忍殺×鬼哭街二次創作 サイバー・スレイヤー【一殺目・ダイヤシュラ】

芸術的すぎて変える場所のない命乞い
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劉度 @arther456

ブラッドレー・ボンド&フィリップ・N・モーゼズ著 『ニンジャスレイヤー』6周年&第3部完結記念(※非公式) 虚淵玄 原案・脚本・総監修 『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』公開記念(※非公式)

2016-08-06 21:01:22
劉度 @arther456

ボンド&モーゼス『ニンジャスレイヤー』×虚淵玄『鬼哭街』 非公式二次創作 【サイバー・スレイヤー】

2016-08-06 21:02:07
劉度 @arther456

【一殺目・ダイヤシュラ】

2016-08-06 21:03:04
劉度 @arther456

(これからSSを投下します。TLに長文が投下されますので、気になる方はリムーブ・ミュートなどお気軽にどうぞ。感想・実況などは #ryudo_ss をお使いいただけると大変ありがたいです。忙しい方はtogetterまとめ版をどうぞ。それでは暫くの間、お付き合い下さい)

2016-08-06 21:04:04
劉度 @arther456

世界全土を電子ネットワークが覆いつくし、サイバネティック技術が普遍化した未来。人々は灰色のメガロシティに棲み、夜な夜なサイバースペースへ逃避する。人間はUNIXへ意識を接続し、ドロイドは艶めかしい肢体で人々を誘惑し、ニンジャが影の中に蠢く。ここはネオサイタマ。極東の享楽の街。1

2016-08-06 21:06:02
劉度 @arther456

この日、ネオサイタマは記録的な重金属酸性豪雨に見舞われていた。下水道の水は溢れ、道路を走る車が汚水に沈む。更に、老朽化した電線が切断され、市内各地で停電が相次いだ。ネオサイタマのインフラ部門の責任者たちは、明朝の記者会見でケジメすることになるだろう。2

2016-08-06 21:09:03
劉度 @arther456

水路と化したデンチ・ストリート、その中で辛うじて流れに呑まれていない小道を、2つの人影が歩いている。1人はトレンチコートに黒いハンチング帽を被り、PVC傘を挿した男。ネオサイタマではさして珍しくもない風体だ。特筆すべきところといえば、一般市民と言うには鋭すぎる眼光ぐらいか。3

2016-08-06 21:12:06
劉度 @arther456

もう1人は――いや、1体はPVCコートを羽織り、長靴を履いた少女の形をしていた。それが人間の少女でないことは誰の目から見ても明らかだ。歩くというよりバランスを取って進むと言ったほうが正しい、不安定な動き。そして、感情というものが全く欠落した顔。少女型のオイランドロイドであった。4

2016-08-06 21:15:02
劉度 @arther456

医療保険適用外であるが、こうした特殊嗜好のオイランドロイドはネオサイタマでは決して珍しいものではない。だが、男の扱いは法外なはずの値段に見合わない、ぞんざいなものだ。ドロイドが転びそうになっても見向きもしない。5

2016-08-06 21:18:01
劉度 @arther456

人形を連れた険しい目の男が、デンチ・ストリートを進む。彼らを見咎める者はいない。この土砂降りの中、寿命を縮めてまで外にでようとするのは、狂人か自殺志願者だけだ。故に、彼らがたどり着いた違法オイランドロイド窟『イシガメ』の前も、全くの無人だった。6

2016-08-06 21:21:13
劉度 @arther456

違法オイランドロイド窟『イシガメ』。デンチ・ストリートにそびえる高層ビルの上階に、密やかに存在する退廃的非合法遊戯施設だ。一部の特殊嗜好者が、夜な夜な人目を避けてここに入り、暗い歓びを満たし、カネを落としていく。8

2016-08-06 21:24:03
劉度 @arther456

周囲が停電の闇に沈んでなお、このビルだけは非常電源によって明かりを灯し続けている。ほんの数十秒の停電でも、客の気分は削がれる。それを防ぐためのリスク回避だ。もてなしや心配りでは決してない。なぜなら、このオイランドロイド窟の経営者は、ニンジャだからだ。9

