2016年に『銀河英雄伝説』の続編を作るとしたら……という妄想。

内容はタイトルの通りです。自分用のまとめ。いずれ小説投稿サイトで書くかもしれません。
41
カトル・カール @nekogami_chang

いま『銀英伝』の続編が書かれたらどうなるかな、と妄想しています。ローエングラム王朝はユリアンの献策通り、立憲君主制+議会制に移行していて、ゆるやかな連邦国家みたいになっている。片方の主人公はラインハルトの末裔である帝国の皇太子。

2016-08-08 13:27:57
カトル・カール @nekogami_chang

彼と彼の父である皇帝は、英明ではあるものの、政治的な野心はまったくなくて、平穏に暮らしている。しかしそんな中、帝国の辺境にある惑星で、帝国の役人による不正事件に端を発して暴動が起きる。帝国議会は暴動への対処を誤り、暴動は帝国に対する独立運動へと発展していく。

2016-08-08 13:35:15
カトル・カール @nekogami_chang

不測の事態に、帝国議会は紛糾。混乱の中、議会内で台頭してきたのが、帝国の権力を強化しようと目論む中央集権派。中央派はかつて与党内の弱小勢力に過ぎなかったが、選挙を経て議席数を伸ばし、議会内で過半数を超えたところで新たな党として独立。

2016-08-08 13:41:50
カトル・カール @nekogami_chang

帝国議会が政争に明け暮れる中、辺境から始まった独立運動は各地へと飛び火していた。これを受けて中央派は「皇帝による親征」を献策。皇帝は難色を示すが、不甲斐ない政府に腹を立てる国民の声に抗いきれず、大規模船団を編成して反乱の制圧に向かう。

2016-08-08 13:46:11
カトル・カール @nekogami_chang

かくして、辺境の寄せ集め軍と帝国の大船団による会戦が起きることになる。軍の規模、練度の差は明らか。反乱軍が完膚なきまでに殲滅されるのは時間の問題だと思われた。しかし、ある一人の軍事的天才の策により、帝国軍は緒戦で惨敗を喫する。

2016-08-08 13:52:11
カトル・カール @nekogami_chang

この敗退によって、帝国軍は主力艦隊、そして旗じるしである皇帝を失った 。混乱する帝国の艦隊は、反乱軍の手によって次々と各個撃破されていく。帝国軍の後詰船団にいた皇太子は、瓦解した艦隊を急遽再編成し、反乱軍の追撃部隊を迎撃。見事な采配で敵に大打撃を加える。

2016-08-08 13:56:58
カトル・カール @nekogami_chang

再編された帝国軍による大反撃により、反乱軍は退いた。しかし、この会戦の勝者がどちらであるかは、誰の目にも明らかであった。これを機に、帝国は求心力を失い、帝国の支配に反感を持っていた地域が次々と独立運動を起こすようになる。

2016-08-08 13:59:58
カトル・カール @nekogami_chang

皮肉にも、各地での独立運動が強まるに従い、中央派はますます発言権を強めていく。帝国の中枢地域に住む人々は声を揃えてこう叫ぶ——「再び強い帝国を!」 帝都に戻った皇太子は、新たに皇帝となった叔父、愛する夫を失って傷心に沈む母とともに臣民の熱狂に戸惑っていた。

2016-08-08 14:06:50
カトル・カール @nekogami_chang

その後、皇太子は散発する反乱を鎮圧するために、各地を転戦することになる。軍事的才能を開花させた彼は連戦連勝。臣民たちは彼のことを「偉大なる皇帝ラインハルトの再来」と称え、「強い帝国」の復活の象徴とみなすようになってくる。

2016-08-08 14:19:51
カトル・カール @nekogami_chang

その間、最初に独立運動を始めた星は、近隣の星域を制圧しながら勢力を伸ばしていた。やがて彼らは、自分たちのことをこう呼ぶようになる——「自由惑星同盟」と。

2016-08-08 14:23:45
カトル・カール @nekogami_chang

帝国は、急激に力を伸ばす同盟に対して手を出せないでいた。次に戦って負ければ、帝国の権威は地に堕ちる。同盟もまた、強大な帝国に対して正面から戦いを挑む力はなく、両者は緊張感を持ったままにらみあうことになる。

2016-08-08 14:27:14
カトル・カール @nekogami_chang

そんな状況の中、「平和で結構じゃないか」とやる気のない言葉を吐き、周囲から白い目で見られていた男がいる。彼こそが、かつて帝国軍を退け、皇帝を討ち取った英雄その人であった。

2016-08-08 14:30:07
カトル・カール @nekogami_chang

「皇太子の転戦によって、各地の独立運動は収まりつつある。ほうっておけば、このバカ騒ぎもいずれ終わるさ」と嘯く彼に対して、同盟の中核メンバーは「何を言ってるんだ。そうなったら、次は同盟が攻めらる番だぞ」と詰め寄るが、英雄本人はどこ吹く風。

