こじらせたリーマン20160905-20160911
- tsutsujishika
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また飲みか、と思ったら、今度は突発的なものではないらしい。人事の女性が今月寿退社されるから、その送別会とのことだった。日取りは再来週。皆お世話になっている人だから、結構気合いの入ったものになるようだ。僕も類にもれず彼女の世話になった一人なので、断るという選択肢はなかった。
2016-09-08 13:06:02あいつはしょっちゅう傘を忘れる。折りたたみ傘も持ち歩く癖がないみたいだから、今日みたいな急な雨だと確実に濡れているはずだ。今頃どこかで雨宿りしてるかも……なんて。
2016-09-08 15:00:58スマホのカレンダーにチェックをつける。再来週の飲み会の日。それから、今週末は久しぶりに追いかけているアイドルのライブがある。最近体調を崩すことが多かったから、万全な状態にしておかなきゃ。……いや、もうああいう無理をすることはないし、心配することもないのか。
2016-09-08 20:01:18ふ、と息が漏れる。ため息に姿を変えた憂鬱な心が、空気に溶けて消える。寿退社か。人事の女性の姿を思い出す。言葉が強く、人を叱ることをためらわない。けれどちゃんと優しい人だった。気が早いけど、きっといいお母さんになれるだろうなと思った。
2016-09-08 20:02:05幸せに結婚して、子供を産んで……。なんだか自分からは遠い世界の出来事のような気がする。色々な意味で。そして、可哀想な僕の脳みそは、未練がましくおそ松の顔を、思い出していた。
2016-09-08 20:03:05まどろむなか、意識と夢のあわいのような空想の中に、チョロ松がいた。笑って、怒って、それから、泣いていた。このベッドの上で。ぼろぼろと、涙が。あふれて、俺の頬を伝う。ああ、違う。そうだ。あの日、泣いていたのは、俺の方だ……。
2016-09-08 23:46:01忙しかったせいもあって、今週はやけに長く感じた。明日はやっと休みだ、と思った所で、出かけなきゃいけないんだということを思い出した。やれやれ。
2016-09-09 08:47:01今日は久しぶりに弁当ではなく社食のごはんだ。ここのうどんの出汁が好きで、ついついいつも同じものを注文してしまう。トレイを受け取り空いたテーブルを探すと、窓際の席に座ったおそ松の姿を見つけた。
2016-09-09 12:21:02ひさしぶりに見た。あの顔を、あの姿を。同僚の男性と一緒に、どんぶりを食べている。大きな口をあけて、箸でごはんを運び、ほおばって、満足そうな顔をしていた。ああ、僕は。あいつがああいう風に、幸せそうにご飯を食べている姿が好きで。うん、……やっぱり、そう。まだ、好きなんだ。
2016-09-09 12:22:03時が止まったように立ち尽くしていると、おそ松の顔がこちらを向いた。目が合いそうになって、急いで顔をそむける。ちょうどその先に空いてる席があったから、素早く歩を進めて座った。おそ松のほうはなるべく見ないようにして。
2016-09-09 12:23:00リュックサックにサイリウムを差し込みながら、考えているのはアイドルのことではなく、おそ松のことだった。あんな風にわかれて、もう一週間が経とうとしている。気軽に忘れて、あいつみたいに、女の子と恋の一つや二つ、できたらいいのに。なんて、無理だってわかっているけれど。
2016-09-09 22:31:12アイドルは好きだ。たとえメジャーじゃなくても、ずっと地下に潜っていても、彼女たちはステージのために練習をして、自分を磨き、もっとも輝いた姿をファンの前に見せてくれる。その光に、笑顔に、僕たちは魅了されはげまされる。きらめく星のような存在。
2016-09-09 22:32:15