【フレイムセスタス・トラッピング・フィッシング】#2

コセン・ニンジャ @kosn_ninja

【フレイムセスタス・トラッピング・フィッシング】#2 #flmsst

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ネオサイタマのやや辺境部。仕事帰りのやつれたサラリマンや、見るからにグレーゾーンなサイバーゴス者が行き交う表通り。その一角に、一帯を見下ろすように建てられた一つのビルがある。ワカサギ・ヤクザクランが管理するビジネスビル。名はオモテドオリタカイビル。 #flmsst

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その最上階。一面に畳の敷かれた、ドージョーめいたフロアにて、アグラ姿勢でオーガニック・トロスシを摘みながら、サツマサケをあおる一人のヤクザが居た。一年に、いや数年に一度、味わえるか否かの贅沢を一人楽しむこのヤクザの名は、フィッシャーマン。彼はニンジャである。 #flmsst

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電灯の明かりすらなく、月光が照らすこの暗闇のドージョー空間で、晩酌を楽しむフィッシャーマンは、ふとスシを摘む手を止めた。ビル一階に侵入したニンジャソウル、数は二つ。それをニンジャソウル感知能力で捉えると、彼は一人、意味深くほくそ笑んだ。 #flmsst

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ドオオオン！続いて、ビル一階から何かが衝突したような破壊音が聞こえ、最上階にも衝撃が響いてきた。だが、それを気にする様子すら見せず、フィッシャーマンは清露を満たした杯を傾ける。「来い、フレイムセスタス=サン。血を以って血を償うは道理なり。俺は逃げも隠れもせぬぞ」 #flmsst

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…オモテドオリタカイビル一階にて。 #flmsst

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「エレベーターは確保したか！？イヤーッ！」フレイムセスタスは、エレベーター前にデスクや観葉植物で作り上げたバリケードを乗り越えて突撃してきた、カタナを振りかざすバイオヤクザの腹に、重いストレートを叩き込んだ！「アバーッ!」バイオヤクザを吹き飛ばす！ #flmsst

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「まだハッキングしてる！あと三分まて！」「クソが！なんでバイオヤクザの大部隊が展開してんだよ！ここは由緒正しいクランのはずだろ！」「「「ザッケンナコラー！」」」BANG！BANG！BANG！単細胞双生児めいて完全に息が合った銃撃を、フレイムセスタスは屈んで躱す。#flmsst

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「ワカサギ・ニンジャクランのオヤブンが、ヨロシサンに魂を売ったんだよ」コモンドックはローテクな小型PDAによるハッキングを敢行している。最高機密データベースにアクセスするならともかく、たかが辺境ビルのエレベーター操作権をハッキングするなら、この程度でも十分すぎる。 #flmsst

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「なぜだ？イヤーッ！」フレイムセスタスの放ったスリケンは、手からすっぽ抜けて天井灯を割った。彼はスリケンが絶望的に苦手だ。「ファック！」「わからん。だが、何にせよ奴を殺すんだろう？だったら無意味な情報だ」テレッテレー！その時、小型PDAからファンファーレが響いた。 #flmsst

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ファンファーレがなり終わると、彼らの目の前、エレベーターの扉が開いた。銃弾の雨が迫る中、コモンドックは言った。「乗れよ。釣り人に一泡吹かせてやりな」「血の泡を吐かせてやるぜ」フレイムセスタスは意気揚々とエレベーターに乗り込むと、コモンドックを見た。 #flmsst

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腰から『アカオニ』『アオオニ』の二丁拳銃を抜き、バイオヤクザの殺戮を開始する情報屋を。「ありがとう」フレイムは言った。つい漏れ出た本音だった。「後で手間賃払えよ。こいつの重金属弾の代金もレシート付きで請求してやる」コモンドックは笑い、二丁拳銃のトリガーを引く。 #flmsst

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「最上階直通ドスエ」合成マイコ音声と共に扉が閉じた。「まったく、ああゆう手合いはすぐに金を気にしやがる」『むしろ、アキラはもっと気にした方がいい』すぐ隣から、エアナイフの冷たい声の幻聴が聞こえ、ハッとした。しかし首を振って頭をクリアにする。エアナイフは死んだのだ。 #flmsst

