忍殺×鬼哭街二次創作 サイバー・スレイヤー【一殺目・ダイヤシュラ】

芸術的すぎて変える場所のない命乞い
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劉度 @arther456

「すまねえ。俺は、まあ、知ってるかもしれんが……訳あって人の顔の見分けがつかねえタチでよ」脳内UNIXを取り付ける時、闇サイバネ医師がミスをし、彼の脳に傷がついた。それ以来、彼は目の前の人間の顔と記憶を一致させることができなくなっていた。21

2016-08-06 22:03:06
劉度 @arther456

今の彼は、人を識別するのに、音声認証システムを使っている。男の声はメモリーに残っていなかったが、実際はそうでなかったようだ。「なにぶん古い知り合いだと、キャッシュを消しちまってるってこともあるかもしれねえ。もしそうなら、気を悪くしねえでほしいんだが……」22

2016-08-06 22:06:04
劉度 @arther456

「なるほど、ではもう一度アイサツしておこう」男が黒い名刺を取り出した。ダイヤシュラは受け取り、目を通す。そこには赤い文字で『ニンジャスレイヤー』と書かれていた。「え?」ダイヤシュラが顔を上げると、男の顔には恐怖を煽る字体で「忍」「殺」と書かれたメンポが装着されていた。23

2016-08-06 22:09:06
劉度 @arther456

「ドーモ。ニンジャスレイヤーです」ダイヤシュラはその名を聞いて、しばし呆然としていた。「……ドーモ、ダイヤシュラです」辛うじてアイサツを返せたのは、ニンジャの本能が体を動かしたからにすぎない。「私のメモリーを消したのは、もう二度と会うことが無いと思ったからか?」24

2016-08-06 22:12:04
劉度 @arther456

「あんたは……あんたは、死んだはずだ!」「爆発四散を確かめてからタマ・リバーに沈めるべきであったな」ニンジャスレイヤーは、ゆっくりとカラテを構える。底知れぬ殺意が篭った瞳。ダイヤシュラの脳はそれを忘れたはずなのに、ソウルがこの恐るべき死神の記憶に震えていた。25

2016-08-06 22:15:02
劉度 @arther456

「ひ、ひいっ!」悲鳴を上げながら、ダイヤシュラは脳内LANで室内の警備システムに命令を飛ばす。だが、マシンガンもレーザーもタケヤリトラップも起動しない。故障か。あり得ない。20を超えるトラップが全て動かないなど!26

2016-08-06 22:18:02
劉度 @arther456

その時のダイヤシュラは、目の前の死神に圧倒され、システムがハッキングを受けているという所にまで、考えを及ばせることはできなかった。トラップだけではない。違法オイランドロイド窟『イシガメ』の所有権は、彼からとある電子の妖精へと移っていた。無論、彼は知る由もない。27

2016-08-06 22:21:09
劉度 @arther456

「イ、イヤーッ!」ほとんどパニックになりながらも、ダイヤシュラが拳を繰り出せたのは、彼が歴戦のツワモノであったことの証だった。重サイバネに加え、邪悪なニンジャ筋力の加わったポン・パンチが当たれば、いや、当たらなくても掠めただけで、いかに死神といえどもダメージは免れないだろう。28

2016-08-06 22:24:02
劉度 @arther456

ニンジャスレイヤーは体を反らせこれを回避した。もちろん、ダイヤシュラはこの一撃に全てを懸けたわけではない。次なるポン・パンチを放つ。ニンジャスレイヤーは避ける。戻した右手を再び動かす。ニンジャスレイヤーは避ける。サイバネ駆動の両腕が、際限なく加速する!29

2016-08-06 22:27:05
劉度 @arther456

「ウオーッ!」ダイヤシュラはサイバネをフル稼働させた。マシンガンめいた疾さで、ポン・パンチを連射する!「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」沢山撃つと実際当たりやすい。江戸時代のレベリオン・ハイクを一撃必殺の拳で体現するのが、ダイヤシュラのポン・バルカン・パンチである!30

2016-08-06 22:30:07
劉度 @arther456

「イヤーッ!イヤーッ!イヤーッ!」だが、おお、見よ!ニンジャスレイヤーは頬を掠める突風に怯むこともなく、冷静な動きでダイヤシュラの拳を避け続ける!なんたるニンジャ動体視力か!「ありえねえ!ありえねえ!ありえねえ!」攻め続けているダイヤシュラが悲鳴を上げる!31

