地獄鎮守府の日常 #18~20

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白金桜花 @YamanekoOuka

単刀直入に、私は告げる、下手な談笑で時間をつぶしたくはないからだ。 すると、舞風は私が来た席を見た後、そっけない表情からにんまりとした笑顔へと変わる。 「んー、あたしが知ってる範囲で、まだ本当にそうなのかわからない、という未確認情報もあるけどいい?」 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:08:59
白金桜花 @YamanekoOuka

舞風はそう言いながら胸ポケットからメモ帳と、鉛筆を取り出す。 「構わないさ」 徒労に終わるのなら別の所で調べるだけ、そう割り切って私は答えた。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:10:35
白金桜花 @YamanekoOuka

そうして舞風から得た情報を基に私達はまず一番近い肉屋にたどり着く。 さまざまな種類の合成肉が立ち並ぶ中、奥のほうに豚肉100g1蔓5千円と値札が置かれた肉の山があった。 「これ、か……どう思う?」 豚肉とされるものを眺めながら、私は黒潮に問いかける。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:11:57
白金桜花 @YamanekoOuka

「え、んー、人工肉と変わらないように見える、かな?」 黒潮に聞いたつもりが、陽炎がぎこちない様子で答える。 「うーん……店長はん、この豚肉どこで仕入れたんや?」 黒潮は考え込んだ末に店長に聞く、店長は老けた中年男性で、目つきは悪い。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:13:06
白金桜花 @YamanekoOuka

「……うちの業務秘密だよ」 そう、店長は冷淡に答えた後、黒潮から目を逸らす。 「ふむ、おおきにな……司令、ちょっと耳ええか?」 「ああ」 すると黒潮が耳元に近づき、小声でささやきかけてくる。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:14:17
白金桜花 @YamanekoOuka

「あの肉良く出来てるけど人工肉や、昔のライブラリ資料で見たブロック肉に比べて脂身が妙に不自然な位置にあるさかい……司令、どうやらこれガセモンや」 黒潮の言葉を受け私は再度肉塊を見る、確かに脂身の位置が不自然で、真ん中にあるものまであった。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:15:00
白金桜花 @YamanekoOuka

「陽炎、行くぞ」 「え?いいの?」 「ここは相場よりも高い、早く行くよ」 そう言って陽炎の手を掴み、私は店から出た。 彼女はいまいち動きがどんくさい、こうして手を引張らなければ、このままグダグダして店長の地雷を踏むこともあるだろう。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:15:44
白金桜花 @YamanekoOuka

そして次に豚牧場へ向かう、舞風の紹介した情報では、ここで仕入れをしているらしい。 香港の工場外の一角にある無機質な窓の無い施設、警備用に艦娘がおり、どこかの提督が運営してるのだと推測される。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:17:05
白金桜花 @YamanekoOuka

提督がこのように艦娘を用いて彼女らがある程度の制限つきで居住や労働を許される鎮守府周辺の市街において、副業を始めるのはそう少なくはない。 私が見学を希望すると、伊19と思わしきスーツを着込んだ艦娘が養豚場の中を案内する。 だが、そこで見たものは…… #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:19:01
白金桜花 @YamanekoOuka

それは極彩色の皮膚をもっていた。 四足歩行で単足であるが胴は蛇のように長い。 顔は豚とトカゲをあわせたようなものに角が生えている。 鳴き声は「きゅもぉぉぉぉ」と、名状しがたく、動きは妙に機敏である。 ライブラリで見た豚とはまったく違う何かだった。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:20:28
白金桜花 @YamanekoOuka

「えっと、これ、何」 陽炎が私の腕を掴みながら、震えた声を出す。 「え、豚さんなの」 さも当然のように、伊19は返す。 「豚って、ふつーピンク色のアレやないか、何やこれ」 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:21:46
白金桜花 @YamanekoOuka

「え?だから豚さんなの。そもそも豚って<大災禍>が起きた時代の後の時代では、不健康だからって食べられなくなってたのね。だからここでは少ない豚さんを上手く環境に適応させた結果。こうなったのね」 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:26:12
白金桜花 @YamanekoOuka

