漫画『遊戯王』原作の知識だけでデュエルしてみた

「原作と実際のゲームのルールは全然違うのでは?」と思ったけど…
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先日、「漫画『遊戯王』を全巻読まないと出られない部屋」というセルフ軟禁企画をやった。

『遊戯王』と聞けば、原作に登場するカードゲームを元にしたオフィシャルカードゲーム(ocg)が世界中で遊ばれていることをご存じの方も多いだろう。

私は「出られない部屋」をやるにあたって原作未読だったのはもちろんのこと、

カードゲームの存在は知ってるが、ルールは一切知らない

というステータスで挑んだ。そして読みながら、こんな疑問が浮かんだ。

「漫画原作の知識だけでどこまでルール把握できるんだろう?」

前知識がほとんどない状態でも「原作の展開とリアルのOCGはルールがだいぶ違うんだろうな」ということはなんとなく想像がつく。なんせ、原作のカードゲームの展開にツッコミどころが多すぎたから。

出られない部屋の様子

ということで、無事原作を読了して出られない部屋を脱出した後、友人のデュエリスト※とデュエルしてみた。

※『遊戯王』において、プレーヤーのことを指す単語

原作のカードゲームの大まかなポイントを紹介するぜ

ocgの元になったのは、原作内で登場する『マジック&ウィザーズ(以下、M&W)』という架空のカードゲームである。原作でM&Wが初登場するのは第9話(ジャンプコミックス版の2巻時点)だが、約8年に渡る連載期間中、そもそも原作中のM&Wのルールもどんどん変化&複雑化していった。

遊戯が指に挟んでるのがM&Wのカード(画像はAmazonより)

出られない部屋をやるにあたり、一気に読了したこともあって、原作中のルールを逐一記録・把握できたわけではない。読了時点で記憶に残っていた超・超大まかなルールは、以下の通りである。

ルール1、相手のライフがゼロにしたほうが勝ち

各プレイヤーには「ライフポイント」が与えられる(ルールによって4000とか8000とか変動する)。プレイヤーは、各自が持つカードを駆使して「攻撃」や「守備」を選択しながら、相手のライフポイントを減らすべく攻防を繰り返すことになる。

最終的に、相手のライフポイントを先にゼロにしたほうが勝ちとなる。

ゲーム中のお互いのライフポイントを確認できる公式のカウンターアプリもある。便利

ルール2、「モンスターカード」「魔法カード」「罠カード」がある

カードには大まかに分けて「モンスターカード」「魔法カード」「罠カード」がある。

「モンスターカード」には「攻撃力」と「守備力」が割り振られている。自分のモンスターカードの性能が、相手のモンスターカードのそれ上回った場合、その差分のポイントだけ相手のライフにダメージを与えたり、相手のモンスターを消滅させたりできる。(本当はもっと複雑だけど、だいたいこんな感じ)

モンスターカードたち

「魔法カード」は自分のモンスターの性能を上げたり、相手に特定のカードを使えなくするペナルティを与えたりと、攻守ともにいろんな効果がある。もう本当にいろんな効果がある。

緑色っぽいのが魔法カード

「罠カード」はゲーム内で特定の条件を満たすことで発動できる「トラップ」の役割を果たす。特定のモンスターカードを出せなくしたり、相手の魔法カードを無効にしたりと、こちらも本当にいろんな使い方ができる。

赤紫っぽいのが罠カード

ルール3、負けたら「闇の罰」を受ける

カードゲームに負けた場合、精神を崩壊させられたり、「死を体感」させられる等、手痛い罰ゲームが待っている。最悪の場合敗者を死に至らしめる。

罰ゲームの内容は勝者が任意で決める。理不尽。

2008年頃に遊ばれていたルールでデュエル

協力してくれたデュエリストは、ライターのりばすと氏。りばすと氏は、「(本人いわく)ガチ勢とまではいかずとも」小学校の時から社会人の今にいたるまで何かしら遊戯王のコンテンツに触れては実際にデュエルもやってきた男である。

