こじらせたリーマン 20160822-20160828
- tsutsujishika
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まあ会社に来れば、チョロ松と会う理由がいくらでも作れるから、いいんだけど。それとこれとは別の話で、やっぱり仕事は面倒臭い。
2016-08-22 08:25:29まあ、そうなるだろうなと思っていたが、案の定だ。映画の話がしてくてたまらないらしい。営業の後輩も土曜日見に行ったようだから、誘っておいたと言われた。余念がない。
2016-08-22 10:53:16先輩は日替わり定食、営業の後輩はうどんセットを頼んでいる。うどんいいよね。うどん。僕はと言えば、今日は久々に弁当を持参したので、ひとり弁当箱を広げる。
2016-08-22 12:05:06さて、先輩は当然映画についての話をしたかったはずだが、話の方向は思わぬところへ転がっていた。後輩君が、映画を一緒に見に行くはずだった彼女にフラれたらしい。「じゃあ誰と見たわけ?」先輩の問いかけに、後輩君は「おそ松先輩っす」と答えた。
2016-08-22 12:15:03「なんだ。あっちの松野も見たんなら誘えばよかったな」 とにかく先輩はあらゆる人に映画の話をしたいらしい。 「そうなんっすよー。映画一緒に見てーその後飲みにも付き合ってもらって。色々愚痴聴いてもらって―。でもあの人ひどいんすよ!最終的には営業の女子といー感じの雰囲気になってて」
2016-08-22 12:17:05「松野大丈夫?」 「チョロ松さん?」 「あっごめん大丈夫。続けて」 「そうっすか?そんでーあの二人すげー楽しそうに話してたんでー」 「……その話長いのか?俺映画の話したい」 「正直彼女に振られたショックで映画の内容ほぼ覚えてないっす」 「ふざけんなもう一回見ろ」
2016-08-22 12:19:02後輩の発言に呆れたのか、先輩は僕に話の矛先をむけて、映画のここがよかったとかあのシーンが素晴らしいとかを語りはじめた。僕は落としてしまった卵焼きを片付けながら黙って聞く。おそ松が、女子と。そうか。へえ……。
2016-08-22 12:20:09そっとのぞき込むと、先客は、おそ松と、営業の女性だった。たしか、おそ松の隣の席の人だ。後輩君が言っていた、「いー雰囲気になった」その人。
2016-08-22 13:02:06二人は、週末のビアガーデンについて話をしていた。おそ松も僕と同じであまり行く気がしないらしいが、女性の方が熱心に誘っている。その声には、いくらかの色が含まれているような気がしたし、おそ松だってまんざらでもなさそうだった。
2016-08-22 13:04:04目頭に熱が集まる前に、静かにその場を離れる。言葉にできない感情が、頭の中でぐるぐる回った。二人は、そういう仲じゃないかもしれない。でも、そういう、仲かもしれない。
2016-08-22 13:05:04僕らの関係なんて肉体でしか成り立っていない。気持ちを通わす相手がいるなら、自然にそっちへ流れていくだろう。面倒な男より、美人な女のほうが。
2016-08-22 13:06:04