アイドルスレイヤー#4【レジェンド】part2

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固いマットレスの上、春日部ハルは窓から差し込む日の光で目を覚ました。｢……ン？｣ 起きてすぐ、彼女は腕を後ろにまわされ、なにかで縛られていることに気がつく。実際厄介なことになったかもしれない。ハルはこれからの事をおもうと気が重くなった。1 #ナナニン

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｢誰か、誰かいますか？｣まずは人を呼ばないことにはどうしようもない。相手が敵対意志を持っているなら、残った足で一戦交えるだけだ。 ｢誰か！誰かいないんですか？｣監獄めいた鉄製格子ごしにハルは呼びかけ続ける。ハルの声に応える者はいない。どうしよう、彼女は途方に暮れた。2 #ナナニン

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【レジェンド】part2 #ナナニン

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ハルが格子を無理矢理突破しようとしたり、溶解させるためのミソスープを探して数十分を過ごした後、家主はやっと帰ってきた。米俵めいて少女を担いで。 ｢あの……｣｢おう、起きてたか。流石アイドル、丈夫だな｣元気そうなハルを見て金髪の少女は笑った。3 #ナナニン

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｢えっと、この縄はどういう……？｣｢すまねぇ、素性のわからねぇアイドルを自由にさせるわけにはいかねぇんだ｣野々原ヒメは心底申し訳なさそうに言い、担いでいた少女を床に寝かせた。 ｢ロナ=サン……！｣｢やっぱり知ってるのか｣ハルの反応に、ヒメは予想通りという反応をした。4 #ナナニン

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｢えっ、なんで私が彼女と知り合いだと知ってるんですか？｣｢七咲ニコル、と呻いていたぜ｣ハルはハッとした。 ｢そしてこのアーケード近くで七咲ニコルの憑依者が暴れていた。関連があると思うのは当たり前だぜ｣ロナをフートンに寝かしつけたヒメは、ハルを格子の外に出す。6 #ナナニン

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｢話を聞かせてもらったら拘束は外すから、我慢しててくれ｣｢ハイ｣それからハルはヒメに今回の逃避行を全て話した。ヒメは時々、｢やっぱりか……｣とつぶやいていた。 ｢ありがとうな、拘束外す担当呼ぶから、少し待ってくれ｣ヒメがホロコンで連絡をするとすぐ、戸を叩く音がした。6 #ナナニン

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｢早いな……｣ヒメが戸を開けると、｢ただ今参上しました！！｣とおかしな目つきの少女が入ってくる。｢もうアイドルのオーラがむんむん来てますよ！｣ ｢お、おう、それじゃ、このハル=サンの拘束を解いて、彼女を拘束してくれ｣ヒメはロナを指さす。7 #ナナニン

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｢ロナ=サンを拘束？ナンデ？｣｢素性のわからないアイドルは動けないようにしなきゃダメなんだ｣ヒメは答えると、｢すぐ拘束は解けるさ｣と明るく言った。 ｢ドーモ、堺屋ユメノです｣｢ドーモ、春日部ハルです｣アイサツを終えると、ユメノはハルの両手を束ねていたフープを外した。7 #ナナニン

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ハルの腕から外したフープをそのまま、ユメノはロナの両腕にはめた。｢ごめんね｣とユメノは小さく謝る。 ｢しかし、格子の中に入れるとなると、フートンごとになるな。かなり体力を消耗してる｣｢というと？｣｢ひどい熱だぜ、七咲ニコルの力に引っ張られてるのかもな｣8 #ナナニン

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｢七咲ニコルって何者なんですか？かなり名のあるアイドルらしいですけど、聞いたことないですよ？｣ハルの疑問にヒメはしばし黙り、そして口を開く。｢わかった、なら知ってるやつに会いにいこう｣ ｢ヒメ=サンは知らないんですか？｣｢人から聞いただけさ、それとタメ口でいいぜ｣9 #ナナニン

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｢ユメノ、ちょっとそのロナ=サンを牢屋の中に寝かしといてくれ！｣｢アイアイ｣ユメノがロナを部屋に運び終えると、3人で少し外に出ようということになった。 目的地まで歩いている間、ユメノはハルを質問攻めした。ヒメは慣れているのか、うんざりとした顔を作っていた。10 #ナナニン

