- eighter_rieko83
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【背中からの距離】 1 「今日、飲み行こやぁー。」 いつもこう言い出すのは大倉くん。 「お、バイト代出たん?ほんなら、大倉のおごりな!」 そんなこと言ってもちゃんと割り勘!って仕切るのは、いつも亮ちゃん。 「行こ行こ!今日は飲みたい!」 親友の京子は酒豪(笑)
2016-09-10 00:28:222 「おまえはいっつもやろー!あっはっは!」 「なによ、もー!」 京子と大倉くんは…仲、がいい……。 そして、亮ちゃんは……京子のことが…好き……。 あたしには分かる。 だって……亮ちゃんのことが好きだから。
2016-09-10 00:28:263 大学近くの、いつも行く安い居酒屋。 「俺、単位ヤバイわー。就活もめんどくさいなー……。」 「大倉、文句ばっかりやんけ。そんなん言わんと、なんとかせぇ。」 「亮ちゃん冷たいー!京子~助けて~!」 「うっさい、ちょっ、体重かけないでよ!重い!」
2016-09-10 00:28:314 ふたりが付き合うのは時間の問題。 チラッと亮ちゃんを見ると、焼酎を煽りながら2人を切なそうに見てた。 「ほんなら、俺らはここでー!」 大倉くんと京子は電車で帰るから、居酒屋を出てひとつめの角を曲がってく。
2016-09-10 00:28:375 そっからは亮ちゃんが乗るバス停まで2人きり。 2人きりになれる貴重な時間。 「おまえさー、もしかして……気付いとる?」 「へっ?!なにを?!」 「俺がその………や、やっぱえぇわ!」 「何よ!途中で止めるなんて、余計気になるでしょ!」
2016-09-10 00:28:436 「やー………あ、聞き方変えたらえぇか!なんで、俺オトコマエやのに彼女できんのかなー?とか思わへん?」 なーんだ、それ。 オトコマエとか、自分で言うかね? …オトコマエだと思ってますけども…。 「……好きな人がいるから、でしょ?」 「……やっぱ聞き方変えても一緒か…。」
2016-09-10 00:28:487 なんだろ、相談したいとか? うわ、ありえない…好きな人から片思いの悩み相談なんて…。 「いや……まぁ……あれや、あの2人……仲良過ぎってゆっか……。」 「うらやましい?」 うわ、我ながらなんてかわいくない……。 「うらやましいってか……まぁ……。」
2016-09-10 00:28:528 うわぁぁ、変なこと言ってごめんなさい! ……やだな……亮ちゃん黙っちゃった……。 せっかく貴重な2人きりの時間なのに……。 「…おまえは?」 「えっ?」 「好きなヤツ、おらんの?」 「あたしは……、」 どうしよう…この際コクっちゃう? 「い、いるよ!好きな人!」
2016-09-10 00:28:569 「…おったんやぁ…!」 「なによ……いるよ!好きな人くらい!」 すんごい意外そうに目をまぁるくしてる亮ちゃん。 そうだよねー…気付くはずないよねー…まさか自分だなんてねー…だってそんな態度1度も見せたことないし…。 「えっ、誰誰っ?俺も知っとるヤツ?」
2016-09-10 00:29:0110 知ってるも何も……。 「亮ちゃんもよーく知ってる人!」 なんかやけっぱち。 「えっ!そぉなん?!よーく…知っとる…?」 「そ!……近くて……すごい遠い人……。」 「えっ……?」 気付い……たよね……? また黙ったし……。
2016-09-10 00:29:0611 「えっと……まぁ……あれやな……う、ん…………。」 やっと口開いたと思ったら…何それ……。 でもそうか、それが亮ちゃんの答えってことだよね……。 タイミングいいのか悪いのか、亮ちゃんとのお別れの時間……バス停に到着した。 「じゃ、あたしはこれで!」
2016-09-10 00:29:1112 あたしの家はここから徒歩10分ちょい。 ほんとは…大倉くんと京子と一緒にあの角曲がった方が近いんだけど…亮ちゃんと帰りたい一心でいつもこの道を歩いて帰る。 「送らんで大丈夫?」 とりあえず、いつも聞いてくれるんだけど、甘えられないあたし。 「全然、大丈夫!」
