「男とか女とかそんなのはどうでもいいんだ。どんな時でも僕を僕だって見てくれる君が、僕には必要なんだ」 大真面目な顔で恥ずかしいようなことを真摯に言う光忠に、これは誤魔化してはいけないやつだ…と長谷部も真剣になる。 「……分かった」
2016-08-25 23:14:39「ひとつき待ってくれ。明日からちょうど1ヶ月間東京出向だ。その間にきちんと答えを出す」 長谷部の真面目な様子に光忠も神妙に頷く。
2016-08-25 23:18:34そこから長谷部は東京、光忠は本国。長谷部の仕事は順調なんだけど、実は実家の絡みでどうしても断れない見合いを受ける必要があって……。 渋々見合いするんだけど、家柄も人柄と見た目も申し分ないしお嬢さんが来てしまって、はてどうやって断ってもらおうかと。
2016-08-25 23:24:38そしたら「あとは若い二人で…」ってなったらお嬢さんが即「ごめんなさい」 「心に決めた人がいる。その人と添い遂げられないなら生きている価値がない。反対されたら家を出るつもり。準備はできている」と。なんでそんな事を話したのか聞くと「見合いの間中上の空だったから、自分と同じだと思った」
2016-08-25 23:29:17「…そうですね、きっと同じです」って長谷部は笑って、お嬢さんを恋人が待ってる外へ連れ出す。恋人はきちんとした身なりの好青年。(もちろん破談になって、後にお嬢さんから恋人と結婚しましたって葉書が届く) 長谷部も、今度プロポーズされたら嫁にもらってやってもいいかと開き直る。
2016-08-25 23:33:35「さて、両家になんて説明するか…」とか思いながら座敷に戻ろうとすると、庭園の高そうな松の木の影から「わっ」「おすなっ!」「やばい!」って声が。同時に転がり出てきたのは白と黒と黒……
2016-08-26 08:20:09「貞…伽羅……光忠」 「伽羅が押すから!」 「先に貞が押したんだろう」 「ふ、二人とも黙って!」 呆れた顔で長谷部は光忠の前にずんずん進む。 「ひとつき待ってくれと言ったはずだぞ…まだ10日もたってないじゃないか」 「ごめん…;;でも、どうしても長谷部くんに一目会いたくて;;」
2016-08-26 08:30:36「長谷部くんのいない毎日はまるで砂漠に放り出されたみたいに味気なくて…日本出張はたまたまだよ。でも、どうせ日本に来るなら長谷部くんを一目見てからじゃないと帰りたくないから…ちょっと寄って貰ったんだ」 「まぁ出張先は宮崎だけどな!」 「貞ちゃんちょっと黙ってくれるかなぁ!!><」
2016-08-26 08:37:27(相変わらずにぎやかだな…)とか思ってると、伽羅が長谷部のスーツを引っ張る。 「長谷部は光忠がきらいか?」 「?」 「光忠は毎日、長谷部に嫌われたらどうしようって泣いてたぞ」 「んんんん伽羅ちゃん!」 光忠が慌てて口を塞ぐ。 「泣いてないよ!泣いてない!」 「はぁ…」
2016-08-26 08:49:19長谷部がめっちゃ溜息を付くと、光忠が不安そうに小さくなる。 「煩くしてごめん…迷惑だよね……僕たち、もう行くから…」 「光忠」 貞伽羅を引っ張っていこうとする光忠を長谷部が呼び止める。
2016-08-26 08:52:43「俺も、お前に一目会えて嬉しかった。……お前を連れて駆け落ちしようとおもったら、そこの二人もついてくるんだろうな」 って言って戻る。光忠は真っ赤になってその場にうずくまる。 「長谷部くんずるいよぉ…!!」
2016-08-26 10:15:57長谷部は1ヶ月の東京出向を無事に終えて光忠の国に戻る。 空港に着くなり光忠が飛び付いてきて「会いたかったよ長谷部くーん❤❤❤」 「重い!どけ!!」 タクシーで帰るつもりだったのに黒塗りのハイヤーにおしこめられて、車は長谷部の住んでた中流の住宅街じゃなくて光忠の家のある高級住宅街へ
2016-08-26 10:33:09「!?!?!?」 「お帰り長谷部くん!今日からここが…僕らの愛の巣だよ❤」 光忠の実家の宮殿のすぐちかくに、純和風家屋がどーん! 「父上がちょっと早い結婚祝いにって…僕らのために作ってくれたんだ❤」 「……帰る」 「なんで!?!?」
2016-08-26 10:35:39「俺はまだお前を嫁にしてやるなんて言ってない」 「そんな!!!」 「返事すらしてないぞ」 「で、でも……」 涙目の光忠を尻目にタクシーをつかまえる。 「返事が欲しけりゃ聞きにこい。一人でな」 長谷部はそう言って安アパートに戻る。
2016-08-26 10:52:11その後、だだっ広い日本家屋は貞伽羅が鬼ごっこするいい遊び場になって、時々長谷部が光忠とやってきて叱ったり一緒に掃除したり庭の手入れをしたり。 長谷部の安アパートにちょっといい食器が増えたり、子供用のマグが二つ置かれたり。
2016-08-26 11:02:41ある日。日本が決まった長谷部が、寝起きの光忠に聞く。 「今度の出張、一緒に来るか。俺の実家も九州だ」 「………え??」 「福岡だからな。宮崎から東京に行くより近いぞ」 朝食はいつも和食。長谷部はみそ汁を作るのが上手い。
2016-08-26 11:05:51「は、長谷部くん、それって…!」 「来るのか、来ないのか?」 「行く、行く、行きます!!!」 「……チビ二人は連れてくるなよ」 長谷部はそう言ってみそ汁を飲み干すと、炎天下の中東には似合わない背広に袖を通した。 「行くぞ、若社長。仕事に遅れる、怠慢は許さんぞ」 おしまい
2016-08-26 11:12:44