#完全ノープラン艦これ与太話 【アンセム・オブ・プロジェクト・サタン　丁：ザ・サン・アバヴ・クラウズ】

春魔解丼 @vespiking

一瞬遅れて激痛！「アババーッ！」高速回転により血管がほとんど捩じり潰れ、血はほとんど出ていないが、赤黒く染まった傷口が絶望的な状況を物語っていた。ここは敵のワン・インチ距離なのだ！「イヤーッ！」「グワーッ！」金剛は右拳のバックナックルで長波を打ちのめす！ #KZNPLN

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「ぐ、が、ギャアッ！アイエエエエエ！」異常な痛みにもがきながら、長波は立とうとするが、力が入らない！「な、な、何……」「イヤーッ！」さらに金剛は蹴飛ばす！「アバーッ！」反射的に失われた右腕でガードした長波は、戦艦のトーキックをまともに胴へ受け悶絶！ #KZNPLN

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「な、なんだ……チクショウ……ち、力……」長波の全身から、ボタボタと汗が垂れる。「〈審判者〉サタンは起動しました。最早この左腕が睨む範囲において、あらゆるSoulは無力化しマース。故に」千歳がカラクリ艤装を難なく駆動させる！「カラテ！そして機械兵装！それが全て！」 #KZNPLN

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「そういうわけだ長波＝サン、残念だったね。君らはおおよそ霊的兵器に頼りすぎだ」時雨は長波に砲を向ける。「サセイボはね、大本営と末永く騙し合っていくはらづもりだったのだ。連中が敵対者と呼ばれる霊的国防兵器を運用しているのは知っているだろう？君らの切り札と同じだよね」 #KZNPLN

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「……成る程、霊的兵器を、無力化する……兵装か……」「そうだよ。流石に頭が切れるようだね。正確には無力化フィールドの形成と、その中でも駆動する非霊的兵器群。サセイボは〈審判者〉と呼んでいる。中心は金剛＝サンの持つ『サタン』だ。ハハハ！中々笑えるジョークだろう？」 #KZNPLN

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長波はほとんど霞んだ視界で金剛と、千歳を見た。あの左腕と、あのカラクリ箱がその〈審判者〉とやらか。この口ぶり、時雨も何かを持っているのだろう。「……チクショウ、お前らが、コソコソ隠れてたのも、このためか……」「Yes。艦娘の肉体疲労は艦霊への依存度を上げマース」 #KZNPLN

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●おおっと！ニンジャが開始しましたね！あなたがたはニンジャスレイヤーを読むべきだろう。続きはまた今度！● #KZNPLN

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#完全ノープラン艦これ与太話 第2部最終話【アンセム・オブ・プロジェクト・サタン】より【丁︰ザ・サン・アバヴ・クラウズ】続き #KZNPLN

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長波は状況判断する。右肘の傷口は極めて歪な状態で癒着しており、最早使い物になるまい。接合すらも危ういだろう。だがそれ以前だ。全身のあらゆる機関がけたたましくアラートを鳴らしている。対霊的兵器用の専用陣形。マイヅル艦にとっては、考えうる限り最悪の相性だ。 #KZNPLN

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金剛の左腕、即ちサセイボの持つ対霊的兵器の切り札について北上が知り得た情報はそう多くはなかった。少ない状況証拠を繋げ、最終的に残った可能性は二択。ジャミング、或いはハッキング。北上は後者をより強く警戒した。分の悪い賭けであった。 #KZNPLN

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最も避けるべきは個々の戦術的敗北ではなく、戦略的な情報戦の敗北である。北上自身にオートマッピング・ジツを連結する選択肢は最初からなかった。仮にサセイボの切り札がハッキングであった場合、今回の秘匿作戦は根底から瓦解するからだ。或いは、そこにつけこまれた形となったか。 #KZNPLN

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「悪いけれど、君達はここまでだ。もう少し足掻いてくれるかとも思ったけれどね」時雨の主砲砲身が長波の顎を押し上げ、喉笛を潰した。極めて効率的なカイシャクの準備動作だ。「最後にひとつだけインタビューだ。答えれば楽に死なせてあげよう。――『ミユキ』を見たか」 #KZNPLN

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長波の喉笛は押し潰れたまま開かない。「もう一生分は喋っただろう。発声は許可しない。残った左腕のハンド・シグナルでイエスかノーかを応答しろ」長波は左手を持ち上げた。中指と薬指を折りたたみ、人差し指と小指を立てた。ＢＬＡＭ！ #KZNPLN