もちろんりばすと氏も原作は履修済み

ocgのルールは、時代の移り変わりとともに変化しているらしい。今回は「原作連載当時の流れに最も近い形で」ということで2008年くらいに遊ばれていた「新エキスパートルール」をベースに遊ぶことに。

さすがに一連のルールを逐一解説すると長くなるので、だいたいどんな流れだったかを報告する。会話の中で登場する細かい原作ネタについても、解説を割愛していることをご了承いただきたい。気になる人は原作を読んでくれ。

具体的な手順をぜんぜん把握できていないぜ

デュエリストが使う「デッキ(カードの束)」には、40枚のカードが入っている。お互いデッキをシャッフルし、いざデュエル開始!という段になり、さっそくつまづいた。

ふ凡社「そういえば、ゲームの先攻後攻ってどうやって決めるんだっけ?原作で先攻後攻ジャンケンとかやってないよね?」

りばすと「そうね。普通にじゃんけんか話し合いで決めるといいと思う」

ふ凡社「遊戯(原作主人公)たちも読者の知らないところでジャンケンとかしてたのかな」

じゃんけんをして私が先攻となった。デッキから5枚カードを引く。

記念すべき最初の5枚

ふ凡社「あれ、いきなり主人公のカード来ちゃったな」

りばすと「ふふっ」

最初の5枚の中に、『ブラック・マジシャン』が入っているではないか。ブラック・マジシャンといえば、原作における主人公・武藤遊戯のパートナーとも言える看板モンスターである。

『ブラック・マジシャン』(右)はたびたび表紙も飾っている看板キャラ(画像はAmazonより)

りばすと「今回ね、なるべく原作に登場するカードを入れる形でデッキを組んでみました

ふ凡社「ありがてええええええええ」

りばすと氏の粋な計らいに感謝。

ふ凡社「もうこれ勝っちゃったな。さっそく召喚するぜ、ブラック・マジシャン!」

りばすと「無理だぜ」

ふ凡社「えっ、なんで?・・・あっ!!!!

何かを思い出した顔

りばすと「気づいたようだね」

ふ凡社「『生贄』が必要なパターンだ」

りばすと「そう『エキスパートルール』なので

説明しよう!原作初期のM&Wは強いカードもいきなり使えたが、作中の中盤で登場した新ルールによって、「強いカードを出すためには弱いモンスターを何体か生贄にする必要がある」という設定が加わったのだ。

ふ凡社「これあれだ、エキスパートルール知らなかった城之内くんがいきなり『魔導騎士ギルティア』を出そうとして失敗して、まわりの野次馬にバカにされるやつだ」

りばすと「あははは、あったあったそんな件」

仕切りなおして配られたカードを見るも、それぞれのカードには事細かにいろんな効果があって、どのカードをどの場所にどう出せばいいかが分からない。

そう、原作はストーリー重視で流れるようにデュエルが進んでいくので、いざ自分がプレイする側にまわると

・自分のターン内でできること

・どのカードをどの場所にどの形で出せばいいか

・相手を攻撃するタイミング

・何をすれば自分のターンが終了するのか

といった進行に関する基本情報がほとんど整理できていなかったのだ。これらの細かな進行の手筈については、逐一りばすと氏に確認を取らないと進めない状態だった。

何すればいいか全然ワカリマセーン!の顔

さらに、原作に登場しないカードについては逐一その効果や解説を読んで確認する必要があり、脳内は大混乱。

ふ凡社「モウ全然ワカラナイ...俺がやるべきことを全て書いたペライチの紙が欲しい。その通りにやればバンデット・キースに勝てるやつ」

りばすと「トムの勝ちデース!ね」

だんだん原作知識で補える展開が増えていく

ところが。りばすと氏に逐一解説を求めながらやりつつも、原作の知識があるがゆえに「次にどんな展開が待っているか」をなんとなく補完できるシーンが徐々に増えてくる。

ふ凡社「『破戒僧 ランシン』は”負けて墓地に送られる時に相手の墓地のカードから一枚を除外できる”効果...あーっ、俺、これ多分わかるぜ」

りばすと「おっ、何か原作知識に引っかかった?」

ふ凡社「相手の墓地にいるカードがやっかいなパターンあったよね。なぜなら墓地にいるモンスターを復活させる効果を持つ魔法カードの『死者蘇生』があるから。破戒僧の効果を使えば、相手の墓地に強いカードがあった時に復活するのを防げるんだ