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｢これどこに向かってるんです？｣｢ハルの質問に答えてくれる人へのお土産を買いにいってるんだ｣｢私の働いてるお店ね！｣ユメノは少しアッパー気味なテンションだった。 少し歩くと、洒落たカンバンを出す店が見えてくる。｢私がヨージンボーやってるお店なの｣11 #ナナニン

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｢入るぜ｣ヒメが扉を開けると2人の店員がカウンターにいた。｢いらっしゃい！｣｢またオミヤゲ？｣ ｢おう、こいつがサワラの話が聞きたいっていうからよ｣｢ドーモ、春日部ハルです｣｢瀬戸ファーブです｣｢越前ムラサキです｣お互いアイサツすると、ファーブは裏に入っていく。12 #ナナニン

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｢今裏に取りにいってるから待っててね。……ところでなに聞きにいくの？｣｢七咲ニコルについてだけどよ、そもそもハルはアイドルそのものについてよく知らないみたいだ｣なるほど、とムラサキは相づちを打った。 ｢でも、閣下のが……｣｢お前ら信者はいつもそれだよな……｣13 #ナナニン

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｢閣下って誰のことです？｣｢ああ、羽生田ミトっていう伝説のアイドルのことだよ｣｢伝説つってもよ、こいつ豆腐と歌以外は全然執着心なくて、アイドルらしくねぇよな？｣ヒメの本人が近くにいるような喋りにハルは違和感を覚えた。14 #ナナニン

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((うーん、まさか彼女にミトが憑依したとはねぇ……))コニーが久々に顔を出し、難しそうな声色でつぶやく。ハルは小声で｢彼女というと？｣と聞く。 ((そこのヒメって子だよ))｢エッ｣思わずハルは驚きの声をあげる。ユメノやヒメがちらと見るが、また持ち場や会話に戻る。15 #ナナニン

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｢あ、あの、ヒメ=サンにはその閣下が憑依して……？｣｢おう、よくわかったな｣少し驚くヒメ。｢今は1日1個のトーフと1回の歌で満足してるんだぜ、こいつ｣ ｢そういう無欲なところも閣下らしくていいよ｣ムラサキはフッと笑う。｢張り合いがねぇんだよな｣ヒメは呆れている。16 #ナナニン

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そこへ裏からファーブが紙袋をもって戻ってくる。｢ねぇねぇ、今閣下って聞こえたけど！｣｢ちょっと話をね｣ ｢ところで、最近商売はどうだ？｣とヒメは明るい風を装って聞く。 ｢さっぱりだね、ユメノが来てからまた締め付けが厳しくなったみたい｣ムラサキは肩をすくめる。17 #ナナニン

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｢なるほどな、じゃあそろそろ｣｢サワラ=サンに食べられないようにね｣紙袋を受け取ると、ヒメはハルを連れて外に出る。ユメノとはここでお別れだ。 ｢あの、サワラ=サンっていうのは……｣｢質問が多いな、実際会えばわかるさ｣ヒメは少し剣呑なアトモスフィアを漂わせていた。18 #ナナニン

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しばらくして、｢さ、着いたぞ｣とヒメが立ち止まったのはマンホールの前。｢えっ、ここ……？｣ ｢おう、あいつら地下暮らしだからな｣ヒメはハルの困惑した顔を見てフフッと意地悪に笑った。｢ま、初見じゃびっくりするよな｣19 #ナナニン

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｢ほら、入った入った！｣フタをずらし、ヒメは先にハルを入れる。 ハルが下に降りたことを確認したヒメは、元の位置に戻し、自身も降りる。 ｢うわぁ……、虫とかネズミがいるよヒメ=サン……！｣怯えるハルにヒメは｢アイドルが虫くらいにビビるなって！｣と肩を叩く。20 #ナナニン

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目指すは謎のアイドル、サワラのいる地下住居。先程の虫のせいか、いつまで経っても小幅でしか歩けないハルに、ヒメはしびれを切らしたのか、彼女の手をとって歩き始めた。｢アッ、ヒメ=サン！｣｢るせー！こうしなきゃいつまで経っても着かねぇよ！｣21 #ナナニン

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ツカツカとこちらの腕を引っ張り排水路脇を歩くヒメを見ながら、先程まで自分を縛っていたアイドルに引っ張ってもらっている事実にハルはフッと笑った。22 #ナナニン

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【レジェンド】part2 完 #ナナニン