2016-09-10 00:29:1613 「ほんなら、気ぃつけろや?なんかあったら電話せぇよ?俺バスん中でも出るからな!」 そんな優しいこと言わないでよ……。 「ダメだよ!バスで電話出ちゃ!あはは!じゃ、またねー!」 笑顔で手を振って、彼に背中を見せる。 振り返りたいけど…もうこちらを見てない気がして…。
2016-09-10 00:29:2114 振り返らなくても「やっぱ送る」とか期待してしまって……この瞬間が……いちばん嫌いだ……。 ──────── それから卒業も間近になって、なんかみんなバタバタ……大学にも顔出したり出さなかったり。 しばらく4人で飲みに行くこともなくなってた。
2016-09-10 00:29:2615 4人とも就職決まって、久しぶりに4人が顔を合わせた日、またいつものように大倉くんが言った。 「飲み行こー!久しぶりやーん!」 これにはみんな大賛成。 まだ陽があるうちから居酒屋に入った。 「実はさぁ、ちょうど話もあったんよぉ。」 大倉くんはいつにも増して笑顔だ。
2016-09-10 00:29:3116 「実はなぁ俺、京子と付き合うことになってーん!」 えっ…! 思わずチラッと亮ちゃんの方を見た。 「…へぇ!そぉなんや!ははっ、良かったやん!」 無理……してる……。 「いつその報告あってもおかしないって思っててんやーん!」 明るく話すのが、痛々しく感じる。
2016-09-10 00:29:3517 大倉くんは、嬉しそうに笑って、それからあたしの反応も伺った。 「…良かったね!」 京子も嬉しそう……。 「お祝いやん!いっぱい飲もや!」 そう言って、亮ちゃんはいつもよりたくさんお酒を飲んだ……。
2016-09-10 00:29:4018 ──────── 「…ごめんな……飲み過ぎやな完全に……。」 あたしの肩を借りて、フラフラと歩く亮ちゃん。 いつもだったら、嬉しいはずのこの状況も……なんだかとっても複雑な心境。 あの2人が付き合ったのは、友達として嬉しいし…亮ちゃんもこれで諦めて…とか思うけど…。
2016-09-10 00:30:0119 諦めたからといって、あたしと亮ちゃんが付き合うなんて……ありえないわけだし…。 この前の“答え”が頭の中に蘇る。 「4人で飲み行くんも…今日が最後なんかなぁ…?卒業したら…なんやかんやで会わへんよーになるんやろか…?」 「そんな……行こーよまた……ねっ?」
2016-09-10 00:30:1020 「はは……そやなぁ……また行こな……。」 そしてまた、あのいつものバス停で別れる……。 最後まで、亮ちゃんに呼び止められることはなく……背中を向けて……あたしたちは卒業を迎えた……。
2016-09-10 00:30:1621 ──────── 「また別れたの?」 「しょうがないでしょ!忠義が、ま、た!浮気したんだから!」 京子と大倉くんが別れたのは、これで3度目。 「この前のは誤解だったんでしょ?今度もそうじゃないのー?」 「ちがう!証拠があるから!」
2016-09-10 22:04:1422 京子とはこうやってたまに会ってるけど、大倉くんと亮ちゃんには全然会ってないなー……。 あたしにも彼ができたし……今なら亮ちゃんに会っても平気じゃないかな……。 そうだ……。 「ねっ、久しぶりにさ、4人で集まらない?」 「はぁ?……ちょっと……何企んでんのよ……!」
2016-09-10 22:04:1723 「企んでなんかないわよ!単純にさ!久しぶりに集まりたいなって!だって、卒業してからぜんっぜん会ってないよ?」 「それはそうだけど……別れたばっかなのよ?私と忠義。」 「何よ?まだ未練があるから会いたくない?」 「そっ、そんなことないから!」 京子ならそう言うと思った!
2016-09-10 22:04:2124 一週間後、久しぶりにあの居酒屋で顔を合わせた。 「はぁ?なんやおまえら、またケンカしてたんっ?」 「別れてたの!なんか……謝ってきたから、仕方なーっっっくっ、許してあげたの!」 こんな場を作らなくても、結局2人は元に戻ってた。 つい2日前のことらしいけど。
2016-09-10 22:04:2525 「はい、無事ふっかぁーつ!あっはっは!」 相変わらずだなぁ、大倉くん。 亮ちゃんは……スーツがよく似合う……当たり前だけど、大人になったなぁって…。 でも平気……少し……少しだけドキドキするけど……大丈夫……あたしは今、別の人に恋してる……。
2016-09-10 22:04:28