牧眞司の文学あれこれ その6

牧眞司の文学あれこれ その5(http://togetter.com/li/559538)からの続きです。
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牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

NEWS本の雑誌「今週はこれを読め! SF編」更新されました。こんかいはロラン・ジュヌフォール『オマル 導きの惑星』(早川書房) を取りあげています。 http://t.co/FNvuRZ47W7

2014-04-22 11:40:36
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

書評のさわり― ゲームの導入は意匠のみならず、作品構造においても重要な意味を持つ。6人はフェジイで負けた者が自らの秘められた過去を告白するルールを追加する。かくしてこの作品は、登場人物がそれぞれの物語を順に語っていく「枠物語」となる http://t.co/FNvuRZ47W7

2014-04-22 11:43:10
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ええ! ナボコフ 『青白い炎』が岩波文庫に入るの! あの傑作が手に入りやすくなるのは欣快(ナボコフ入門篇としても最適だと、ぼくは思っている)。 しかし、また文庫かあ。あの作品の仕掛けだと、四六判の一段組がちょうどいいのだがなあ。 最初に出たのは、大判三段組みの文学全集だったし。

2014-04-22 13:02:30
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

豊崎由美『まるでダメ男じゃん!』(筑摩書房)読了。これは面白いなあ、ヤルなあ。ノリノリで愉快、しかも読書の悦楽に満ちている。ぼくもたいがいダメ人間の話が好きだが、豊崎さんには敵わない。このひとにかかれば『ボヴァリー夫人』も『坊っちゃん』も、ツッコミどころ満載のダメ男小説だ。

2014-04-25 09:43:10
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『まるでダメ男じゃん!』が素晴らしいのは、たんにネタ的についばむのではなく、精読したうえで「作品をして語らせる」姿勢だ。 それぞれのダメ男のダメぶりは、作中のディテール(カッコ良くいえばエクリチュール)に宿っている。

2014-04-25 09:44:13
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

たとえば、川崎長太郎『抹香町』を取りあげた章で、豊崎さんは、女が別れ際に発する「帰ってっ!」「又きてっ。」のセリフ(そしてそのタイミング)に注目して、〔短い言葉ふたつに込められた情報量の多さ〕と看破する。

2014-04-25 09:44:42
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

このあたりが文学読みの達人たるゆえんだ。批評や文学研究とはちがう、読者としての鋭さというものがたしかにある。

2014-04-25 09:44:55
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

豊崎さんに『まるでダメ男じゃん! 2』を書いてもらい、『夏への扉』や「たんぽぽ娘」を俎上にあげてもらいたい。

2014-04-25 09:53:51
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

などと書くと、マキは、アンチ『夏トビ』かよとか、『たんムス』をディスるのかと言われそうだが、ノンノン! 『まるでダメ男じゃん!』の骨法は、さまざまなダメ男のダメぶりを堪能しながら、作品の価値は正しく見きわめるところにある。

2014-04-25 09:58:45
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ボフミル・フラバル『剃髪式』(松籟社)読了。これは幸せな、素敵な、心浮き立つ作品。1920年代、さまざまなものが変わりゆくチェコの街を舞台に、天真爛漫で生命力にあふれた主人公マリエの、普通でヘンテコで騒がしく、ちょっと切ない日常を描く。するりと入りこむ空想の彩りが鮮やか。

2014-04-28 10:53:46
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

『剃髪式』は通常の意味での幻想小説ではないけれど、リアリズムでもない。詩的表現があたりまえのようにまざりこむ。理科実験室的ファンタジイやアニメ的な躍動も含め、ハッとするような情景がちりばめられている。行間からさまざまな彩りの花が次々に咲きほころぶような印象。

2014-04-28 10:54:01
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ジョン・クロウリー『古代の遺物』(国書刊行会)読了。SF、怪奇、前衛実験、主流小説……多彩な傾向(というよりもジャンル越境)の12篇を収録。技巧が冴えわたる。仕掛けものの凄さではなく、過去と現在を滑らかにつなげたり、ちょっとした言葉が余韻になったりと、なんというか平然と凄い。

