SFの世界が現実に!自作のグローブを介してロボットハンドを遠隔操作する動画に「夢が膨らむ」

どっちの手がロボット??
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手にはめたグローブを介し、遠隔でロボットハンドを動かす仕組みを自作した学生がX(Twitter)に動画を投稿し、話題となっている。

データグローブ
左がロボットハンド、右が手にはめたグローブ
 

投稿者のかいと(@robot_kaito)さんは、東京農工大学のロボット研究会R.U.Rに所属しており、マシンの作成に日々励んでいる。

「データグローブがついに完成!」と投稿された動画には、自作の手袋型装置「データグローブ」を手に装着し、3Dプリンターなどを活用して作ったロボットハンドを遠隔操作する様子が映っている。

小指から順番に手を閉じたりじゃんけんしたりと、細かな動きをするグローブに合わせてロボットハンドも同様の手順で動く。別の動画では、ペットボトルを握る様子も紹介していた。

データグローブ
手の動きに合わせてロボットハンドもピース

投稿を見たユーザーからは「遠隔もここまできたかって感じですね」「これは夢が膨らむ!」「VRのコントローラーとしてもすごい優秀そう」など、称賛のコメントが寄せられている。

データグローブが完成した時の気持ちやエピソード、今後の目標など、かいとさんに詳しく話を聞いた。

一番こだわったのは、デザインとメンテナンス性

データグローブが完成した時の率直なお気持ちをお聞かせください。

製作に時間がかかってしまったので、完成した時は「やっとできた」という感じでした。

それまでロボットハンド単体で動かしたり、画面上でデータグローブの反応を調整したりしていたのですが、実際に装着して動かしてみると自分の手と連動することが想像以上にめちゃくちゃ楽しかったです。

始まりは2019年。その頃のかいとさんは高校生で、当時のX(Twitter)上には「ロボットハンドを作りたい」という投稿も残っている。

そこからコツコツと試作を重ね、今回投稿されたロボットハンドは試作二号機になるそうだ。

製作を始めて4年とのことですが、苦労されたことは何でしょうか。

手のひらのデザインと無線通信です。

指のデザインや配置は比較的すぐ決まったのですが、親指の可動域やメンテナンス性を考慮しつつ指と統一された手のひらのデザインを考えるのに、とても時間がかかりました。

また、無線通信は、今回初めてBluetooth通信に挑戦しました。通信の仕様を理解しマイコン(※1)に合わせたライブラリ(※2)を探すことや、機敏な反応ができるよう調整するのにとても苦労しました。

(※1)マイコン…電気的な回路や機械的な部分などを制御する電子部品、(※2)ライブラリ…プログラムを集めひとまとめにしたファイル

一番こだわったところはどこですか?

今回完成した二号機は、試作一号機の反省点であるデザイン、メンテナンス性にこだわりました。

デザインは、高校生の時に自分がかっこいいと思うものを目指して初めて設計して、見た目のかっこよさと動きの自然さの両立にこだわりました。

たくさんの資料から要素を抽出し自分なりに組み合わせ、完全に独学でデザインしています。

さらに、実際に動かした際に人間の手と同じ様な動きを再現できるように、指の位置や親指の可動域にこだわりました。

データグローブ
たくさんの資料を参考にして、高校時代に描いたロボットハンド

もうひとつのメンテナンスについてはいかがでしょう?

メンテナンスについては、インサートナットという部品を使いドライバー一本で分解できるようにしたり、指やサーボモーターを簡単に交換できる構造にしたりと、設計段階でこだわりました。

特に指に関しては、関節部分も含めて3Dプリンターで一括造形し、ほぼ組み立ていらずにしました。

実は、指の付け根にある円形のパーツはただの飾りではなく指を固定するためのもので、これを外すと、指を簡単に交換できるようになっています。

データグローブ
デザインのアクセントにもなっている円形パーツ

従来のロボットハンドにおいて自由度の少ない親指は、自分の手を観察しオリジナルの関節を設けることで、人間同様の握りこぶしを設計できました。

データグローブ
握った時の親指の動きや位置まで忠実に再現されている

試作時のエピソードを教えてください。

試作時は曲げセンサーの固定に苦労しました。指につける都合上、先端を固定できないので根元を固定し全体を指に沿わせるのが大変でした。

関節部分にガイドを付けるだけでは伸ばした時に関節の間で反ってしまうので、最終的には曲げセンサー全体をカバーする布を縫い付けることで解決しました。

ちなみに、前作の自作の曲げセンサーは性能が悪かったのですが、今回センシアテクノロジー社のものを用いることで高精度なトラッキングが可能になっています。

他には、ロボットハンド単体で完成した時に握手をした相手から「思っていたより人間の手でキモかった」という感想をもらったことがあります。

今回の技術を活用した今後の目標はありますか?

現在活躍しているロボットハンドは人間の手ほどの自由度を持っていないので、指の関節ごとに曲げたり手首や腕まで動かせたりできるように延長したいと考えています。

ほかにも、筋電センサー(※)を用いることで義手として使えるようにしてみたいとも考えています。

(※)…指や手首を動かす筋肉の筋電位を測定しAI技術で学習させ、動きを再現させることができるもの

かいとさんのように、夢を叶えようと知識や技術を身につけ、諦めずに努力し続けた技術者たちによって、架空だと思っていたロボットハンドが実現されていくのだろう。

今後、かいとさんの手で作られた製品が広く活用される日を楽しみにしたい。

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