目一鬼は白蛇を恐れる

リエットさん(@rsr28083)の書いてくださった、落ちぬい二次創作です。 今回は尻尾付きとの遭遇のお話? 顛末はどのようになるか。 ぜひお楽しみくださいませ! 続きを読む
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はじめに

リエット @rsr28083

こんばんは。ただいまより #落ちぬい二次 投下始めます。本作は #不知火に落ち度はない の二次創作であり、オフィシャルではありません。意見・批評などは #落ちぬい タグでお願い致します。

2016-07-15 21:42:53

本編

リエット @rsr28083

俺は司令室の机に真向いに座り、その上にずらりと並べられた電子機器が示してくる情報を睨みながら、逸る心を抑え、時を待っていた。 かつて俺は死に臨む意志をもってあの海に挑んで、そして文字通り完膚なきまでに敗北して生き残ってしまい、苦しみもがき生きてきた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 21:43:42
リエット @rsr28083

あの時の光景と敗北者となって生きてきた今までのことは容易く人に語れるものではない。 記憶は今も俺を苛み、縛り、この敗け傷だらけの体と心に重石を科せ続けている。 だが、俺は今日それを終わりにできるかもしれないのだ。 #落ちぬい二次

2016-07-15 21:44:52
リエット @rsr28083

南方方面・ソロモン海域。 人類の敵であり俺の罪の親たる深海棲艦の本拠地があると目される場所。 かつて奴らに窮地に追い込まれていた俺たちは、徐々に反撃を繰り返し、ようやくそこまで手が届くようにまでなっていた。 少女たちを艦娘という「兵士」に仕立て上げ使役しながら… #落ちぬい二次

2016-07-15 21:46:33
リエット @rsr28083

本音を言えば、俺は彼女たちに戦って欲しくなかった。その役目は敗残者たる俺自身に全て科せられるべきことだと…もし俺のような人間に奴らを打ちのめせる力が与えられたならば俺は今すぐにでも喜んで海に向かうだろう。 だがそれは叶わぬ願いだ… #落ちぬい二次

2016-07-15 21:47:18
リエット @rsr28083

ならばせめて彼女たちが死なずに済むようにと俺は努めた…とは言っても、このボロボロの両手では受け止められた数よりすり抜けていった数の方が圧倒的に多かったが… どこまでも情けない俺だが、一つだけ譲れない執念がある。 #落ちぬい二次

2016-07-15 21:47:56
リエット @rsr28083

あの海で俺から全てを奪った化け物…でかくおぞましい尻尾を躍らせる一匹の深海棲艦。 そいつを殺すこと… ソロモン海域北部。今俺が従える艦娘たちの艦隊を向かわせている場所では、たびたびある報告が来ていた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 21:48:59
リエット @rsr28083

黒い雨合羽を着て、その小さな身の丈を超えるほどの巨大な尻尾を持つ人型深海棲艦の情報 奴だ…かつての海で打ちのめされ意識朦朧となりながらもこの片目に焼き付けた憎き敵… 尻尾付き… ようやく姿を現した奴はソロモン海域に侵攻した他の所属の艦娘たちを悉く返り討ちにしていた #落ちぬい二次

2016-07-15 21:49:36
リエット @rsr28083

その強さは、俺の想像…いや、かつての海で記憶していたものと同じく、規格外だった。 紛れもない化け物が、俺たち人間の前に確かな障害として立ちはだかっている。 俺は奴を見据え準備を始めた。 奴を意識すると、体中の傷が疼いた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 21:50:07
リエット @rsr28083

体内に未だ残っている破片が存在を主張して痛みを思い出させ、奪われた右目の空洞に熱が帯びていく。 暗く粘ついた炎が、俺をじわじわと炙っていった。 だが同時に俺は恐れた。あの尻尾付きと直接戦うのは俺ではない。艦娘たちだ。 #落ちぬい二次

2016-07-15 21:50:53
リエット @rsr28083

奴を仕留めるには艦娘の力がいる、しかし俺はここまできて尻尾付きの首を取ることを艦娘たちに託せずにいた。 奴の桁違いの破壊力とおぞましさを俺自身が嫌というほど思い知っているためだ。 正直言って…トラウマだ。 #落ちぬい二次

