《ヴァルプルギスの華燭》三日目昼――第二の間

昼フェイズ、戦闘 その姿は如何なるものか
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《ヴァルプルギスの華燭》管理アカウント @walpurgis_marry

三度目の光が君たちに降り注ぐ。 その輪の外で、誰かが言うだろう。命を懸けよ、と。 その輪の中で、君は叫ばねばならない。否、と。 懸けるならば力を。 己が力を、力のみを。 力を示せ。力を奮え。 そうしてその命に、三度目の喝采を。 #ヴァル華

2016-08-21 20:00:01
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

再び人形に案内された扉の前で、彼は大広間で見た、次の、最後の相手の姿を思い出す。くちなわという名のひとだ。…あんな勢いで酒を飲み干すひとは初めて見たなー、とか思っている。 さてところで今日はどうなるか。多分どうにでもなるか、と一昨日と昨日の諸々を思い返しながら、彼は扉を開けた。

2016-08-21 22:21:26
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

開けて、おお、と感嘆の声が僅かに溢れる。 見渡す限りの草原。空は青く澄んでいる。 静かに脚を進める。草を踏みつけた柔らかな音と、緩く吹いている風の音が心地良い。 「これは、うん、良い。良いの」 森も草原も、彼が親しく思う場所である。 散策するようにゆったり歩き回る。

2016-08-21 22:21:45
くちなわ @cuchinawa

「ん、今度は草原か」 街、浜と来たら次は雲の上とでも洒落込むかと思いきや、存外普通であった。 「夏草や、とな」 さて、この青はいかほど兵の夢を吸ったのやら。 きっと、満腹させてやろうぞ。 嘯いて、顔を正面へ向けた。 「我、くちなわと名乗らん。汝の名を聞こう」 剣を構えた。

2016-08-21 23:24:47
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

声に脚を止める。そうだ、ここは戦う場所だ。 「我も改めて名乗ろう。朽ちた森の捻れた大樹、リーズヴォルプだ」 身体を強化する。剣を構えたくちなわと向かい合う。彼は得物を持たないが、そもそれが常である。 いざ、と地を強く蹴る。相手の得物が何であれ、彼の攻撃方法は特に変わらない。

2016-08-22 09:59:30
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

くちなわ目掛けての突進。刃物を持っていようと構うことなく。

2016-08-22 09:59:54
くちなわ @cuchinawa

「好きかな」 最短距離。最高速。単純である。故に強い。 ならばこちらも最短、最速だ。 八相から切っ先を前へ倒し、真っ直ぐに突きを放つ。 「飛べよ『登蛇』!」 剣の延長として炎の蛇が一尾駆けた。進む鹿人と真っ向から相対する。 がばり。顎が開かれた。

2016-08-22 11:56:07
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

真っ直ぐ向けられた切っ先から、何か――炎が! 「――!」 蛇を象ったような炎を凌ぐため外套を掴んで前面へ、覆うように、いやそれでは足りない、なら。 思い切り横っ跳ぶ。火は苦手だ、本能とかその辺が忌避を訴えてくるのでどうしようもないのだ。そして忌避と同じだけ警戒を促してくるから、

2016-08-22 22:14:15
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

あの炎が真っ直ぐ走るだけならいいのだが、けれど炎だから、どう動くのか見ておかないと。 炎から目線を切らない。切らないまま、けれど、また別の炎の蛇を出されたらどうする。顎を開いた蛇のカタチを思い出す。……火は苦手だ、苦手だけれど。

2016-08-22 22:14:39
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

……突撃以外に、己ができることなど特にない! 腹は括った、なら後は。 再びの突進。もう怯まない。

2016-08-22 22:14:49
くちなわ @cuchinawa

炎蛇は外套を一瞬で焼き、塵すら残さず平らげた。 反応が早い。野生か、知性か、これは尋常な者でない。 「至近の渾身、躱すとは見事也」 再度の突撃を避ける術は無い。 故に受けた。鋼剣の広い腹を頼りに、体を心棒として防壁を作る。 激突。右の腕が砕けた音がした。 激痛。左手に力を篭める。

2016-08-22 23:46:05
くちなわ @cuchinawa

「応ォ…!」 草原をくちなわの靴が削り掘り返す。青色に茶の爪痕が引かれいく。 「『氷山』!」 足を前へ跳ばした。剣を支点、鹿人の打点を力点として飛び越すように胴を投げ出し、弾かれの勢いを利用してリーズヴォルプの頭上へ到達する。 「『噴辰』!」 広範囲に及ぶ、炎波の射出を行った。

2016-08-22 23:46:15
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

褒められるのは悪い気はせぬな、とそれは声にできたかどうか。 突撃直後、確かな手応えに砕いたと確信する寸前に抵抗が軽くなる――浮いたと気付くのは、数瞬遅れて。そして気付いた時にはもう遅い。 頭上から炎が降ってきた。 「ッ、ァ゛――――――――!!」

