大分県の小学生向け課題『夏の友』が大変って本当?大人がガチで取り組んでみた
こんにちは、Togetterオリジナル記事編集部のふ凡社です。
時は少しさかのぼって8月の頭、夏休みの始まりの頃。
大分県の小学校で夏休みの課題として配られる『夏の友』がボリューム満点で、親御さん的に見てもかなり大変では、という話がX(Twitter)で注目を集めた。
親御さんと思われる投稿者がアップした『夏の友』の課題例には、「石をいろんなところで集めて色を塗る」「牛乳パックで二十日大根を育てる」「カブトムシやクワガタを飼う」などなど、アクティビティ系の課題が目白押し。
なるほど、小学生的には楽しそうだが、親御さんのアシストが必要そうな部分も含まれているので、大人視点では「ちゃんと終わるかしら」とハラハラしてしまうのかもしれない。
さて、話はそこから「そもそも伝統的に『夏の友』をやらされるのは大分県だけらしい?」という問いに派生し、全国のXユーザーから「自分の地域の夏の宿題」に関する思い出話などが飛び交った。
この一連の流れを見て、私は一人驚いていた。私は大分出身だが、「夏の友」をやったことがないのだ。
私が通っていた小学校では、教師陣が作ったオリジナルの宿題が課されていた。なので、大分県の小学生の夏休みの課題がこんなハードなことになっていることを、大人になったこのタイミングではじめて知ったわけだ。
同時にもう一つの気持ちが沸き起こった。
大分県の「夏の友」、やってみてぇ!!!
そこで今回、大分県の「夏の友」を独自に入手し、実際に取り組んでみた。齢30を超えて、故郷の伝統的な夏の課題にチャレンジしてみた様子をレポートする。
独自のルートで現物を入手する
入手にあたって、まず版元を調べる必要がある。
ちょうど小学校時代の恩師が大分県の教育委員会の関係者になっていたので、SNSで連絡を取り『夏の友』の版元を教えてもらった。
版元の代表に連絡を取り、私が大分出身であること、夏の友をやったことがないので購入したい旨を伝えると
「『夏の友』は学校向けに卸している教材なので、通常一般販売はしていないが、今回は特別に販売してもOK」
と快諾いただけた。ありがたい!

かくして、8月10日頃に大分県の「夏の友(1年生版)」が手元に届いた。表紙いっぱいに印刷されたイラストがカワイイ。
さぁ、やるぞ~!!!もちろん、完了目標は8月31日だ。
すでに8月も10日が過ぎてしまっているが、まぁ大人にはこれくらいのハンデがちょうどいいだろう。
すぐ着手できる基礎強化課題からやる
そこから2週間後、私の目の前にはまっさらな「夏の友」があった。
カレンダーを見れば8月26日。夏休み終了まで1週間を切っている。そう、私は怠けていたのだ。
正直なところ、小学生時代に感じた「やらねば」と「まだ大丈夫」のチキンレースなせめぎ合いで焦りが募っていく懐かしい感覚を、若干楽しんでいた節もある。
人間、多少ヒリつくくらいの追い込みがあるほうが燃えるというもの。さぁ、大変と噂の『夏の友』残り5日で無事完走できるのか。
まず、ざっと全体を確認したところ、
・こくご、さんすうなどの「基礎教科課題」
・絵日記などの「イラスト系課題」
・読書などの「記録蓄積型課題」
・特定の場所に行ったり複数人の協力が必要な「野外課題」
・工作などの「クラフト・タスク系課題」
と、大まかに分類して5カテゴリーの課題がバランスよく盛り込まれていることが分かった。
噂通り、さまざまなアクティビティが目白押しなので、いかに大人とて、この課題たちを1日で全て消化することはできないだろう。
まず手始めに、これまでの人生経験の蓄積で消化できる「教科系課題」を一気に終わらせた。
足し算、引き算、ひらがなの書き取り、助詞の補完等々、31歳の知識を以てさらさらと解いていくと、謎の無双感があった。はっは、これが大人になるということよ。

他にも「大人だったから大丈夫だったけど、小学生的には残り5日じゃきつかろうな」という課題があった。「おはなし いっぱい」という、夏休みの間に3冊の本を読む課題だ。
2冊は、課題ページ上部に書かれている5冊の推薦図書の中から『ほねほねザウルス (21) ふっかつ! でんせつのファイヤーティラノ(岩崎書店)』『にじいろフェアリーしずくちゃん (7) 7つのストーンのひみつ(岩崎書店)』を購入して読んだ。

こちらは児童書ということで、1時間かからずに読み終えた。小学一年の時を思い出すと、これくらいの本を1冊読むのにもかなり時間かかって大変だった記憶があるから、本来は夏の間にコツコツやるべき長期スパンの課題なのだろう。
残り1冊は、8月中に趣味で『52ヘルツのクジラたち(中央公論新社)』という小説を読了していたのでなんとかなった。日ごろの読書習慣に救われた。
室内で完結するタスク・クラフト系課題をやる
続いて、室内できるクラフト・タスク系課題。たとえば「フルーツシャーベットをつくろう」なんて課題がある。ジュースをボウルに入れて凍らせるだけでできるらしい。簡単やんけ。
ちょうど家に野菜ジュースがあったので、さっそく冷凍庫にイン。途中1~2時間くらいで取り出して、完全に固まる前に一度フォークでかき混ぜる工程が入るのだが、私はこれをすっかり忘れていてカッチカチに凍ってしまった。31歳、愚かなり。

