「完売してはいけない本」在庫4000冊の戦争漫画を20年間自ら管理した作者に話を聞いた

風化してはならない日本の歴史
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出版社の事情で在庫となった4000冊の漫画を、原作者自らが20年のあいだ管理していたという投稿が話題だ。

出版社が倒産
広島平和記念資料館で販売中

漫画家のあおきてつお(@susa404)さんの作品『赤い靴はいた』は、第二次世界大戦を生きた人々を描いた漫画だ。東京・沖縄・広島を舞台に3部構成で終戦までの惨状を描いている。

当時出版社の都合で書店に並ぶことなく絶版寸前となっていたが、歴史を伝える本を世に出すべくあおきさん自らが在庫4000冊を抱え込むことに。

書籍は広島平和記念資料館のミュージアムショップのみで約20年販売を続け、今回が在庫の「最後の出荷」になったことを投稿した。

出版社が倒産
「戦争」とは何か、子どもにもわかりやすく描いている(『赤い靴はいた』より)

ユーザーからは「いまだにとても心に残っている一冊です」「子どもが何度も読み返していました」「大切に読んでいます。後世にも残していきたいですね」など、読んだ人からの反響や「どこで買えますか?」と書籍に興味を示すコメントが寄せられた。

在庫を抱えた経緯や約20年自ら管理し販売した書籍について、今の心境などをあおきさんに詳しく聞いた。

「読みたい読者がいるから」自ら在庫管理

手元に4,000冊の在庫を抱えることになった経緯を教えてください。

細々ながら順調に発行されていましたが、突然出版社から「もう増刷はしない」と告げられたんです。「読みたい読者がいるのになぜ?」と聞くと「増刷しても本の置き場所がない」と言われ、交渉の結果、私が一括管理するという条件で増刷分の4,000部を引き受けることになりました。後で考えれば、その時すでに倒産状態だったのかもしれません。

原爆資料館で販売された理由は、出版社の事情で本が絶版寸前となったため、自分で販路を開拓しようと思い立ったからです。自分で原爆資料館へ願い出たところ、ご厚意で置いていただくことになりました。

制作から在庫管理まで担っている時のエピソードを教えてください。

真夏の最中、汗だくになりながら2階にあった貸トランクルームへ4,000冊を手作業で運んだことでしょうか。

その後、そこが閉鎖になり実家へ本を移しました。2年前に亡くなった母は熱心に近所の方へ本を勧めてくれていて…母にとっては自慢だったのでしょうね(笑)。漫画家になって良かったと思いました。

今回最後の出荷となったようですが、今のご心境をお聞かせください。

投稿では4,000冊の在庫がなくなったということで「最後の出荷」と書きましたが、これで最後にはしたくありません。この本は、完売してはいけない本だと思っています。

現在『赤い靴はいた』はKindle版(電子書籍)で読むことができる。紙書籍も今後再販していきたいが、生原稿が行方不明ということで、費用の件と含めどのように再刊行していくか検討中とのこと。

終戦から約80年経ち時代が移り変わっても、戦争のリアルな姿を描いた「完売してはいけない本」として、後世に引き継がれていくことを願うばかりだ。

出版社が倒産
Amazon.co.jpより
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書いた人
みわんこ

東京下町出身の3人息子のママライター。アマプラと少女漫画とベリアル様(見た目)が好き。

Twitter:@miwancoo