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「グワーッ！」長波の首を刎ね飛ばすはずだった砲弾は僅かに逸れ、右肩を吹き飛ばした。時雨の凍て付いた憤怒の視線が主砲の弾痕と、次いで左舷方向の敵艦へと向けられる。「阿賀野＝サン……貴様か……」阿賀野の正確無比な早撃ちであった。 #KZNPLN

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「ゼェーッ！ゼェーッ！……ッヘヘ、ちょうど中途半端にもげて気味が悪かったところだ……これでシンプルになった。頭もスッキリしたぜ」長波は床を転がり、右肩をスカーフで縛り上げた。時雨はそれに一瞥もくれない。「そうか……北上＝サンめ……」 #KZNPLN

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「デストロイ・ゼモー！」「イエス・マム！」金剛が掲げた右手を振り下ろすと同時、グランギニョルが艤装を構える！「マテ！」だが時雨がそれを制した。天を貫く勢いで指先までが高く伸びた時雨の右腕。イケン・グシンと呼ばれる日本の伝統的なハンド・シグナルだ。 #KZNPLN

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ネンコ制度を重んじる日本社会において、新参者から上官へのイケングシン行為はセプクに値する重罪とされる。無論時雨も承知のはずだ。故に金剛は、却ってこれを看過できぬと判断した。「ハイ、時雨＝サン。ドーゾ」イケングシン後の指名はいわば特赦のサインだ。 #KZNPLN

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「ハイ。サタンの影響範囲において、先の阿賀野＝サンの反応速度は軽巡としては異常です。彼女は元来、命を蝕むほどの艦霊を抱えていました。それを投薬により克服している。推測するに、彼女はいわば天然の〈審判者〉といえる状態にある可能性が高い。検体としての鹵獲を提案します」 #KZNPLN

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「イヤーッ！」阿賀野はこの隙をつき、長波を抱えて跳躍！サセイボ艦隊から大きく距離をとり、対空砲を構えた。「安心して長波＝サン！私、まだやれるみたいだから！」然り。時雨の状況判断は正確であった。 #KZNPLN

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ゴブンコへの立ち入りを許された随伴艦は3隻。秘書艦たる夕立、ニンジャとなった山城。現時点で閉所における最高戦力というべきこの2隻を選出したうえで、残る1隻を北上は最後の保険として使った。即ちもう一つの可能性、霊的ジャミングに対する決定打。それが阿賀野であった。 #KZNPLN

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阿賀野は苛烈な投薬と艦霊の強制弱化を繰り返した結果、様々なショック的要因を経て、邪悪なエネルギーの殆どを消耗し尽くした。失った力と投薬の後遺症を乗り越えるため、彼女はザゼンを学んだ。いわばそれは、サセイボのカラテ・サイバネを剛とするならば、柔のソリューションだ。 #KZNPLN

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阿賀野は今や、艦霊を拠り所とせず艦娘としての力を発揮できる状態にある。当然、今の阿賀野は以前の阿賀野を10とするならば、1とすらいえるほどに弱い。「ヨロシイ！」「イヤーッ！」金剛の許可の号令と同時、時雨が跳んだ。 #KZNPLN

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時雨はこめかみに砲口を押し当て、空砲を放った。時雨の血中に投与されたナノマシンが起動し、全身をアドレナリンめいて駆け巡りながら筋肉とニューロンに刺激を与え、艦霊の代替として身体能力を引き上げる。ＢＬＡＭＢＬＡＭＢＬＡＭ！「グワーッ！？」 #KZNPLN

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時雨は鈍化した体感時間のなかで、反射めいて咄嗟に突き出した左掌に突き刺さった砲弾を見た。彼女はそれが目に届く前に握り潰し、打ち捨て、忌々しげに舌打ちした。視線の先、阿賀野の射撃フォームはあまりにも整然。弾は防いだ。だが。「美しくない……」 #KZNPLN

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阿賀野には美があった。システムの美だ。己が到達すべき美が彼女にあるというのか。「……艦霊を腐らせたイレギュラー・ケースめッ！君に、軽巡阿賀野の何が流れている！今のお前はただの人だッ！」「そうよ！だけど！私は阿賀野だから！軽巡阿賀野だからッ！」 #KZNPLN