【ノット・ダウン】福間健二 #k2fact149

福間健二 @acasaazul

もう消えかかっている虹を見た。残り物のラタトゥイユとパンの昼食のあと、屋上にあがって。まだお腹が本調子じゃない。あの娘をすてた。あの娘を売った。あの娘を殺した。声もよく出ない。ごろりと横になりたいが、「平場」は濡れている。脚立が立ったまま。（ノット・ダウン１）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

ここから静かな息で階段をおりる。 理由をつくって純粋を排した雨水の通る壁の裂けめに、その奥から逆流する青い歌にも、クールに。進むこと、面倒くさそうでも一ミリずつ。金網に囲まれた長期休暇のきみ。光るものを落とすのが見えてくる。会いに行くよ。（ノット・ダウン２）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

どう削れるか。知っている権利のなかによくわからない権利が混じっている。全部要らない。民話的テストなら正解でおみやげもらってくださいだが、この薄情な島では「強盗を呼ぶ招待状」を出したことになる。クールに。簡単に言うが、もうばらまかれている。（ノット・ダウン３）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

学園通り西。日が暮れる。ここならというのではなく、時間切れというのでもなく、まちがって触った指令のためというのでもない。多くではなく、ひとつを決定的に失い、もう悪魔には会わない。汚れたバスで帰る人たち。おいしいソーセージ買えた主婦もいる。（ノット・ダウン４）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

野を這う生命をバカにしないし迎合もしないとすると、金網までの距離は、この社会の広さは、毎日変わる。十九歳でわかったのは別のことだが、そのころの雲を晴らせない耳に歌がきこえてくる。I’m not down. 本当に落ち込んでいるとわかる声だ。（ノット・ダウン５）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

でも、そう言う。多くの人が追い込まれると普通にやっていること。いれておいた、な。いたいな、おれて。この場合は、虚実の「実」が独特だ。いつか踏んだものに踏まれるような、ふられ方。午後二時、人の来ない集会所。虫も鳥も自分より大きな体に再生した。（ノット・ダウン６）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

その「実」にむやみに煙を吐かせないとしたら、と考えたわけではない。光の通り方に指図もないが、目が慣れて設備の灰色がわかってくる。いつもの、紙を食べる夢の出口。目覚ましの音を何に錯覚するか。ほら、出てきた。いくらでも悪あがきしそうなぼくだ。（ノット・ダウン７）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

どう生きたらいいか。自分の性能がよくわからないのに鍵も時計もなくして入っていく島の、ピンクから青にという劣化。背中に感じる風。説明しないでくれ、ここは地球だ。生きものが殺されている地球だ。食べるもの。買っておいたもの。あと何日かは、もつ。（ノット・ダウン８）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

ほとんどの人が怒っている。表現のしかたが違うだけだ。そんな「感想」に紛れ込み、この触手が役に立った。自分ではそう思う。外は雨がやみ、明かりのついた懐かしい家の前に椅子が出してある。ひとりじゃできないことは助けてもらうが、いまは座らない。（ノット・ダウン９）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

番号順も必然性も無視したフィールドワーク。それでいいのか。国分寺の家。二階に二畳の納戸がふたつあって、きみともうひとり、何度も倒れた二人が別々に隠れている。新しい「実」を求めてガムテープをはがす。ちょっと痛いかもしれないが、我慢しなさい。（ノット・ダウン10）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

ロマンティック。離れているからこその、なんとかなりそうな旋律が行き来して、三分十秒くらい。そのあとはよく聴こえなくなるが、カウントは止まらない。素直にあせるぼくは些細な要求も落ち着いて言えない。ときめかない胸が長い長い階段を降りていく。（ノット・ダウン11）#k2fact149

福間健二 @acasaazul

わかった。腸の調子や肺の位置のせいでおかしな夢を見たのだろう。順序は逆だが、鳥も、鳥に食べられる虫もいなくなって、ここが外。中が懐かしいのと中にいいことがあるというのは別のことだとわかる外だ。たおれていない。それだけじゃないことにする。（ノット・ダウン12）#k2fact149