2016-08-06 21:27:08
劉度 @arther456

「ハァー……」19階最奥の部屋。最高級フートンの上で、アグラを組む男がいる。常人では施術に耐えられないであろう重サイバネを全身に施したこの男が、『イシガメ』のオーナー、ダイヤシュラであった。傍目から見ればセイシンテキであろうニンジャの内心は、しかしまるで落ち着きがなかった。10

2016-08-06 21:30:07
劉度 @arther456

ダイヤシュラは力を持て余していた。新たに手に入れた力で彼の体は更に強靭になり、ニンジャでも耐えられない重戦闘用サイバネを自分の体に組み込むことができた。圧倒的パワーとスピードを手に入れた彼は、ディセンションした時以上の全能感を感じていた。11

2016-08-06 21:33:03
劉度 @arther456

しかし、それを振るう相手がいない。ソウカイヤに代わり新たにネオサイタマを影から牛耳るアマクダリは、配下のクラン同士の私闘を禁じていた。結果、ダイヤシュラがそのサイバネを活かす機会は無く、新たな力を爆発させたいという衝動だけが、彼を内側から蝕むことになった。12

2016-08-06 21:36:06
劉度 @arther456

アグラは何の助けにもならない。元々モータルの時からこのようなセイシンテキをバカにしていた。やはり、女だ。ダイヤシュラがアグラを止め、ガタのきている商品をひとつ壊そうと立ち上がった時、来客を知らせるベルが鳴った。13

2016-08-06 21:39:05
劉度 @arther456

ダイヤシュラは脳内UNIXを操作し、玄関のカメラと視界をリンクさせる。目つきの鋭い、ハンチング帽を被った男の顔が映った。『ドーモ。商品を見せてもらいたい』ダイヤシュラのニューロンに不快感が走った。こんな豪雨に、オイランドロイドを抱きに来る客など、大抵ロクなものではない。14

2016-08-06 21:42:02
劉度 @arther456

『はあ。ええ、ご予算はいかほどで……』部下がインターホンで応対する。男の電子トークンを確認したら、彼らが相応のドロイドをあてがう仕組みだ。キャバァーン!男の予算が表示される。その額に、ダイヤシュラは目を剥いた。新品のオイランドロイド3台分だ。15

2016-08-06 21:45:02
劉度 @arther456

『おい、俺が相手をする。奥に通せ』『アッハイ』ダイヤシュラと同じく呆気に取られていた部下は、すぐに男を中に通した。常識外れの客だ。だが、こうした法外なカネモチは初めてではない。こういう時は、オーナーのダイヤシュラが直々に交渉するに限る。だが、男のあの目つきが気になった。16

2016-08-06 21:48:02
劉度 @arther456

ダイヤシュラは室内の警備システムを確認する。この部屋にはマシンガンやレーザー、タケヤリトラップが多数仕掛けられており、その全てをダイヤシュラの脳内UNIXで操作できる。万一アサシンやテッポダマが店に入り込んでも、即座にネギトロと化すであろう。17

2016-08-06 21:51:11
劉度 @arther456

更にダイヤシュラは全身に重戦闘サイバネを施したニンジャなのだ。殺される理由は何一つなかった。あの男が気に食わなかったら殺してカネを奪えばいいし、そうでなければ最高級オイランドロイドを案内するだけだ。ダイヤシュラはようやく腹を決めて、男を待つ気になった。18

2016-08-06 21:54:05
劉度 @arther456

部屋のフスマが開く。トレンチコートの男は、実際に会ってみるとますます気に食わない雰囲気だった。剣呑すぎる。オイランを買いに来る気配ではない。「お客さん、いきなり押しかけられても困るんだよ。ちゃんと予約とってくれねえことにゃ、こっちだってモテナシってもんがあるんだからよ」19

2016-08-06 21:57:18
劉度 @arther456

ダイヤシュラは店の名刺を男に突きつけた。「今日は特別だが、次からはちゃんと電話してくれよ?」男は名刺を見て、それからダイヤシュラの顔を見た。「オヌシは目が見えぬのか?」「あん?」ダイヤシュラは男の顔をまじまじと見る。「……ああ、ひょっとして昔会ったことがあったかい?」20

2016-08-06 22:00:23