2016-08-23 01:02:23
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

身も世も無く転がるように炎の中から抜け出すため駆ける。焼けた肌が身体中が痛い。荒い呼吸をする、その喉も焼けているのか、痛い。 ……腹を括っておいてこれか、このざまか、情けない。 焼けた肌は強化で取り繕うのを既に始めている。何も問題はない、何も問題はない。竦む必要など何処にもない。

2016-08-23 01:02:51
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

ならやることは一つだけだ。 三たび目の突進のけれどその前に荒い息を落ち着けようと、しっかり見据えたまま呼吸を繰り返す。

2016-08-23 01:03:33
くちなわ @cuchinawa

「汝、良き暴也。故に一つ言を呈す。汝に過去の己を見んが為」 左手一本で剣を構える。 「力、時に技を飲む。技、時に力を御する。汝力の化身なれば、尚技を持つべし」 足りぬ力に技を加え、蛇の粗き暴をいなした男がいた。 「力技合一。さすれば汝、更なる階に到らん」 深く息を吸い。吐いた。

2016-08-23 10:38:15
くちなわ @cuchinawa

「今より見せるは我が力。荒ぶる神火を技を以て研いだ剣よ。未だ青き術なれど、汝にこそ開陳せん」 剣の鍔より炎が溢れた。 風が吹く。鎌鼬が炎を削り、貌を与えていく。 八つ頭の蛇。 「我が腕を食らえ」 動かぬ身体は重石にしかならぬ。だから与えた。腕を、肉を、血を。 蛇の瞳が真白に光る。

2016-08-23 10:38:22
くちなわ @cuchinawa

蛇の力、 兵の技、 魔の血、 持ち得る力と貰った全てを篭め、 「『八岐炎身・夜魔太刀大蛇(はっきえんしん・やまたちのおろち)』」 生ける炎の蛇が咆哮した。 「リーズヴォルプ」 告げる。 「汝と我とで与え合おうぞ。それが今宵の美酒である」 号令一下、鹿人へ意志持つ蛇が襲来する。

2016-08-23 10:38:29
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

技を持て、か。 「……そうだの、うん、技を磨いたことはなかったの」 呼吸を整えながら、笑う。 …今まで、身体ばかり鍛えてきた。それだけで充分だったからだ。力を振るうだけで事足りていたからだ。けれどそうか、技か。そんなこと、独りでは思いもつかなかった。

2016-08-23 12:21:08
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

……ああ、楽しい。……楽しいなんて、独りのときには思いもしなかった。うん、独りきりはともかくとして、生に飽きるのはまだ早かった。だってこんなにも楽しいのだから。 「うん、礼を言おう。ありがとう」 けれど、今この場で技で応えるには彼の腕が少々どころじゃなく足りなすぎるから。

2016-08-23 12:21:43
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

彼女の言葉に、八つの頭を持つ炎の蛇に、彼は笑って。 「しかしながら、此度だけは我が力の全てでもって返答とさせて頂こう」 技と共に応えるのは、もしも次があるのなら、その時に。 呼吸はとうに整った。更なる身体強化と、角を強化する。前方へと長く鋭く、枝のように槍のように角が伸びる。

2016-08-23 12:22:31
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

「――はぁっ!」 そして駆ける。咆哮のち、己へ迫る蛇目掛けて、その奥のくちなわ目掛けて。全力で駆ける。 熱い、熱い、焼ける焼ける痛い痛い痛い、――けれど、それがどうした。 怯む必要も竦む必要もない。火傷は負った端から治している。治癒が追いつかないことなんて些事だ。

2016-08-23 12:23:00
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

目はとうに潰れた、鼻もきかない、耳は辛うじて燃え盛る炎の音を拾っている。だがそれがなんだ。 今はただ、駆けるだけだ。だってそれだけが、彼が今持つ全てだ。 届くかはわからない。届かせる、なんて意識があるかなんてわからない。ただただ疾駆する。

2016-08-23 12:23:26
くちなわ @cuchinawa

「好きかな」 くちなわは笑った。 力と技を束ねた怪物を、槍が貫いて来る。 「汝の力、体を練るだけのものに非じ。先ず己の芯を見つけよ。幹あれば、枝葉は如何様にも生えるもの」 くちなわは全力で力を振るい応えた。鹿人の足を焼き留めんと、頭二つが草原を這い攻撃する。 「其れこそ技也」

2016-08-23 17:08:35
リーズヴォルプ @varp_m_rizvolp

駆ける、駆ける、ただただ駆ける。それは全身が焼けようとも変わらない。脚を焼かれようとも変わらない。脚は治癒が追いつかずとも最優先で治している。 一度でも一瞬でも止まったらもう走れなくなるとはどこかで理解しているから、止まれないし止まらない。

2016-08-23 22:01:36