討論が巧くなった日本人・・・そろそろ築論に移ろう

かつて討論下手と言われた日本人。しかしネットでは相手の論を討ち負かす討論の技術が相当向上している。しかし討論は知の不毛化を招く。そろそろ知を磨く築論に移ろう。
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shinshinohara @ShinShinohara

90年代前半、日本人は「討論が下手」とよく言われた。白黒はっきりさせるのが苦手で、中間のグレーがあるのは当たり前だと思っていたし、自分のことをさておいて他人の欠点をあげつらうのははしたなく恥ずかしいことだという考えが染み付いていたので、下手だったのも無理はない。

2016-08-21 14:49:31
shinshinohara @ShinShinohara

ネット上の住人は、暇に明かせて揚げ足とりを練磨してきたためか、討論が実に巧くなった。どうやら「黄金のパターン」が確立されつつあり、様子を見ている人間がどんどんその手法を習い覚え、増殖中。

2016-08-21 15:04:10
shinshinohara @ShinShinohara

2000年代に入って、日本人は討論が実に巧くなった。もう少し分かりやすく表現すると、揚げ足とりが実に巧み。相手の弱点を見極め、そこに集中攻撃。相手のよいところなんか一切顧慮しようとせず、ダメなところがあればすべてダメ。かつて日本人が恥ずべきこととしてやらなかったことが大普及。

2016-08-21 15:05:05
shinshinohara @ShinShinohara

討論にうまくなるコツ。相手の弱点を徹底して突く。もし批判を相手が嫌がるようなら、「批判を聞こうとしないでどうしてまともな考えができるものか」と批判する。叩き潰そうとする。相手の論を討つ、まさに討論。

2016-08-21 15:07:19
shinshinohara @ShinShinohara

コツその2。相手が自分の弱点を突いてきたら「それは大したことじゃない」とかわす。どれだけ厳しく批判されても「大したことじゃない」から痛痒にも感じない、という厚顔ぶりを発揮する。すると、相手は攻めあぐねてしまう。

2016-08-21 15:09:02
shinshinohara @ShinShinohara

コツ3。相手が自分と同じように「それは大したことじゃない」と弱点を過小評価しようとしたら「お前が大切にしているはずのものを過小評価していいのか!」と、相手の倫理観、正義感に照らして批判する。自分の考えに愛がある人、正義感がある人はこれをやられるとからきし弱い。

2016-08-21 15:11:36
shinshinohara @ShinShinohara

では討論に強い人間は、なぜ自分の弱点を突かれても厚顔無恥ぶりを発揮できるのか。彼らは自分に首尾一貫性がなくても平気。自分の思想に矛盾があっても平気。なんならそれまでの主張を平気で捨てることもできる。彼らにとって重要なのは討論に勝つことであって、美学を大切にすることではない。

2016-08-21 15:14:02
shinshinohara @ShinShinohara

こうなると、美学を持つ人ほど討論に弱くなり、美学のない人間ほど討論に強くなる。かくして美学のない人間が言論を支配し、「悪貨が良貨を駆逐する」ごとく、信念のない人間が社会の潮流を形成する。

2016-08-21 15:15:47
shinshinohara @ShinShinohara

完全な人間などいるはずがない、自分も不完全な人間の一人という健全な自覚を持つ人間は、討論全盛のこの時代にあっては、弱点を突かれっぱなしでへこむしかない。すっかり嫌気が差し、討論の場に出なくなる。結果、ネットでもテレビでも言論を支配するのは厚顔無恥な討論好き。

2016-08-21 15:18:15
shinshinohara @ShinShinohara

討論=議論と考えられることが多いが、相手を打ち(討ち)負かすことを目的とする討論と、異なる意見にも耳を傾け、建設的に思考を深める議論とは同列に論じられない。しかし議論という言葉には討論の意味も含まれているので、どうしても混同しやすい。そこで私は「築論」と呼んでいる。

2016-08-21 15:20:47
shinshinohara @ShinShinohara

相手の意見にも見るべきものがある。自分の意見にも他人にない特徴がある。互いによいところを持ち寄り、一人ではなし得なかった深い思考を可能にする。共同作業で理論を築く議論の仕方を「築論」と呼ぶことにしている。

2016-08-21 15:22:48
shinshinohara @ShinShinohara

築論はネット上では今一つ広がらないが、地方自治ではその試みが普及しつつある。ファシリテーションやワークショップ、アクティブラーンニングなど、互いの知見を持ち寄りながら論を高めていく築論が実現できている。現実社会は築論のテクニックが確実に広がっている。

2016-08-21 15:25:04
shinshinohara @ShinShinohara

討論と築論では、快感の種類が違う。 討論では、相手の論を打ち負かし、自分だけが生き残ったという優越感に浸れる。その代わり、自分以外は敗者だらけの不毛地帯。 築論では高度な議論の中に自分の意見も一部取り入れられた自己効力感が得られる。しかもその築論は多くの人に共有されている喜び。

2016-08-21 15:28:11
shinshinohara @ShinShinohara

討論は知の建築を否定し、ひたすら破壊を行うだけなので知の不毛化が進む。築論は知の建築を重視し、ひたすら建築を続けるので知の資産がどんどん蓄積される。どちらがよいかは一目瞭然。

2016-08-21 15:30:28
shinshinohara @ShinShinohara

日本人はこの事がよく分かっていたから、90年代までは白黒ハッキリさせようとする欧米式の思考に批判的だった。ところが2000年代に入ると、日本人と欧米人の人種が入れ替わったのではないかと思えるほど、西洋人はグレーを重視し、日本人は白黒に単純化するようになった。知の劣化。

2016-08-21 15:32:45
shinshinohara @ShinShinohara

日本人が討論にうまくなったのは「まあまあそういきり立たずに、相手の意見も聞こうよ」という旧来の知恵を捨て去り、相手を言い負かすというはしたなさを平気で実行できるようになった厚顔無恥によるもの。今後、討論ばかりで築論しようとしない人間には「討論がお上手ですねえ」といってやればいい。

2016-08-21 15:35:50
shinshinohara @ShinShinohara

討論に負けると悔しい。だからといって相手と同じ討論の技法を採用すると、相手のよいところを認めず、自分の正当性だけを主張する下らない人間に自分もなってしまう。「品位喪失病」を伝染されてしまう。そうして、日本全体が劣化する。 否、否、否!落ち込むな!引きずられるな!自分を失うな!

2016-08-21 15:39:39
shinshinohara @ShinShinohara

相手のよいところを認めるという築論の前提を無視し、ひたすら言い負かそうとする人間に対しては「討論がお上手ですねえ」と言ってやるようにしよう。相手の罵倒に付き合う必要はない。相手は自分と同じ低さにあなたを引きずりこもうとしているだけ。乗ればあなたも同じ穴のムジナ。

2016-08-21 15:42:40
shinshinohara @ShinShinohara

自己への反省もなく、相手を討とうとばかりする討論好きは「討論がお上手ですねえ」と言ってやり、「あなたは私の意見のどこがよいと思いますか?」と投げてみよう。見るべきものがないと全否定するようなら、「あなたは築論する気がないのですね」で話をやめてしまおう。

2016-08-21 15:44:59
shinshinohara @ShinShinohara

日本人は討論がうまくなったが、ちっとも良いことがない。人間がガサツになっただけだ。それよりは築論に巧くなろう。討論なんて低レベルな技術に沈湎せず、築論という古くて新しい技術に取り組んでみよう。自分も他人もWinWinという面白おかしい体験ができるだろう。

2016-08-21 15:58:29