りばすと「その通り!」

ふ凡社「進〇ゼミでやったやつだ!!!!ってなるね」

そんなこんなで少しずつゲームが進み、りばすと氏が『人造人間サイコショッカー』という原作でもやたら強かったカード(詳細は割愛。とにかくやたら強いのだ)を出したことにより、早くも私の命に危機が訪れる。

ふ凡社「えーっ、サイコショッカーがいると何もできなくない?」

りばすと「初回の様子見で出すには強すぎるカードを出しちゃったかも」

「まぁ初回だし勝敗はこだわらなくていいや」という気楽さで次に私が引いたカードは、『魔導師の力』という、モンスターに装備することで効果を発揮する魔法カードだった。

3人でウォー!って盛り上がってるようにも見える

ふ凡社「魔導師の力、装備したモンスターの攻撃力・守備力が500ポイントアップ...」

りばすと「ふ凡社くん、それ信じらんないくらい強いカードだぜ

ふ凡社「そうなの?とりあえず出すか。すると、今出てるモンスターはこれで攻撃力と守備力が500上がったんだ。なるほど」

魔法カード、罠カードが4枚ある(下の段)から、モンスター(上段)の攻撃・防御共に2000ポイントもアップする

りばすと「ちがうぜ、効果をよく読んでくれだぜ」

ふ凡社「ん?”自分フィールド上にある魔法・罠カードの1数につき”・・・あっ!!!!」

りばすと「そう、ふ凡社くんのとこに出てる魔法・罠カードの枚数×500だぜ」

ふ凡社「嘘でしょ!?ダメだよ、こんなカード今すぐ使用を制限したほうがいい」

原作を読んでいるとたびたび「そんなのズルじゃん」という理不尽な強さを持ったカードが出てくるが、現実でも同じ展開が起きて爆笑。

「こんなのズルじゃん」の顔

このカードの登場により、私のモンスターカードは攻撃力が3800にアップ。原作でいうところの「神のカード」に近い、それはもうスゴイ強さになってしまった。

りばすと「これ、もう現時点で次引いたカード次第では負けるぜ

ふ凡社「そんなに大変なんだ。俺は状況がよくわからないトム君の気分になってるけど」

思ったより原作知識がしっかり役立った

その後、りばすと氏もいろいろと攻撃をしかけてくるも、強くなった私のモンスターに蹴散らされていく。

ついに、最後の私の攻撃ターンでりばすと氏の負けが確定する段になった。

りばすと「俺はもうここまでだぜ、ふ凡社くん」

ふ凡社「覚悟するがいいぜ、りばすとくん!あ、でも・・・」

りばすと「どうしたんだぜ」

ふ凡社「あと1回攻撃をすると、りばすとくんの命が...!

りばすと「ひと思いにやってくれだぜ!」

「闇のゲームに負けた人の顔して」とリクエストして撮った写真

なんだかよくわからないうちに、勝ってしまった。ちなみにりばすと氏は死ななかった。良かった。

この後も合計3戦くらいやってみたところ、完全とまではいかずとも、あらかたルールと進行を理解することができた。この間、原作の知識や展開が大いに理解の助けとなったのは間違いない。

つまり、少なくとも2008年くらいのルールは、原作を読んだうえでやると割とすぐちゃんと遊べるようになることが判明した。正直「ほとんど理解できないんじゃないか」と予想していたのだが、意外な結果だった。

だんだんのめり込んでいく魅力がある

りばすと氏いわく、今最新で遊ばれているocgのルールは、当時の新エキスパートルールと比べて随所に違いはあるものの、ゲームのベースとなるシステムは共通しているとのこと。

機会があれば、今度は最新ルールでもチャレンジしてみたいところだ。

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