2016-08-08 14:32:43
カトル・カール @nekogami_chang

「いまの皇帝も、そしてあの皇太子も、そんな間抜けじゃありませんよ。同盟の支配地域は、さほど豊かではない。彼らにとっては支配しても旨味がないんです。戦争で奪還するよりも、時間をかけて経済で締め上げて、実質的な支配関係に置く方が得策のはずです」

2016-08-08 14:35:59
カトル・カール @nekogami_chang

しかし、彼の意見は弱腰と捉えられ、同盟内では主流派にはならなかった。家で「やれやれ、歴史に名高いヤン・ウェンリーの苦労がわかった気がするよ」と愚痴る彼に、家族は「僕は、生活能力のないヤンを支えたユリアンの気持ちを日々理解してますよ」と言って笑う。

2016-08-08 14:42:30
カトル・カール @nekogami_chang

それからしばらく時は流れて。帝国各地で起きていた独立運動は、次第に下火になっていた。皇太子はほっと胸をなでおろすのだが、ここで彼の運命を変える大事件が起こる。彼の母親、前皇帝の皇后が、同盟支持者のテロリストに襲撃されたのである。

2016-08-08 14:46:35
カトル・カール @nekogami_chang

重傷を負った皇太后はすぐに病院に担ぎこまれたが、その命は風前の灯火だった。死の床にある皇太后は、病院に駆けつけた皇太子に「民を憎んではいけません」とだけ言い残し、ヴァルハラへと旅立った。

2016-08-08 14:49:47
カトル・カール @nekogami_chang

暗殺事件をきっかけに、帝国内の世論は「同盟討つべし」という主戦論に大きく傾いていく。皇太后の国葬は、開戦を唱える中央派のプロパガンダとして利用された。帝都の大通りを運ばれていく皇太后の棺には、詰めかけた臣民たちの悲しみ声、同盟に対する怒り怒号が投げかけられた。

2016-08-08 14:53:43
カトル・カール @nekogami_chang

皇太子は煩悶しながらその様子を見ていた。母は死の間際に「民を憎むな」と言った。母の命を奪ったのも民であれば、いま母の死に際して、軽はずみに開戦の声を上げているのもまた民である。自分はどうすればいい?

2016-08-08 14:56:47
カトル・カール @nekogami_chang

国葬が終わり、開戦の気運は抑えきれないほどに高まった。臣民たちは求めていた——皇帝ラインハルトの再来である彼が艦隊を率いて、自由惑星同盟を僭称する反徒どもを殲滅するのを。そして、議会は臣民の声を受けて開戦を決定する。

2016-08-08 15:03:52
カトル・カール @nekogami_chang

最後まで反対した新皇帝も、ついには世論に抗しきれなくなった。彼は開戦の詔勅と、皇太子を最高司令官に任じる書類に印璽を押した。「私が不甲斐ないばかりに、きみには迷惑をかけるな」そういって皇太子に詫びる皇帝の髪は、ここ数年の心労によって真っ白になっていた。

2016-08-08 15:08:59
カトル・カール @nekogami_chang

そのころ、自由惑星同盟の首都では、かの英雄が頭を抱えながら毒を吐き散らしていた。「帝国のボケ政治屋どもめ! あいつら、死体の数を増やすのが仕事だと思ってやがる。同盟の兵士でも、帝国の兵士でも、死体の種類は問わず、だ。嫌になる」そう吐き捨てる彼の手元で、呼び出しの電話がなった。

2016-08-08 15:13:41
カトル・カール @nekogami_chang

帝都の宇宙港では、宇宙の海原に向けて出撃する皇太子を見送るパレードが開催されていた。港の一番目立つ場所に鎮座するのは、ラインハルトの再来と呼ばれる青年が搭乗する旗艦ブリュンヒルデ。英雄の船の名を冠したその艦には、輝かしい黄金獅子(ゴールデンルーヴェ)の紋章が刻まれていた。

2016-08-08 15:21:47
カトル・カール @nekogami_chang

後世の歴史家は、この後の10数年を指して「伝説の時代」と呼ぶ。歴史上唯一、魔術師ヤンに比肩すると謳われる男と、黄金の獅子ラインハルトの再来と呼ばれた男。二人の天才と、彼らに付き従って戦場を駆けたあまたの英雄たちが紡ぎ出す伝説が、いま始まる——。(終)

2016-08-08 15:29:01
カトル・カール @nekogami_chang

と、長々書いてみたのですが、どうでしょうか。わたしはこういう話、すごく読みたいんだけど、誰か書いてくれませんかね。

2016-08-08 15:30:06