民族舞踊の「全ロシア国際選手権」に何も知らず出場し優勝!独学でダンスを習得した日本人の正体とは?

世界に認められる実力!
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日本人ダンサーが何も知らずにステージで踊ったら「全ロシア選手権」で1位になっていたという投稿がX(Twitter)で話題だ。

コーカサスダンス世界選手権
たまたま国際選手権に出場し優勝したNozakiさん

投稿したのは、北コーカサスの民族舞踊のダンサーとして活動しているTaiga Nozaki(@glocker_tanz_jp)さん。

Nozakiさんが投稿した画像には賞状を持ったご本人の姿が写っており、その賞状にはロシア語で「コーカサスダンス全ロシア国際選手権 1位 受賞 Taiga Nozaki」と書かれている。

投稿では、ダンス大会で優勝したことを報告するとともに、実はこの大会へはもともと参加するつもりはなく「何も知らないまま」参加し踊ったという、驚きの事実も伝えていた。

投稿を見たユーザーからは「すごすぎて言葉失った」「おめでとうございます」など祝福のコメントや、以前からNozakiさんの活躍を知る人からは「積み重ねた努力は裏切らない…!」といった声が寄せられている。

しかしその後「舞台芸術に関する専門機関の出身・所属」という項目を満たしていなかったということで、Nozakiさんの優勝は取り消され賞を返還することに。

結果的に優勝の記録はなくなったが、無所属のダンサーが頂点を極めたことは、見る人の印象に強く残ったことだろう。

大会に出場することになった経緯や当時の様子など、Nozakiさんに詳しく話を聞いた。

現地に着いてそのまま友人に連れられた

コーカサスダンス全ロシア国際選手権に出場した経緯を教えてください。

今回の旅の目的は、世界中の人々が参加する別の大きな国際コンクールに出場することでした。

フライトを終えて滞在先のナリチク(カバルダ・バルカル共和国の首都)に到着した後、現地の国立舞踊団で働いていた友人から「全ロシアから人が集まるコンクールで腕試ししてみないか?」と言われました。

そのままナリチクの中央にある国立劇場に連れて行かれ、到着した時にはすでに多くのダンサーがステージで踊っていました。

「あなたの出番は7つ後だから準備しておいてね、曲は用意してあるからこれで踊ってくれれば良い」と言われ、課題曲を聴いて待機していました。

フライト後で正直疲れが溜まっておりフラフラでしたが、なんとか無事に踊り切ることができました。

国際選手権ではどのような踊りを踊りましたか?

旧ソ連諸国を除いたアジア地域出身で北コーカサスの踊りを踊っているのは、現在私しかいません。会場もロシアなので、私以外に日本人はいませんでした。

ステージでは、コーカサス北西部に分布するアディゲ諸族の踊りを踊りました。

基本的にはアドリブでしたが慣れているので、身体的な疲労を除けば特に大きな問題はありませんでした。

コーカサスダンス世界選手権
多彩な文化交流もあるようだ

Nozakiさんは以前、北コーカサスの民族舞踊「レズギンカ」を独学でマスターし、現地の国立舞踊団から招聘された日本人ダンサーとしてロシアのメディアに報じられたことがある。

日本人として現地で評価されるようになるまで、どのような軌跡を歩んできたのだろうか?

「レズギンカ」を踊るダンサーになったきっかけは?

高校生の頃、YouTubeのおすすめに出てきた動画を観たことがきっかけです。

武術のような力強さとバレエのような優雅さ、そしてアクロバットな動きといった軽やかさと重厚さが両立されているレズギンカを含むコーカサス各地の伝統舞踊に興味を持つようになりました。

レズキンガダンスの魅力を教えていただけますか?

レズギンカ(Lezginka/Лезгинка)という単語には複数の意味があり、広義ではコーカサス北部(現在ロシア領のエリア)に分布する諸民族の踊りを指します。狭義ではダゲスタン(※1)の踊り、とりわけレズギ人の踊りを指します。

その後、私はチェチェン(※2)の再生と復興を願った「ノフチーチェ(チェチェンの意)」という歌を聴いて「コーカサスの伝統的な踊りや音楽は単なる踊りや音楽ではなく、彼らの精神性を反映させたものなんだ」と強く感じました。

視覚や聴覚といった感覚だけでなく、精神的にもコーカサスの文化に強く惹かれていくようになっていきました。

民族衣装を見れば、その地域に住む人々のくらしやなりがわかります。音楽を聴けば使っている楽器や音階、そして旋律から精神性や関連する文化圏を聴覚的に感じ取ることができます。

そして、伝統的な踊りには音楽と伝統的な民族衣装が不可欠です。それぞれの動きにはそれぞれの意味があり、無駄がないのです。

(※1)…北コーカサス地方とカスピ海の間にあるロシア連邦に属する民族国家。(※2)…北コーカサス地方の北東部に位置するロシア連邦に属する共和国。先住民族のチェチェン人が住民の多数を占める。

コーカサスダンス世界選手権
日本のイベントでも民族衣装を着てコーカサスの伝統舞踊を披露

コーカサスには細かく分けても100を超える民族グループが住んでおり、それぞれが独自の文化や言語を有しています。伝統舞踊ではそれらの文化や精神的なバックグラウンドを視覚、聴覚、そして精神の3つを使って体感することができます。

私はこれらの踊りや音楽を通して彼らの誇りや歴史、民族的なアイデンティティに触れる時間が本当に大好きです。

どの民族の踊りもそれぞれ大きく違っていて楽しいですし、私は踊っている時が人生で最良の時間だなと確信しています。

Nozakiさんの今後の目標を教えてください。

将来的には訓練生やゲストといった枠ではなく、正式にプロのダンサーの一員としてみんなと肩を並べて舞台で働きたいと考えています。

独学を始めて形になるまで1年、そして現地に渡航するまで合計3年という長い時間が経ってしまいました。

その中で現地の人々や文化に対する感謝やリスペクトを忘れず、それらの願望を心から願って楽しみながら続けていけばきっとすべてうまくいくと信じています。

インシャラー(※)(إن شاء الله)!

(※)…アラビア語で「神の御心のままに」。

心から楽しそうに踊るNozakiさんを見ていると、自然と笑みがこぼれてくる。

伝統的な民族舞踊をマスターし夢に向かって邁進する姿を見て、応援したい気持ちが湧いた人も多いことだろう。

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