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Problem Paradise @propara
大崎善生さんが編んだ『棋士という人生』に収録されている、沢木耕太郎「神童 天才 凡人」という中原誠論について、前から不思議に思っていることを書いておきます。
Problem Paradise @propara
そこに出てくる、塚田正夫の印象的なエピソード。塚田が順位戦で中原に敗けて、A級陥落が決定し、帰宅して深夜放送の映画を観ていたら、それは23年前に木村義雄に名人位を奪われた直後に観た映画と同じだったことに気づく。
Problem Paradise @propara
その映画とは、ジョン・ヒューストンの『黄金』。ハンフリー・ボガートが出ていたやつですね。
Problem Paradise @propara
『黄金』はご存知のとおり、苦労して手に入れた砂金が大風にあって散ってしまい、一攫千金の夢を見た男たちの野望が砕かれるという話でした。その「最後の印象的な台詞」を聞いて、塚田は23年前の記憶をよみがえらせるのですが、その台詞とは、「すべて、失ってしまえば仕方がない」。
Problem Paradise @propara
ここで少しわたし自身の記憶に横道しますと、この塚田が観た『黄金』の話は、塚田が当時近代将棋で連載していた自戦記に書いていたはずです(わたしはリアルタイムで読んだ記憶があります)。
Problem Paradise @propara
どうして50年前くらいの記憶を今でも保持しているかというと、それは言うまでもなく、塚田が語るそのエピソードがあまりにもうまくできすぎているくらいに感動的だったからです。それは中原誠の、そして沢木耕太郎の記憶の中にも刻み込まれたほどです。
Problem Paradise @propara
そこで、ようやくわたしの疑問を。塚田が語る『黄金』のエピソードは、名人位を奪われ、A級を陥落するという、23年の隔たりがある2つの時間を1つの映画でつないだ、ほとんど小説的と言ってもいいほどうまくできている物語なのですが、本当に塚田は『黄金』をちゃんと観ていたのでしょうか
Problem Paradise @propara
つまり、塚田が「最後の印象的な台詞」として聞いたと言っている、「すべて、失ってしまえば仕方がない」という台詞は、『黄金』のエンディングのどこにも存在しません。それは、おそらく酒を飲みながらその映画を観ていたはずの、塚田の朦朧とした意識が作り出した、幻聴ではなかったでしょうか?
Problem Paradise @propara
もちろん、これは塚田の文章を批判しているのでもなんでもありません。むしろその反対で、おそらく酩酊状態のうちに『黄金』のエンディングを脳内で書き換え、すばらしい物語に仕立て上げた塚田正夫のエピソードを、わたしは塚田詰将棋よりもはるかに愛しています。
Problem Paradise @propara
ここで正確を期すなら、塚田の文章をそのまま全文引用したいところなのですが、あいにくとバックナンバーが手元にありません。誰かお持ちの方がいらっしゃったら、ぜひ教えていただきたいところです。
mtmt @mtmtlife
@propara 『近代将棋』1972年5月号でした。
Problem Paradise @propara
@mtmtlife ありがとうございます。わたしのぼんやりとした記憶の中では、塚田の文章だと、その台詞を口にするのが(なんと)ボガートになっていたような気がするのですが…。違いますか?
mtmt @mtmtlife
『近代将棋』1972年5月号、塚田正夫九段自戦記「中原誠十段との相矢倉戦 A級順位戦第七局」、最後の段落より。 >余談で、恐縮だが、この将棋のあと三日ばかりして深夜放送のテレビ映画をみていたら「どうもいつか一度みたことのある画面」だと思った
mtmt @mtmtlife
それもそのはず、忘れもしない名人戦のタイトルをわたしが木村さんに奪取された直後に映画館でみた”黄金”というハンフリーボガード主演の洋画だった。三人の仲間が辛苦のあと、目的の砂金を馬車に満載して帰途につき、あと一歩で安全地帯に到着しようという直前
mtmt @mtmtlife
暴風に襲われてすべてを一挙に失ってしまうという筋で、最後の場面のセリフの「すべて、失ってしまえば仕方がない」という声が妙にわたしには印象的に聞えた。
mtmt @mtmtlife
名人位を陥落したときと、こんどA級を守りそこなったときと、二度のピンチに同じ映画をみたことに、奇妙な人生のめぐりあわせというようなものを感じさせられた。(終)
Problem Paradise @propara
@mtmtlife 見せていただいた文章では、さすがにそこまでは変形されていなくて、安心しました。危うくわたしがこのエピソードの上にさらに模造記憶を重ねてしまうところでした。

コメント

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