2014-04-30 17:52:22
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

クロウリーの作品を読むと、アイデアやテーマやストーリーは二の次というか副産物であって、小説空間の肌理、語りの綾や抑揚こそが読書の最大の楽しみに思えてくる。しかし、こういうのがいちばん書評するのが難しい。

2014-04-30 17:52:53
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

横田順彌さんより架電。 横田さん「『柴野拓美SF評論集』パラパラ読んでいるけど面白いな。でも柴野さん、やっぱり一言余計だったりするよな、ときどき」 ぼく「でも、それがまた面白いでしょ?」 横田さん「うん、面白い! でも怒るひといるよな、これじゃ(笑)」 ぼく「ですよねー(笑)」

2014-04-30 21:31:47
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ジョー・ウォルトン『図書室の魔法』(創元SF文庫)読了。これはSFかなあ。むしろ「SFが大好きな娘の青春小説・成長物語(ちょっと魔法あり)」と言ったほうがよい。SFをはじめとする本の話(彼女の感想はけっこう鋭い)や、ファンダムっぽいネタ(あるある的な)がたくさんあって、面白い。

2014-05-01 21:36:09
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ファンダム小説、ぼくの好みの順は『図書館の魔法』<『暗黒太陽の浮気娘』<『天使墜落』<Zombies of the Gene Pool (『暗黒~』の続篇)ですね。 RT @okiraku_k まだ読んでませんけど、もしかして『暗黒太陽の浮気娘』みたいな流れですか!(違ww)

2014-05-01 21:56:00
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

邦訳ありですが、かなり内輪ネタが多いので、当時のアメリカ・ファンダムを知らないとピンと来ないかも。 RT @RappaTei ロバート・ブロック「人間の道」が"SFファンダムだけが核戦争のホロコーストを生き残り、文明復興の基礎となる "話らしいが未読だなあ。//

2014-05-01 22:09:52
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

梨木香歩『海うそ』(岩波書店)。ぼくにとって凄く新鮮な文学でした。霊山を有する南九州の島が舞台で、「海うそ」とはアシカのことであり、また蜃気楼のことでもある。

2014-05-02 13:26:54
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

落人伝説や明治政府の国体政策による民間宗教弾圧という歴史的背景があり、山中の洞窟が異界そのものに思える場面など鮮烈だが、作品全体としては民俗学的な“理”や伝奇小説の“物語”に寄らず、解消しえぬ戸惑いを抱えたままに進んでいく。

2014-05-02 13:27:22
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

終盤で、島のこととは直接関係のない、主人公の過去(絶望的な無力感に襲われる出来事)が明かされる。島での出来事と主人公の事情は、どこかで共振している。

2014-05-02 13:28:27
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

しかし、語られているすべてを、明確な一点へと帰着することはできない。メタファーや象徴性、あるいは心境といったもので説明できないところに、世界もあるし自分もいる。

2014-05-02 13:28:51
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

ありがとうございます! 「病理」ですが、柴野さんは(1)SF批評が成熟していなかった時期に「ファンが感想を発すること」を擁護する立場と、(2)後年にはある程度自覚的になって自己分析(自己言及)的な視野を持とうとした姿勢――この両方があったと思います。@kumonoaruji

2014-05-02 21:41:37
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

柴野さん自身、あのニューウェーヴ批判はのちに「暴論にもなっていない」と仰っていました。また、バラード作品はそれなりに評価されていたと思います。ニューウェーヴの主張がしっくりこなかったのでしょう。 @kumonoaruji

2014-05-02 21:45:21
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

@kumonoaruji はい! ぼくも同じです。素朴なファンである自分を盲目的に肯定するのではなく、かといってそこからの脱却するのもはなく、寄って立つ位置をつねに検証しながら……という感覚でしょうか。

2014-05-02 22:03:32
牧眞司(shinji maki)『『けいおん!』の奇跡、山田尚子監督の世界』刊行 @ShindyMonkey

NEWS本の雑誌「今週はこれを読め! SF編」更新されました。こんかいはジョン・クロウリー『古代の遺物』(国書刊行会)を取りあげています。 http://t.co/MPxdGnjcRk

2014-05-07 21:14:59
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