貴方の隣にいるということ

3LDK @s_and_a_room

1 唇に触れる 頬杖をつく 寂しがっている証拠 姿が見たい 声が聴きたい 貴方の体温に触れたい 全部隠して でも見つけてほしくて もがいていたあの頃の私 ふと思い出して愛おしくなる

3LDK @s_and_a_room

2 今　隣にあるのは 力強く歌う彼の姿 顔をあげて歩いていく 彼の隣が似合う私であるように 彼が誇りに思えるように 私がそうであるように pic.twitter.com/VjCqU6BuRB

拡大

3LDK @s_and_a_room

1 すばるに頼まれて、忘れ物を届けに来たライブリハ中のスタジオ。 外にいたマネージャーさんに預けて帰ろうとしたけど、直接どうぞって言うから、曲の合間にこっそり中に入る。 普段見ることのない、メンバーの姿。 すばるの本当の姿。 7人が紡ぎだす音に聞き入る。

3LDK @s_and_a_room

2 「ありがとう。悪かったな」 休憩に入ったすばるに荷物を手渡す。 『ううん、近くに用事あったから』 会話をしながら、メンバーやスタッフさんと挨拶を交わす。 「…」 『すばる？』 「ヒナが気になるか？」 『は？』 突拍子のない質問に、間抜けな声が出た。

3LDK @s_and_a_room

3 「見とったやろ？」 皆のこと見てたつもりだし、意識してなかったけど…。 「チラッチラ気になんねん」 『集中してたんじゃないの？』 「見えるとこにいるお前が悪い」 言いがかりじゃん…。 『見てたつもりはないけど…強いて言うならピアノじゃない？私も弾くから』

3LDK @s_and_a_room

4 痴話喧嘩でもしてるように見えてるんだろうか。 大倉君とヤス君がこっちを見て笑ってる。 『ほら、休憩終わりって』 次行こかーって誰かが声をあげてる。 「お前、後は？」 『後？帰るよ』 「何もないなら、待っとけ」 『気散るんじゃないの？』 「ええから」

3LDK @s_and_a_room

5 仏頂面してマイクの前へ戻って行く。 隣の丸ちゃんとこそこそ何か話して…あ、笑った。 鏡大きいからどこにいても見えるんだよなあ…。 なるべく邪魔にならないように、場所を移動する。 機材に触らないように、ケーブルを踏まないように。

3LDK @s_and_a_room

6 鏡越しにすばると目が合う。 もっとあっち…ダメだ、演奏始まった。 始まったのは、アップテンポのラブソング。 皆の音が重なって、空気がどんどん加速する。 音に身を任せる。 気持ちいい。 練習でもリハでも本気な、すばるの声。

3LDK @s_and_a_room

7 閉じていた目を開ける。 また、目が合う。 目障り？ 心配になったけど、すばるが目を反らさない。 私を見ながら、歌ってる。 一気に顔が熱くなる。 何してるか分かってるの？ いつも、ライブで私を見つけたって、そんな事気にする人じゃないじゃない。

3LDK @s_and_a_room

8 歌うことが貴方の生きること。 ライブは貴方の生きる場所。 そこに、邪念が入ることなんてない。 なのに。 今、貴方は誰に向かって何を歌っているか、自分で分かっているの？ 待ってろって言ったのは、そういうこと？

3LDK @s_and_a_room

9 皆がチラチラとすばると私を見ているのが分かる。 でも、反らさずに想いを受け止める。 覚悟と決意を持って。 零れそうになる涙を必死で堪える。 曲が終わって、大きく息を吐く。 すばるも、目を閉じて上を見る。 もう私を見ることはない。 自分に集中して作業を進めていく。

3LDK @s_and_a_room

10 一度だけ。 言葉より雄弁な貴方の歌。 最高のプレゼント。 多分、最初で最後のラブソング。 すばるの後ろ姿。 耳が赤い。 そんな気がした。