ギガベース日誌　2016年節分スペシャル

すふん @suhn_Akvavit

ほのぼの閑話 節分スペシャル #ギガベース日誌

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ギガベース鎮守府、第2倉庫内にて。 #ギガベース日誌

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「……どうなってやがる」 第2倉庫の扉を開いた天龍は、もぬけの殻となっていた倉庫内部を一望し、驚愕した。 現在日時は2月3日、午前0時2分。多くの艦娘が待ち望んでいた年に一度の大イベント。その要である演者達が、控室から忽然と消え去っていたのだ。 #ギガベース日誌

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「主任。俺だ。捕虜と捕獲した艦娘がまとめて第2倉庫から消えた。艦内カメラで何か……」 照明によって室内が灯された瞬間、天龍は暗闇に隠れ部屋の片隅で蠢いていたそれを発見した。 「あぁクソッタレ……マジかよっ……！！」 #ギガベース日誌

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同日7時、ギガベース鎮守府中央大ホールにて。 #ギガベース日誌

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ギガベースに所属するほぼ全ての艦娘が一同に集結し、大ホール内は賑わいで満ちていた。 艦娘達はいずれもショットガン型の武装を手に持ち、談笑に花を咲かせている。 「お待たせいたしました。これより、開会式を始めさせて頂きます」 #ギガベース日誌

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司会進行を務める技術長妖精大宮の声が響き渡り、壇上を照明が照らす。 「まず初めに、今年の実行委員長である天龍さんからご挨拶をっ……あっちょっと？その格好はどうし……天龍さん？！」 艦娘達の前に表れ乱暴にマイクを掴んだ天龍。その左腕は失われていた。 #ギガベース日誌

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非戦闘時であるにも関わらず艤装を身に付け、損傷を負っている天龍の様子は、多くの艦娘の目には尋常でないように見えた。何度か咳き込んだ後に、天龍は肩で息をしながら枯れた声を吐き出した。 「実行委員長天龍より、全艦に通達する……」 #ギガベース日誌

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「今年の節分は中止だ」 #ギガベース日誌

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午前11時、執務室内。 「話を整理しようか。昨日の深夜に最下層隔離区域から脱走したと思われる天城が、艦娘の臭いを嗅ぎ付けたのか第2倉庫へと侵入。その場にいた捕虜と艦娘を喰らい尽くした後、鬼役にお面を配布しに来たお前に襲いかかったと」 「だいたい合ってる」 #ギガベース日誌

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損失した腕部を妖精達に修理させながら、天龍は投げやりに返答した。 「鬼役がいなくなっては仕方あるまい。残念だったな」 「軽く言ってくれるぜ。艦娘同士で豆を投げ合うと乱闘騒ぎになるからやめろっつったのは提督だ」 「……泣いてんのかお前」 #ギガベース日誌

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「当たり前だろ！去年から準備してたんだぞ？！抑えの効かない連中に撃沈せずに捕獲するようしつこく言い聞かせたりっ！」 「たかが豆投げごときで」 「あんた日本人じゃないからわかんねぇだろうよ！豆投げらんなくなった艦娘の気持ちなんてっ！！」 #ギガベース日誌

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「わかるかビスマルク」 「理解し難いわ」 「たりめーだ引っ込めナチ公！」 「お前はどうだ不知火」 「不知火は別に、どうとも」 執務室で茶を啜っていたビスマルクと不知火の冷淡な返答を受け、天龍は柄にもなく泣き崩れる。 #ギガベース日誌

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「お前はともかく他の連中はどうなんだ」 「似たような調子さ。皆引きこもってる」 「近海哨戒にすら出やがらねえのはそのせいか」 「木曾から球磨のゲロを奪うようなもんだよ」 DfJは頭を抱え、唸る。 #ギガベース日誌

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「……何とかするか」 「本当かっ？！」 「ここまでやる気を失われちゃたまったもんじゃないからな。ちょっと待ってろ」 DfJは端末を操作し、大淀と大宮への通信回線を繋いだ。 「俺が一肌脱いでやる」 #ギガベース日誌

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三時間後。 #ギガベース日誌

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個室区画の通路を駆け抜ける鈴谷と摩耶。二人の前方には、背を向け逃げる長門の姿があった。 「こちら鈴谷！左船体側個室区画内で赤組の鬼を発見したよー！」 「間違いないの？」 「"鬼特権"のプライマルアーマーと実弾武装持ってるし、間違いないって！」 #ギガベース日誌

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「目標は現在艦橋方向へ逃走中！姉貴！挟み撃ちにできそうか？！」 「左船体側の艦橋付近は既にこちら側が制圧しているわ。エレベーターをブッ壊して下層にでも行かない限り、そのまま追いかければ私達の勝ちよ」 「っしゃあ！このまま追い詰めっ」 #ギガベース日誌

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鈴谷と摩耶の真横から、爆音と共にコジマコーティングを施された大豆がドアを突き破り殺到。豆の直撃を喰らった2隻は派手に転倒し、艤装から白旗が飛び出した。 「白組、鈴谷、摩耶、戦闘不能」 「んな……馬鹿な……」 「一体何が……」 「びゃーははははは！！！！！！！」　#ギガベース日誌

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ドアの裏から現れた卯月は、狂ったように笑いながら2隻を踏みつける。 「レギュレーションで指定された戦闘区域はギガベース艦内もしくは甲板の全域！個室に隠れて騙し討ちしようが問題無いっぴょ～～んっ！！！」 「てめえ……」 「不覚……」　#ギガベース日誌

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ギガベース鎮守府、食堂。 ビスマルク、レーベ、不知火、そしてDfJが座るテーブルに山盛りにされたジャーマンポテトが運ばれる。 「チーム対抗の豆投げ合戦ですか。面白そうですね」 「あいつ等が満足すりゃいいが」 「この短時間で、よくレギュレーションを仕上げたわね」　#ギガベース日誌

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「トーラスのアーカイヴで無料配信してる60年ほど前のアニメを最近見ててな。だいたいのルールはそこからパクった」 「各チームで1隻ずつ選定された”鬼”が被弾した時点でチームは敗北するが、鬼にはPAと実弾の使用が許可されている……」　#ギガベース日誌

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「鬼はチームの弱点であると同時に切り札にも成り得るという事だね。投入のタイミングが戦況を左右しそうだ」 「そうだな。それ以前にあいつ等がルールを守って楽しく戦いなんてできるのかってのが不安だったが、杞憂だったな」 DfJは呑気に答え、ポテトをビールで流し込む。　#ギガベース日誌

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DfJの思惑通り、艦娘達は急場しのぎとして与えられたスポーツのような戦いにそれなりに熱中し、レギュレーションに則りつつ熱い攻防を繰り広げていた。 しかし、DfJはの認識は甘かった。 都合のいい恐怖は、世界の常であるというのに。　#ギガベース日誌

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ギガベース甲板。艦娘達が放つ大豆の嵐は、甲板上に並び立つノーマルACに阻まれる。 「おい大淀！AC使うのは反則だろうがぁ！！さっさと奴等をしょっぴけ！！！」 「UNACがメンバーとして登録されており、装備しているのは全て大豆兵装ですので違反では……」　#ギガベース日誌