あまりの精密さ&スピードに脱帽…!手術練習のための「折り鶴」が神ワザすぎて魅入っちゃう
腹腔鏡手術のトレーニング機材を使って「2分未満で折り鶴を完成させる」という神ワザ動画が、X(Twitter)で注目を浴びている。
休日の趣味
2分未満の感覚が戻ってきました https://t.co/vC0ks8bb1Y
— ナス太郎 (@ysk84books) 2024年1月28日
投稿主は消化器外科医のナス太郎(@ysk84books)さん。ドライボックスと呼ばれる手術練習用の箱を活用し、7.5cm四方の折り紙を手術などで用いられる鉗子(かんし)を使って折っている。
たくさんのいいねとコメントをありがとうございます。
この動画は腹腔鏡手術の練習用の箱の中で手術器具を用いてモニターを見ながら7.5×7.5cmの折り紙で鶴を折っているものです↓
実際にお腹の中で鶴を折ることはないので手術の練習になっているかは賛否両論ありますが楽しいので続けています。 https://t.co/qOu8bP4PyW
— ナス太郎 (@ysk84books) 2024年1月29日
折り鶴が完成するまでに要した時間はわずか1分52秒。その精密かつスピード感は驚異的なもので、日頃手術などで繊細な作業が求められる医師の技術力の高さがよくわかる。
こちらの動画に対し、X上では「めっちゃスムーズに折ってくの心地よく見てられる」「繊細な作業がこの棒できちゃうんなんて」など驚きの声が殺到。また「腹腔鏡手術の時は、こういう人に任せたい」と医師であるナス太郎さんに信頼を寄せるコメントも見られた。
なお、ナス太郎さんは折り鶴によるトレーニングを10年以上前から始めており、これまでに鶴以外の作品も多数制作している。今回は折り紙を使った腹腔鏡手術の練習などについて、いろいろと話を伺ってみた。
1羽目の出来は散々…続けていたらいつしか虜に
折り鶴による手術練習はどのようなきっかけで始めたのでしょうか?
初めて折ったのは2012年7月4日です。外科系の講演会(のDVD)で練習方法として紹介されていたので、自分にもできるのか試してみました。1時間以上かかったうえに車に轢かれたハトのようなものしかできず、かなり衝撃を受けたことを覚えています。
腹腔鏡手術には内視鏡外科学会が行っている技術認定制度というものがあります。これは所定の術式の動画を提出して審査を受ける内容で、合格率が25%前後とハードルが高いのですが、腹腔鏡手術を行っている医師としてはぜひとも取得しておきたい資格の1つです。
しかし当時落ちてしまい、審査員から「手技が雑、非優位側(利き手の逆の手)の鉗子操作が稚拙である」と厳しい評価をいただきました。
こうした課題を克服すべく、継続してできる練習方法を考えていた時に折り鶴に出会いました。普通に鶴を折ることと同じように鉗子を用いてできるようになれば、何かが変わるかもしれないと考えました。
その後、何とか鶴らしいものが折れるようになろうと続けているうちにハマってしまいました。
折り鶴による練習は、医師の間では一般的なのでしょうか?
折り紙を使った練習方法には賛否両論があります。鶴を折る際に鉗子を使って折り目を土台に押し付ける必要があるなど、実際の手術操作と異なることから否定的な意見も多数あります。
ただ、折り鶴に関してはかなり裾野が広く、一度は試している外科系医師はそれなりにいると思います。個人的な意見としては、手術操作と乖離するとしても、やはり左右の手の協調性と非優位側の鉗子操作は確実に上達できると考えています。
両手の巧緻性が上達した状態(一般的には手先が器用と表現されると思いますが)が手術を模した環境で楽しみながら得られるという点で、折り紙を続けることに意味はあると思います。
賛否両論はあるものの、折り鶴による練習は手先を器用に操る能力を身につける上でメリットはあるようだ。
あと、ランニングコストがかなり安いです。100円ショップへ行けば300枚入りの折り紙が手に入ります。子供の頃から遊んだ折り紙という親しみやすさに加え、練習コストがかからないのでコアなファンがいるのも事実です。
Facebook上にKaminote Challengeという公開グループがあります。折り鶴を楽しみながら手を鍛えていくトレーニングとして考えている医師、獣医師、外科系を考えている医学生も集まっているコミュニティで、皆で楽しく日頃の成果を披露しあっています。
2023年2月28日には、NHKの『ニッポン知らなかった選手権 実況中!』という番組で第1回全国大会の模様が放映されました。
他にも効果的な練習方法があれば教えてください。
基礎的な練習方法として、「ビーズを掴んで移動させる」や「ヒートン(丸環ねじ)にひもを通す」など左右の手の協調性を習得するものがありますが、糸付きの針で縫合結紮(※)をする練習方法が最も一般的だと思います。
後はシミュレーターといった数百万~1000万を超える高価な練習機器もありますが、一般市中病院では購入することは困難です。
※縫合結紮:ほうごうけっさつ。糸で切開した部分などを縫い合わせること。
折った鶴のその後や、他の折り紙作品がありましたら教えてください。
折った鶴にはタイムと日付と何羽目か、用いた鉗子などのメモを書いてすべて保存していますが、置き場所に困ってきています。
10000羽までは100羽ずつ糸を通して、病院にあるシミュレーションラボという手技の練習用機材がある部屋に飾られています。2つ目の動画のモニターの向こうにぶら下がっているのが見えると思います。それ以降のものは医局にある自分のロッカーにあります。
手術の技量を高めるために折り鶴を始めたところ、すっかりハマってしまったというナス太郎さん。
趣味の一環とはいえ、こうした研鑽が人命救助に生かされているかと思うと、尊敬の念を感じずにはいられない。