2016-08-06 22:33:02
劉度 @arther456

連打を始めて30秒、ポン・パンチは全て命中せず!脳内UNIXがサイバネのオーバーヒート危険性をアラートする!だがダイヤシュラは手を止めない。それこそがニンジャスレイヤーの狙いだと、彼は考えていた。この死神は彼が諦めて手を止めるのを待って、カラテを蓄えているはずだ。32

2016-08-06 22:36:02
劉度 @arther456

いかにネオサイタマの死神といえど、ポン・バルカン・パンチの隙間を縫って反撃はできまい。ニンジャ持久力にも限界はある。義手のオーバーヒートまでまだ30秒もある。ニンジャスレイヤーが避け続けることは不可能!ダイヤシュラはそう確信していた。33

2016-08-06 22:39:05
劉度 @arther456

だが、その確信は前提からして間違っていた。「イヤーッ!」「グワーッ!?」ニンジャスレイヤーの振り下ろしたチョップが、ダイヤシュラのサイバネ左腕を破壊した!「ありえねえっ!?」脆弱な関節部を狙ったチョップ。ニンジャスレイヤーは最初から、サイバネ義手を破壊する機を伺っていたのだ。34

2016-08-06 22:42:03
劉度 @arther456

「イ、イヤーッ!」残った左腕で、ダイヤシュラは拳を繰り出す。だが、そこにニンジャスレイヤーはいなかった。勢い余って、ダイヤシュラは体勢を崩す。その背中、ちょうど、心臓の裏側に、ニンジャスレイヤーの手が触れた。ダイヤシュラは恐怖に縛られ、身動きがとれぬ。35

2016-08-06 22:45:03
劉度 @arther456

「俺は……違う」辛うじて、声を振り絞った。「確かに……あんたにしたことは、謝る、あ、謝るよっ!だが俺は、俺は雇われただけだ!あんたのソウルを奪ったのは……」「そうだな。オヌシだけではない。心得ているとも」36

2016-08-06 22:48:02
劉度 @arther456

「いずれ一人残らず、オヌシの後を追う。まずはオヌシがサキブレだ。ダイヤシュラ=サン、ジゴクに皆の席を取っておけ」そして死神の右手が、ダイヤシュラの心臓を貫いた。「アバーッ!?」37

2016-08-06 22:50:03
劉度 @arther456

「イヤーッ!」血塗れの右手を引き抜き、ニンジャスレイヤーはカイシャクの断頭チョップを放つ!研ぎ澄まされたチョップは、ダイヤシュラの無防備な首を一撃で跳ね飛ばした。「サヨナラ!」頭を失ったダイヤシュラの重サイバネ胴体は爆発四散した。38

2016-08-06 22:52:09
劉度 @arther456

……それから1分後。ダイヤシュラの部下のクローンヤクザたちが、騒ぎを聞きつけ室内に突入したが、来訪者はもとより、彼らの上司も見つけられなかった。VIPルームには謎の爆発四散痕と、割れた窓だけが残っていた。39

2016-08-06 22:55:20
劉度 @arther456

デンチ・ストリートの一角にある軒先で、少女はぼうっと空を見上げていた。PVCレインコートのフードがずり落ち、少女の白い頬が豪雨のもたらす湿気にさらされる。時折、雨粒が顔を打つが、少女まるで反応しない。自分が雨に濡れていることも分からぬのだ。41

2016-08-06 22:58:03
劉度 @arther456

パシャン。冷たい水音が少女の聴覚センサーを刺激する。空から視線を降ろした少女は、トレンチコートの男を見た。彼は手に生首を携えている。常人なら悲鳴を上げ失禁しているだろうが、少女はまばたきすらしない。42

2016-08-06 23:00:17
劉度 @arther456

男の携えている生首は、つい先ほど爆発四散したダイヤシュラのものであった。男は懐からLANケーブルを取り出し、ダイヤシュラの生体LAN端子に接続する。すると、少女型オイランドロイドは、命じられてもいないのにその場で振り返った。43

2016-08-06 23:02:08
劉度 @arther456

少女ドロイドの首筋にもLAN端子があった。男はLANケーブルのもう一端を、そこに繋いだ。ナムアミダブツ……死体とオイランドロイドをLAN直結させるとは、なんたる冒涜的、そして背徳的な光景であろうか。44

2016-08-06 23:04:08
劉度 @arther456

死んだ脳内UNIXを接続された少女ドロイドが、電流を流されたように肩を震わせた。ドロイドに搭載されたAIが何らかのデータを吸い出している。男はその様子を、眉一つ動かすことなく、目を逸らさず睨みつけていた。45

2016-08-06 23:06:02