おやうみまとめ4
- kikkasatsuki
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食堂で昼食を終え、残った数十分の休憩時間を、それぞれ思い思いの場所で過ごす。親潮と海風は、二水戦の待機室に早めに戻って、次の予定を確認したり、ゆっくりしていることが多かった。不知火や霞もそうしていることが多い。親潮と海風は、午後の予定の確認を終え、ソファに座って雑談をしていた。
2016-09-07 00:00:16「海風さん。最近何かお困りのこととか、何か親潮に出来ることがあれば、気兼ねなく言ってください。クッキーのお礼もまだ出来ていませんから」 首を傾げられ、親潮は、先月のAL海域の月次任務の時の、と説明し、納得してもらった。海風は、気にしないで、と言ったが、親潮は、少し残念そうだった。
2016-09-07 00:00:44「あ、それなら……一つだけ」 親潮は、どうぞ、と目を輝かせる。海風は遠慮がちに親潮に耳打ちした。 「えっ? 海風さんに、そんな失礼なこと……」 「いえ、失礼なんてそんな。海風もそうですし。あ、えっと……無理にとは、言いませんから……」 親潮は前言を思い返し、分かりましたと頷いた。
2016-09-07 00:01:01周りに人が見当たらないことを確認する。咳払いをしてから、耳を向けてじっとしている海風に顔を寄せた。 「じゃあ、いきます。………海、風……」 気恥しさに耐えつつ、親潮は後をついて出そうになる敬称を、なんとか飲みこむ。海風はくすぐったそうに、満面の笑みで、はい、親潮っ、と返事をした。
2016-09-07 00:01:17呼び捨てなんてしたことありませんtwitter.com/kikkasatsuki/s… @kikkasatsuki pic.twitter.com/eB8FW5TnKr
2016-09-07 00:01:58二水戦の第一部隊は、待機時間に、対潜訓練と称して、後ろから目隠しをする人を当てる遊びに興じていた。対潜能力は純粋な聴力の他に、潜水艦を識別する音を聞き分ける力も必要とされる。理に適ってはいるが、しょせん遊びだと参加しない者もいれば、積極的に参加する者もいた。
2016-09-08 00:00:08「さすがに知り合いばっかりだと声で一発ね。次から声なしでいきましょ」 陽炎の提案で、参加者の誰もが的中率が下がる。見えないように予め目を瞑った上で、隠してくる手の感触が頼りだが、素手の人の他、陽炎と不知火と黒潮と親潮、また、海風と涼風は手袋が似ていて、識別が困難だった。
2016-09-08 00:00:23親潮は健闘していたが陽炎と不知火を間違え難しい顔をしていた。海風が親潮の目を隠す番になる。後ろから三歩近付く。 「あっ、海風さんですよね?」 「ふぇっ? あ、はい、海風です」 手を伸ばす前に当てられ、海風は手を引っこめて、心底驚く。やった、と親潮は正解したことに純粋に喜んでいた。
2016-09-08 00:00:58「海風さんの足音なら分かります。後は、黒潮さんもそうですね」 親潮は得意げに言い、他の人も聞き分けられるようにしないと、と意気込む。 「姉貴も対潜得意だよな。もしかして分かンの?」 「江風と涼風ぐらいなら……いちおう、親潮も分かります」 海風は照れたように最後の名前を付け加えた。
2016-09-08 00:01:28あ、わかりました! twitter.com/kikkasatsuki/s… @kikkasatsuki pic.twitter.com/kkd8UNPUX9
2016-09-08 00:01:58かーらーのーつーづーきー @kikkasatsuki pic.twitter.com/9sdiSkatou
2016-09-08 00:02:24今日の補足 ここでは対潜は聴力に相当します。基礎的に対潜能力が高い子は、僅かな音でも聞き取ったり、音を聞き分けたりする力が優れています。索敵は視力と見分ける力に相当します。練度が上がるとこれらの能力が伸びるのは、聞き分け・見分けが磨かれるから、という設定です。
2016-09-08 22:02:44陽炎に連れられ、親潮は今月の陽炎型の会に参加していた。最近表情が違うからと、秋雲に座らされ、雑談を交えて似顔絵を描かれている。 「へっ!?告白されたの!?まじで?ほんと人って見かけによらないねぇ~」 秋雲の会話のテンポに乗せられて、親潮は、しまったという顔をする。
2016-09-09 00:00:42親潮は、秋雲の言ったことを聞いて、こちらに向けられた天津風の視線に気づき、気まずくなる。 「親潮ー、もうちょっとで描けるからまだこっち向いてて。さらさらーっと……あ、それで、もうなんか交換とかしたの?」 親潮が話を掴めないでいると、秋雲は少し離れた浦風と磯風を指す。
2016-09-09 00:00:54「ん? 秋雲、うちらになんか用?」 「いやー、用ってわけじゃないんだけど、親潮が交換のアレ知らないみたいなのよ」 浦風は納得して、磯風と一緒に親潮の近くに立つ。浦風はまず、自分の右腕に巻いたスカーフと、磯風の髪に結ばれたリボンを順に指し示した。
2016-09-09 00:01:07「これ、人のなんじゃけど、こういう風に人のもんもらって付けとくと、その人を守るとか助ける、って意味になるんよ。特別、ってことじゃな」 いつごろからか出来た、鎮守府内だけの習慣であることも加えて浦風は解説する。親潮は、なるほど、と頷き、風習が出来た経緯を浦風に聞いていた。
2016-09-09 00:01:19そういうのもあるんですね…… twitter.com/kikkasatsuki/s… @kikkasatsuki pic.twitter.com/HPXSZil3KY
2016-09-09 00:01:57今日の補足 ここの呉鎮守府内のローカルルールとして、大切な人の持ち物を身に付ける(もらう)ことで、守る・助ける意思表示をするというものがああります。原作でいうと弥生、卯月、時雨改二などが該当します。特にどういう関係性でも成り立つ習慣ですが、互いに交換となると親友や恋人が多いです。
2016-09-09 03:47:53今日の補足2 浦風の巻いてるスカーフは電の、磯風がつけているリボンは磯波のものです(絵を参照)。磯風に関してはちょっとした経緯は今度出す本(後日全公開)でわかりますが、おやうみよりもっと前の時系列になります。
2016-09-09 03:49:35二十時以降の自由時間に、駆逐艦寮のラウンジで海風と親潮は話していた。親潮は、先日の陽炎型での集まりで話したことを報告する。 「意思表示のために人の持ち物をもらう習慣があるとは思いませんでした」 「あ、海風も初めて聞いた時は驚きました」 ご存知だったんですね、と親潮は感心する。
2016-09-12 00:01:20「それで、郷に入ってはと言いますから、差し支えなければ何か海風さんの持ち物を頂けますか?」 親潮の言葉に、海風は目を丸くしてからはにかんだ。 「あの、でも、海風でいいんでしょうか?」 「海風さんだからですが……?」 海風は、じゃあ、考えておきますね、と胸を高鳴らせる。
2016-09-12 00:01:33