の自転車政策」という学会発表をされたろぜつ@dc6ykjgsさんに解説して頂く形でスタートしました。まず、道路構造令(e-Gov)というのは・・・

ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou 道路を作るときに守るべき技術基準(幅員、線形、構造物の配置など)を定めた法令です。明確な法的根拠になるので、ガイドラインよりも影響力が強いです。

2019-04-03 20:58:09
となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

@dc6ykjgs 自転車関係に限らず、日本の道路全般の仕様を決めているのが道路構造令ということでしょうか。 「ガイドライン」は国土交通省・警察庁の「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」ですね(※ろぜつさんは2年ほど前にこのガイドラインに対する意見書を出されています…rfect-comes-from-perfect.blogspot.com/2017/05/blog-p…)。

2019-04-03 21:05:15
リンク perfect-comes-from-perfect.blogspot.com 国土交通省・警察庁の自転車ガイドラインについての意見 自転車行政に携わる人には是非読んでほしい文書です。 下記URLで公開中です。 https://drive.google.com/drive/folders/0B0CpIswQPjYYeTlEVy04NWo1NEU?usp=sharing 1 user 7
ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou はい、道路構造令は「道路の最小限保持すべき一般的技術的基準」(mlit.go.jp/road/sign/pdf/…)を定めたもので、それよりさらに具体的な内容は通達や指針が示すという体系になっています(mlit.go.jp/road/sign/kijy…)。

2019-04-03 21:26:13

※指針=ガイドラインです。

となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

@dc6ykjgs なるほど。 ・道路の設計方法を決めている「道路構造令」 ・道路の使用方法を決めている「道路交通法」 ということですね。 一般の道路ユーザーは自分が守らなければならない道交法のことは(ある程度)知っていますが、人の実際の振る舞いに大きく影響する道路構造令のことは殆ど知らないですよね。

2019-04-03 21:37:35
ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou 交通ルールを守ることが現実的かどうかは道路の構造次第なので、その改正についてパブリックコメントが実施されていることは広く知られて欲しいですね。

2019-04-03 21:49:27

路上駐停車問題

となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

@dc6ykjgs 同感です。 自転車レーン(専用通行帯)の仕様が道路構造令に入るというのは、それだけ聞くと良いことのように思えますが、違うのでしょうか。ユーザーへの影響は? 改正案(search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFil… ※PDF)を見ると ・設置要件 ・幅員 それから合わせて ・自転車道の設置要件 の記述がありますね。

2019-04-03 21:54:42
ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou これらの改正内容は、実は既存のガイドライン(mlit.go.jp/road/road/bicy…)で定められているもので、ガイドライン準拠の自転車レーンは既に各地に整備されています。それらの自転車レーンがうまく機能しているなら今回の改正はユーザーにとって望ましいものと言えるでしょうが、現実は違います。

2019-04-03 22:05:06
リンク note(ノート) 自転車レーンを守護する人々の連鎖(1): サンフランシスコ、ダブリン、ニューヨーク|Kosuke Miyata|note せっかくの自転車レーンが、路上駐車などのせいで機能していない。そういうこと、ありますよね。東京都心に近いところだと都道431号線とか。 こうした問題は日本だけのものではありません。2017年は世界のあちこちで「道路に並んで自転車レーンを守る」アクションが連鎖的に起こった年でした。human-protected bike laneやpeople-protected bike laneと呼ばれる空間を生み出すこれらの活動について、数回に分けてまとめたいと思います。 サンフランシスコ 5月1日、サンフランシスコ 4
リンク note(ノート) 自転車レーンを守護する人々の連鎖(2): メキシコシティ、ボイシ、ブリスベン、ブリュッセル、リヨン、ベルリン|Kosuke Miyata|note 2017年に世界的な広がりを見せた、人々が列をなして自転車レーンを自動車から守るアクション。前回はその火付け役と思われるサンフランシスコ、毎週活動しているというダブリン、300名を超える人を集めるに至ったニューヨークの取り組みを紹介しました。 今回と次回は、他の様々な都市における同様の取り組みを開始時期の順で概観したいと思います。筆者の能力上、英語での情報が少ないものについては背景を十分に調べられていませんので、その点ご留意下さい。なおヘッダー画像はツイッターでSpace for Cycling Bris
リンク note(ノート) 自転車レーンを守護する人々の連鎖(3): ポートランド、レンヌ、フィラデルフィア、ボストン、ロンドン|Kosuke Miyata|note 立ち並ぶ人々の列によって自動車から保護された自転車レーン。2017年は、こうしたhuman-protected/people-protected bike laneを形成する動きが世界のあちこちに広まった年でもありました。まだお読みでない方は、是非シリーズの(1)から順にご覧下さい。 3回シリーズの最終回となる今回は、前回に続き、様々な都市における人々の取り組みを開始時期順で概観します。筆者の能力上、英語での情報が少ないものについては背景を十分に調べられていませんので、その点ご留意下さい。 ポートランド 1 user
ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou 自転車レーン上の路上駐車問題は、啓発や取り締まりで解決できる種類の問題ではないということが、世界の経験から分かっているということですね。日本でも、都道431号(旧玉川水道道路)は路上駐車重点取り締まり路線であるにも関わらず、車にレーンを塞がれる状況が10年近く続いています。

2019-04-03 22:24:32
となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

@dc6ykjgs 「路上駐車重点取り締まり路線であるにも関わらず、車にレーンを塞がれる状況が10年近く続いて」いる都道431号(旧玉川水道道路)はここですね。 国道20号に並行し環七~山手通り付近を繋ぐ道路で、自転車にとっての幹線道路としてのポテンシャルがあるのに活きていない(togetter.com/li/946377)。 pic.twitter.com/TyFss1BDWK

2019-04-03 22:33:51
拡大
まとめ 都道431号線の自転車専用レーンの路駐問題 都道431号線(水道道路)に整備されている約2.2kmの自転車専用レーン(自転車専用通行帯)の路駐問題についてまとめました。適宜更新します。 10042 pv 58 21
ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou (都道431号の自転車レーンは2008年3月31日に供用開始されました: kensetsu.metro.tokyo.jp/jigyo/road/kan…

2019-04-03 22:32:42
ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou この路線は2008年の自転車通行環境整備モデル地区(mlit.go.jp/kisha/kisha08/…)の一つに選ばれたものです。

2019-04-03 22:41:21
となりのじてんしゃ @BikeNextToYou

@dc6ykjgs モデル地区であり、取り締まり重点路線でもあるのに、実態としてはこれまでの11年ずっと都道431号線の自転車レーンは路上駐停車レーンだったわけですね。 同じような状態の自転車レーンが全国にどれだけあるか、推して知るべしというところでしょうか。 道路構造令の改正案は対策を示していますか?

2019-04-03 22:46:34
ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou 改正案の内容を説明する資料(search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFil…)には、その問題に関して「設置要件を規定する」と書かれているだけで、具体的には何も示されていません。

2019-04-03 22:49:39
ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou 2008年のモデル事業から現在までの間には、2012年に初版ガイドライン策定、2016年に改定ガイドライン策定という流れがありましたが、どのタイプの自転車インフラを整備すべきかという選定基準の部分では、路上駐停車というファクターが考慮されていません。

2019-04-03 22:53:58
ろぜつ @dc6ykjgs

@BikeNextToYou ですから今回の道路構造令の改正でも、駐停車需要の高い路線で「タイプ:自転車レーン」を選択できてしまうバグが修正されない可能性が懸念されます。

2019-04-03 22:58:00
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