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「頭を冷やせ、そんなんだと死ぬぞ」逆の立場なら、俺が死んでも、彼女の頭の片隅にすら残らないだろう。なら、自分も同様に振る舞うべし。このイクサは、自らのケジメに過ぎないのだから。「到着ドスエ」合成マイコ音声が告げ、ケジメ執行者は最上階に足を踏み入れた。 #flmsst

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最上階フロアは広大なタタミ敷きのフィールドであった。周りの壁には「禍時」「直き月」「四足カラテ文明」などの深淵的なショドーが威圧的に貼られ、四つ角にはローソクが灯り、最奥壁の中央部には神棚が飾られている。その神棚の前に人影。 #flmsst

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フレイムセスタスはタタミ・フィールドの中央に移動する。そこから、名前も知り得ぬ少女の写真とセンコウが捧げられし神棚が見えた。そして、神棚に手を合わせる人影は、手を合わせたまま襲撃者に振り返り、アイサツをした。「ドーモ、フレイムセスタス=サン。フィッシャーマンです」#flmsst

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「ドーモ、フィッシャーマン=サン。フレイムセスタスです。伝統と歴史のワカサギ・ヤクザクランが、クローンを使うとは…落ちたものだ」フレイムセスタスはアイサツを返し、言った。事実、クローン化が進みつつあるヤクザ業界において、矜持あるクランはその流れに逆らい続けている。#flmsst

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おそらく、赤い血を持つ人間を使い続ける事が、彼らの最後の誇りなのか。それとも、帝王ラオモト・カンの圧力に逆らう意志か。しかし、理由がなんであれワカサギ・ヤクザクランは、その最後の誇りさえも失ったのだ。「ヨロシサンの甘い誘惑。それが俺を、このクランを変えた」 #flmsst

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フィッシャーマンはフレイムセスタスに近づく。その時、暗闇によって隠されていたフィッシャーマンの身体があらわになった。フレイムセスタスは動揺した。外見は、喪服めいた黒スーツを着込んだヤクザである。だが問題は、その顔であった。彼の顔は半魚人だった。 #flmsst

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「ヨロシサンにその身まで売ったか！」「否、売り渡したのではない。交換したのだよ」フィッシャーマンは構えた。チョップを前に出し、腰の横に拳を置いた、基本的なカラテの構え。「魂と引き換えに、何を交換した？」フレイムセスタスは猫背になり、拳を頭の横まで上げた。 #flmsst

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彼の構えは古代ボックスカラテ。タタミ・フィールド・フロアに静かで、鉛のように重い殺気が漂う。「それは…」窓から月光が両者を照らした。その時、フィッシャーマンが飛んだ！「かけがえのない物だ！イヤーッ！」全体重の乗った飛び回し蹴りがフレイムセスタスに襲いかかる！ #flmsst

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フレイムセスタスはダッキングで低く屈んで躱し、大きく踏み込み、「イヤーッ！」フレイムセスタスの頭に衝撃。「グワーッ！」なんと、フィッシャーマンはダッキングを読んでいた。踏み込みの隙を予測し、回し蹴りを打ち込みながら、反対の足で空中かかと落としを仕込んでいたのだ。 #flmsst

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なんたる変幻自在の空中連撃か。フレイムセスタスは一瞬意識が飛び、構えが解けた。そこに着地の勢いを乗せたフィッシャーマンの正拳突き！「イヤーッ！」「グワーッ！」腹に直撃。フレイムセスタスは鋼鉄メンポの中で吐血した。「イヤーッ！」続いて顔に回し蹴り。 #flmsst

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ぼやける視界の中、フレイムセスタスはよろけるようなスウェーでそれを躱し、構えを整えた。「イヤーッ！」しかし、フィッシャーマンは再起を許さない。今度は回し蹴りの勢いを乗せたサイドキックが、フレイムセスタスを吹き飛ばした。 #flmsst

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「グワーッ！」フレイムセスタスは壁に叩きつけられ、大の字に壁がへこむ。「カッカッカ！これこそがバイオテクノロジー。ヨロシサンの改造で、俺はマグロの力を手に入れた！これが半マグロ半ニンジャのカラテだ！死ね！」冒涜的半マグロ半ニンジャのフィッシャーマンは追撃に走る！ #flmsst