2016-07-15 21:51:42
リエット @rsr28083

奴の姿と奴が艦船と仲間を呆気なく引き千切る様を間近で見た俺は、恐ろしさに悲鳴を上げて狂ったのを今でも鮮明に覚えている。 そんな奴に俺の部下の艦娘たちを戦わせられるのか… 正直…Noだ… #落ちぬい二次

2016-07-15 21:52:22
リエット @rsr28083

できるはずがない…やらせられるはずがない… 準備を進めている俺は、もう色濃い敗北に侵されていった。 そんなところに俺の最初の部下、長門が拳とともに俺を叱責しに来た。 #落ちぬい二次

2016-07-15 21:53:08
リエット @rsr28083

俺の情けなさをいつもの調子でおちょくる様に責め、故意に煽る。 敗北に染まっていた俺は単純なまでに長門に逆上、待ち構えていた長門はそこを捕まえて「この長門を信じろ!」と俺に言い聞かせて来た。 #落ちぬい二次

2016-07-15 21:55:51
リエット @rsr28083

長門の力、経験、闘志、これまで共に見てきた全てを信じてみろと俺に言ったのだ さらに続いて艦隊に編成する予定だった五人の艦娘たちも俺の前に立ちそれぞれ己の覚悟を見せつけてきた 結局俺はそいつらのまぶしさと力強さにのまれついに「行ってこい」と言ったのだった #落ちぬい二次

2016-07-15 21:57:29
リエット @rsr28083

そしてソロモン海域北部。 長門を旗艦とした以下精鋭艦娘五人は海を走っていた。 航行途中で出くわす敵の雑魚艦隊など、埃を払うかのように殲滅し続けている。 ただの戦艦ル級、空母ヲ級など雑兵でしかない。 だが…尻尾付きはどうだ?…やつはやれるのか? #落ちぬい二次

2016-07-15 21:59:06
リエット @rsr28083

この期に及んでも俺の心の隅には尻尾付きの恐怖がまだ住み着いている。 行けるのだろうか?あいつらは、この恐怖の主を消し飛ばしてくれるのか? 俺は机の上で組んだ両手の指をさらにきつく結んでいく そして…時が来た… 長門からの報告が耳に飛ぶ。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:00:00
リエット @rsr28083

「奴だ」 俺の心臓が跳ね上がる。 同時に耳から通る戦場の空気、艦娘たちの息遣い。 机の機器が見せてくる艦娘たちのバイタルサインの動き。 今ここにいる俺だけじゃない、艦娘たちも緊張を示した。 今俺は、俺の艦娘たちは尻尾付きに対面したのだ。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:00:56
リエット @rsr28083

「…奴なのか?」   平静を装いながらも、しかし平静ならば発しない質問を俺はする。 長門はそんな俺の要望に応える様に丁寧に敵の姿を教えてくれた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:02:19
リエット @rsr28083

黒い雨合羽のフードをかぶり、そこからは短い白髪と赤い瞳が光る。黒と白の縞模様の襟巻をして、前ははだけ、胸部に黒の水着を当てている。 姿かたちは十代の人間の少女。 だがその後ろには、先端にサメの口のような艤装がついた、太く大きな尻尾がうねっていた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:03:15
リエット @rsr28083

長門が話す情報をもとに、俺は頭の中で尻尾付きを組み立て、できた姿を睨みつけた。 「やっと会えたな…尻尾付き」 気づいたら俺はそう呟いていた。 もはや退けない。 奴を討たなくてはならない…! #落ちぬい二次

2016-07-15 22:04:01
リエット @rsr28083

俺は震える心を抑え、覚悟を総動員し、両手で机を勢いよく叩き、声を張り、命を下した。 「各員、戦闘準備っ!目標をっ、撃滅せよっ!!」 俺の言葉に長門を含んだ艦娘たちの返答が帰る。 俺の、雪辱戦が始まった。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:04:48
リエット @rsr28083

戦闘開始から三分経った… 状況は敵味方共に拮抗状態。 いや、こちらがやや圧され始めているといったところか? 尻尾付きは大きな動きを見せていないのだが奴が従えている部下どもがやっかいすぎた。 #落ちぬい二次

2016-07-15 22:05:27
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