伊19は眼鏡を弄くりながら語る。確かにこの時代では合成肉が主流だ、大規模な核戦争など何だので汚染がひどく、生肉など食べれない時代となった。 そこで合成肉が出た、合成肉の技術は各国に存在し、安価で適当な植物を投げ込めば作れるため、それらが主流となった。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:27:27
白金桜花 @YamanekoOuka

だから豚肉の希少価値が上がり、そして珍味としてしか食われなくなる。 そしてその珍味を安定して生産するために遺伝子操作して、本来の形を失う。 理屈としては当然の帰結だった。 「……何と言うか、色々アレやな、で、グラム何円なんや?」 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:28:14
白金桜花 @YamanekoOuka

「んー、1グラム1000円なのね、高いけどこれは偽者でないという証明金も入ってるから、仕方が無いのね」 その発言に黒潮の顔が青ざめる。グラム1000円、10グラムでも1蔓円、相場の十倍、明らかに手のつけられる値段ではない。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:28:50
白金桜花 @YamanekoOuka

そもそも相場価格は市場の平均価格でしかなく、その上玉石混合偽者も多いなんて当たり前であるため、このような工場で生産されてるものなら、高くなるのも当たり前であはる。 ここの豚は、所謂過去の時代における『ブランドものの肉』なのだ。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:29:16
白金桜花 @YamanekoOuka

そうして私達は途方に暮れ、最後のメモ地であったラーメン屋に到達する。 ラーメン屋の店主は気の良い太った男で、どうにも舞風のメモによると、美味なラーメンを提供して豚肉といううわさがあるだけ、とのことだ。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:30:22
白金桜花 @YamanekoOuka

だが私達は情報の信憑性よりなにより腹が減ったので、チャーシュー麺を食べるために立ち寄ったのである。 「あいよおまち、たんとお食べ」 店主が私達三人にチャーシュー麺を提供する。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:31:08
白金桜花 @YamanekoOuka

肉厚の脂身のこってりと乗ったチャーシュー。 背油たっぷりの醤油スープ。 太い麺。 どっさり乗ったもやしとキャベツとにんにくの山。 麺を口に入れるとスープで染み、太麺の歯ごたえが心地よく、供に野菜を食えば水水しさを感じられる。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:31:58
白金桜花 @YamanekoOuka

そしてチャーシューも絶品であり、合成肉だろうが本当の肉だろうがかまわないほどの美味、それは解けた油としみこんだ汁味、そして肉の柔らかさが形成したものであり。野菜と供に食らうとそのくどさを中和して更なるハーモニーを引き起こしていた。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:33:16
白金桜花 @YamanekoOuka

「美味しい……」 陽炎が感激の声を出す。 「せやな、確かに本物の豚っぽいチャーシューやで」 「よく言われるんですよねぇ、まぁ、ただの合成肉なんよ」 店長の中年男性が気恥ずかしそうな笑顔を浮かべる。 「それでも結構手間がかかったでしょうに」 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:36:53
白金桜花 @YamanekoOuka

私は考える、このチャーシュー、おそらく漬け込むものからしても相当吟味したと。 肉もおそらくただの合成肉ではないだろう、そうとう吟味し、手が込んでいると、手料理経験のそこそこある私は考えた。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:38:11
白金桜花 @YamanekoOuka

「ええ、手間はかけましたよ、すごく、すごく……」 その口調にどこか違和感を覚えながら、私達三人はお腹いっぱいになるまで大量のラーメンを食べるのであった。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:39:23
白金桜花 @YamanekoOuka

そして帰り、路地裏を歩いてるが、意識がどんどんと朦朧としてくる。 どこを歩いてるのだろうか、わからなくなってくる 頭が解けてくる感覚がする。 どういうことだ。 思考する。 しこうする。 しこう。 でき。 な #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:41:25
白金桜花 @YamanekoOuka

猛烈な電気刺激に、私は意識が覚醒する。 目覚めた視界の先にあったのは、白いフードつきコートを着込んだ、雷の顔だった。 彼女はフードを被り、ニッと笑っていた。 最悪の目覚めだ。 #地獄鎮守府の日常

2014-03-24 22:42:55
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