海老原嗣生『決着版 雇用の常識「本当に見えるウソ」』への疑問
実際に加齢によってどう変化しているのかは、各年の就業構造基本調査を比べてみなければ、わからない(ちょっとそれを今、調べている余裕はない)
2013-01-25 14:14:03★追記★
2002年の就業構造基本調査と2007年の就業構造基本調査のデータを比較した検証をこちらで行いました。→ 就業構造基本調査のデータから海老原(2011)の記述を検証するhttp://t.co/KGpK4pCk
2013-01-30 09:12:06なお、海老原(2012)p.192には、「結果、卒業時点で2割近くいる男子未就業者が、30代中盤までに5%余りに減る(検証14 163-164頁参照)」という記述がある。
2013-01-25 14:24:25★★追記2(2/3)★★ 各世代の加齢による正規雇用率の変化を学歴別に分析した学術論文Abe(2012)の紹介と検討をこちらに追加しましたhttp://t.co/KGpK4pCk
2013-02-03 23:23:42(4)大卒内定率の推移について
海老原(2012)p.194 大卒就職内定率の推移に関する記述もおかしい。「10月末時点で4割近い就職未決定者が出ている。そこから卒業までの半年でそのうちの3割が就職先をみつけている」参照されている図表15-4は厚生労働省・文部科学省の就職内定状況調査。
2013-01-25 14:48:22「そのうちの3割」が何を示すかわかりにくいが、「就職未決定者のうちの3割」ではなく、4割を3割と1割に分けたうちの3割、なのだと思われる。図表15-4のグラフの矢印はおそらく逆方向。21年3月卒の10/1内定率は69.9%で4/1内定率は95.7%。
2013-01-25 14:51:29その差の25.8ポイントをざっくり3割と表現したものと思われる。しかし、10/1調査の内定率と4/1調査の内定率は分母となる就職希望者数が違うので、こういう比較はできない。参考→http://t.co/cb1bIdR5
2013-01-25 14:53:21(5)フリーターの採用実績について
海老原(2012)のp.249には「11年に発表された厚生労働省の若年雇用実態調査を細かく調べると、若年者の採用をできた企業のうち、53%が既卒無業者を正社員採用したことが明らかになっている。」という記述がある。しかしこの記述は適切ではない。
2013-01-26 10:25:48海老原(2012)には53%の計算方法が記されていないが、2011年の『就職、絶望期 「若者はかわいそう」論の失敗』(扶桑社新書)p.35-39【「フリーターは正社員になれない」というウソ】に53%の計算方法が詳述されている。
2013-01-26 10:26:01↓ (誤)「就活に甘える社会人」→(正)「就活生に甘える社会人」
そして『就職、絶望期』のこの個所については、既に「就活に甘える社会人」というブログの【「"フリーターは正社員になれない"というウソ」論の失敗】http://t.co/JFZFlOTn(2012.11.26)によって、根拠を示しながら反論が行われている。
2013-01-26 10:26:16その反論内容は、確認したが妥当なものと考える。かいつまんでいえばこういうこと。海老原(2011)は若年雇用実態調査のから、中途採用を行った事業所21.7%(付表2)を分母に、フリーター採用を行った事業所11.6%(表6)を分子において、53.4%という値を出している。
2013-01-26 10:26:42しかし、中途採用を行った事業所21.7%は過去1年間の実績である(資料p.3と付表2を照らし合わせて理解)のに対し、フリーター採用を行った事業所11.6%は過去3年間の実績である(表6)
2013-01-26 10:26:55したがって、過去1年の実績を分母に、過去3年の実績を分子において割合を算出するのは適切ではない。採用実績が過大に算出される可能性がある。にもかかわらず、海老原(2011)は、フリーター採用実績11.6%は過去1年間の実績であるとして計算を行っている。
2013-01-26 10:27:45海老原(2011)p.36の図表3のタイトルは「過去1年間でフリーターを採用したか?」。これは若年雇用実態調査の「過去3年間」という条件と明らかに矛盾している。
2013-01-26 10:27:56ブログ主は「『過去3年間のフリーターの応募採用状況をみると』という記述を見落とすとはどうしても考えがたく」とコメントされている。見落としであるかどうかはわからないものの、海老原氏の計算が不適切な計算になっていることは間違いない。
2013-01-26 10:28:11(6)中小企業情報のデータベース化構想について
海老原(2012)について、もう1点。これは海老原氏の従来からの主張だが、中小企業の情報のデータベース化(「食べログ」ならぬ「シゴログ(仕事ログ)」)という構想がこの本ではp.260-262にわたって比較的詳しく書かれている。このデータベース化の現実性に私は疑問を持つ。
2013-01-26 10:28:39具体的な構想はこういうものだ。中小企業への新規入職者に対して、県・地域別に1か月の導入研修を行い、振り返り研修時に全員にキャリアカウンセリングを行う。その記録をデータベース化する。
2013-01-26 10:28:55さらに、ブラック企業に対する駆け込み寺を作り、その履歴もDBにする。勤続表彰者の数もDBにする。各大学が授業で行うインターンシップの際には、このDBを参考にする。インターンシップ先に就労した場合は、その情報もDBに入れる。
2013-01-26 10:29:04↓ (誤)インターンシップ修了時 → (正)インターンシップ終了後