仕方なく、一旦取り出してフォークでかけるくらいまで溶かし、再び冷凍庫へ。これで空気が入っていい感じになるハズだが、取り出したらやっぱりカッチカチになっていた。
「簡単で失敗しようがなさそうに見えて、やってみると全然ままならない感」もまた、少年の頃に感じた懐かしさがある。
しかし、「失敗も含めてまた経験」ということで、カッチカチで大変だった旨を正直に書いた。完璧にこだわらないこともまた、大人の余裕と言えよう。
そのほかにも、「蝶々結びをやってみる」とか「風呂敷を結んでみる」とか生活に役立つ実践的な課題もあり、これらは卒なく終わった。

鬼門・外でのアクティビティ系課題
厄介なのは、外で行うアクティビティである。
「生き物を探してみよう」とか、「ひなたと日陰をさわって違いを書こう」といった一人で完結するものだけでなく、「誰かと一緒に遊ぼう」的な、第三者の協力を仰がないと成立しない課題があるからだ。
「社会人の貴重な休日に小学生の宿題に付き合ってくれる酔狂な友人」を2人招集し、公園へ。

「まるおに」という、指定した円の範囲内で行う鬼ごっこや、腕をつかんでの引き合い、「片足相撲」などを童心に返ってやると、大変盛り上がった。

炎天下の公園でみんなと遊ぶなんていつぶりだろうか。持つべきは、いくつになっても小学生の宿題に付き合ってくれる酔狂な友人たちである。
8月31日、最終日の追い込み
こうして2日くらいかけて、全行程の半分くらいが終わった。「なんだ、全然余裕じゃん」と思ってまたサボっていたら、気づけば8月31日になっていた。31歳、愚かなり(二度目)。
しかも「じんわり面倒だな」と思って後回しにしていた、イラスト・作文系の課題が残っている。
夏休みに行った行事の思い出や、一人でできるようになったことなどについて、イラストとともに紹介する課題が複数。
一応、編集者として文章を書くことを生業にしているので、文章部分は難なくできるが、問題はイラストである。
夏休み中に読んだ本の中で印象に残ったシーンを描こうという課題で、うん十年ぶりに色鉛筆を取り出した。

期限が迫っているので、丁寧に色など塗っていられない。頭の中には「こんな絵を描きたい、ここはこんな色にしたい」といったイメージはちゃんとあるのに、焦りと画力の低さで思うように描けないこのもどかしさ。
あぁそうだ、小学校の時の私もまったくこんな葛藤を抱えて絵を描いていた。
当たり前だが、その後の人生で研鑽を積まなかったスキル(私の場合は絵)は、基本当時の水準のままなのである。
なんとか描き終えて、「さぁ、まだ他にもイラスト描かなきゃならんのがあったな」とやや憂鬱な気持ちとともにページをめくると、それ以外の課題には救済措置があることを発見した。
「え(しゃしん)とともに」
という指定がなされているのである。写真!!!写真でもいいのかい!!!!
本当の宿題なら先生や親からの評価はやや下がるかもしれないが、期日的にそんなことを気にしていられる余裕はない。ルールの範囲内でショートカットできるところはしっかりしていこう。卑怯とは言いますまいな。

はじめての『夏の友』を終えて
こうして、人生初の『夏の友』チャレンジは幕を閉じた。

課題の達成率は、もちろん100%...とはならず、80%くらいだった。

そう、「プールに行こう」や「学校に行って探検しよう」といった、事前のおぜん立てが必要ないくつかの課題については「遂行不可」として潔く切り捨てたのだ。
取り組んでみた感想としては、確かに事前に聞いていた評判通り、大分の『夏の友』の課題内容は非常に充実しており、大人の力を持ってしても一朝一夕で全部埋めるのは難しかった。これを小学1年生が期日通りに終わらせるとなると、かなり綿密なスケジュール管理が求められそうだ。
もうひとつ盛り上がっていた「親の負担」について。2023年の1年生の『夏の友』についていえば、「親の介入が必要と思われる課題」は割合としては多くなかったように感じた。備品の購入や、外出系の課題の付き添いくらいだろうか。
ちなみに版元の代表に購入の依頼をした折に
「夏休みということで親御さんも一緒に取り組んでお子さんとの親交を深めるきっかけにしてほしいという思いもありますが、忙しい親御さんの事情も鑑みて、内容としては基本的にお子さん自身の力で取り組めるような課題を用意しているつもりです」
とのことだった。全体的には、難易度も達成感もちょうどよいやりごたえなんじゃないかと思った。
今回は小学1年生の『夏の友』だったので、恐らく学年が上がると難易度も上がっていくことだろう。実は今回、1年生のものだけでなく6年生のものも入手したのだが、ぱらぱらとめくってみただけでもその難易度は跳ね上がっているのが伝わってきた。機会があれば、こちらにもチャレンジしてみたいところだ。

いやぁにしても、大人になってからフルパワーで小学校の宿題に取り組める機会などそうないので、非常に楽しかった。同時に、自分の中の「子どものころと本質的に変わっていないポイント」も見えてきたりして、懐かしいやらおかしいやら情けないやら、いろんな感情が混ざったノスタルジーな気持ちになった。
最後に、もしこの記事を読んだ大分県のお子さんがいたら、(言うまでもないが)私のやり方を参考にしてはいけない。堅実に計画的に課題を終わらせよう。