作詞法の教科書としての Mr.Children 「PADDLE」、Aメロを音韻的に考察

僕が個人的に作詞の教科書としている Mr.Children の歌詞について、考えることを書きます。徹頭徹尾、音韻という点から考えています。僕の作詞法/歌詞分析用語で倒置という概念の説明でもあります。「PADDLE」は2004年のアルバム『シフクノオト』に収録されています。
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料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

Mr.Childrenのアルバムに『シフクノオト』というのがある。

2011-02-19 01:33:45
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

このアルバムの2曲目に「PADDLE」という歌がある。

2011-02-19 01:36:47
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

今日は「PADDLE」について考えることを描きたい。

2011-02-19 01:40:47
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

「PADDLE」の歌い出しは「ほんの束の間 胸の中に巻き起こる風 風 風」となっている。良い歌詞だと思う。

2011-02-19 01:43:29
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

「ほんのつかのま むねのなかにまきおこる かぜ かぜ かぜ」ひらがなに直すとこうなる。

2011-02-19 01:44:18
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

これを聞いて僕はまず「か」の音に注目した。カタカナにして示すと「ほんのつカのま むねのなカにまきおこる カぜ カぜ カぜ」

2011-02-19 01:45:19
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

次に「ま」の音に注目してみると、「ほんのつかのマ むねのなかにマきおこる かぜ かぜ かぜ」となっている。

2011-02-19 01:46:07
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

そうすると次は「の」の音に僕は注目したくなった。「ほんノつかノま むねノなかにまきおこる かぜ かぜ かぜ」

2011-02-19 01:47:10
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

いっぺんに「か」と「の」と「ま」の音に注目すると、「ほんノつカノマ むねノなカにマきおこる」つまり、「ノ~カ~マ」という押韻が行われていることがわかる。

2011-02-19 01:50:06
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

音数をしらべると「ほんのつかのま:むねのなかにまきおこる」→「6音:11音」で、ノの音がそれぞれ3番目、カの音が5番目、マの音が7番目に来ている。

2011-02-19 02:38:04
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

くりかえして言うと、だからここでは音数は不一致だが位置が一致した押韻が行われていると言える。

2011-02-19 02:40:26
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

さらにもう少し指摘したい。「ほんのつかのま:むねのなかにまきおこる」で前半にのノの音が2回でてくる。「ほんノ つかノま」。対して後半では1回だ。「むねノなかに」。ここでなにが起こっているのかを指摘したい。

2011-02-19 02:45:00
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

前半の「ほんのつかのま」では、いったん「ノ~カ」として出てきた音の順序が「カノ」というふううにすぐさまひっくり返されている。このように音の順序が入れ替わることを僕は「倒置」と呼んでいる。

2011-02-19 02:59:16
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

これにより、後半「むねのなかにまきおこる」でノ、カ、マの三つの音で押韻が効果的になる。なぜか。

2011-02-19 03:06:54
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

前半「ほんのつかのま」と後半「むねのなかにまきおこる」で前半のフレーズには「ノ~カマ」の直後に2音が倒置された形「カノマ」が含まれているので、後半のフレーズの「ノ~カ~マ」という押韻を隠蔽している。

2011-02-19 03:21:16
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

押韻を隠蔽しているとはどういうことかというと、視聴者に気づかれずに押韻することで、自然な感じで心地よさを与えるのだと思う。これはJ-POPらしい歌詞というものを考えるときに欠かせない要素だと僕は考えている。

2011-02-19 03:26:15
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

たとえていえば、伏線をしいてそれを回収するようなものだ。基礎的なテクニックで天性や感覚の鋭さで身につけているひとも多いと思う。

2011-02-19 03:27:56
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

さて、こうしてみると「ほんのつかのま:むねのなかにまきおこる かぜ かぜ かぜ」の押韻音だけをとりだすと「ノ~カノマ:ノ~カ~マ~カ~カ~」。ざっくり言えばここでは「ノ~カ~マ」で押韻している。

2011-02-19 03:35:55
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

ねむいようとうとしながらなにをやってるんだか。

2011-02-19 03:36:20
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

そして次のフレーズを見てみよう。「今しかないよな って呪文みたいに繰りかえす 日常の下敷きになって埋もれたものをとりかえすんだ」

2011-02-19 03:50:22
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

「いましかないよなってじゅもんみたいにくりかえす にちじょうのしたじきになってうもれたものをとりかえすんだ」中のノ、カ、マに注目すると「いマしカないよなってじゅもんみたいにくりカえす にちじょうノしたじきになってうもれたもノをとりカえすんだ」。

2011-02-19 03:55:00
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

だから、「マ~カ~カ~ノ~ノ~カ」という順で出てきているわけだ。ここまでをまとめると、「ノ~カノマ」→「ノ~カ~マ~カ~カ~カ」→「マ~カ~カ~ノ~ノ~カ」となっている。重複を削除すると、「ノカノマ」→「ノカマカ」→「マカノカ」という見事なならびかえが行われている。

2011-02-19 04:00:49
料理研究家 やおき @yaoki_dokidoki

さらに抽象化すると「ノカマ」→「ノカマ」→「マカノ」となっており、基本的にはこのシンプルな押韻を隠蔽するために「ノカマ」を「ノカノマ」や「ノカマカ」にして順序を混乱させている。ここにつかわれているのが「ノカノ」や「カマカ」を作り出す倒置という技法。

2011-02-19 04:05:06