フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #9 「強敵・１」

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「フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #8 「混乱」」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1030757

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 まとめ」 togetter.com/li/1024051

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「…あいつらもその辺は承知のうえで着いて来てるからな、そっちはあんまり気にしねぇでくれ」 『そうか…そっち行く間も一応注意して見とくぜ』 ひとまず会話を終え、俺は改めて通信機のケーブルを抜いてコンソールに差した。 「無理すんなつっといたのになぁ…」

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フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #9 「強敵」 実況・感想タグは #禁森実況 です。

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後ろとの通信中に準備を終えた俺達は谷渡り用のゴム輪に掴まった。尻と両腿、両足を乗せるところがついてて頭上のロープの上の滑車から繋がってる。耐荷重は２００kg。急ぐ時は立ち乗りでも大丈夫だが、今はサスペンダー式の金具数本も使って体を固定する。 1

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この台は右側が高く、左側が低い。谷の向こう側はその逆だ。行き用と帰り用のロープは繋がってる。作り出した数メートルの高低差による位置エネルギーで滑車が動く。ブレーキや加速用の器具も滑車回りについてるが、ここの谷では使ったゴム輪を戻す時以外ではまず使う機会はねぇ。 2

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最初に恵里が渡り、続いて先輩、次に先輩のドロイドを二度に分けて渡す。最後は俺だ。ロープは２０ｍだから数秒で着くんだが、どうにも落ち着かねぇ。夏に通ると谷底の妖怪の群れの殺気が悍まじいんだが、冬に通るとこんなに静かとはな。かえって無人の繁華街みてぇな不気味さがある。 3

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俺が降り立つと、先輩はドロイドを専用の布袋から出し、恵里は周囲を警戒していた。俺は元からこっちにあったゴム輪の５つ分を向こうに送った。そして俺らが使ったのを半分手動で受け側から送り側の待機部分に動かしておく。滑車とロープ両方をロックし、勝手に向こうに行かねぇようにしておく。 4

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「輪っか、もっと向こうに回します？」 座る為のゴム輪は、ロープ両側に１０づつと退避エリアに予備が６つ。大勢援軍が来るんだから向こうに送ったほうが良いか？ 「いえ、それは桐葉さん達にお願いしましょう。場合によっては…私達だけでカタがつくか、生存者を連れ帰るかも知れませんからね」 5

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妖怪の残りが俺らで始末出来るか逃げ切れるレベルで、生存者が１・２人ならそういう事態もあんだろう。逆に桐葉さん達が来た後なら大抵の敵はどうにか出来る戦力は揃う。慌てて逃げ帰るこたぁねぇ。１０秒程度の差だが、緊急時には大きい。ここは先輩の言う通りにしておく。 6

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俺達は台を降りる。木々の間隔が狭く、雪は膝の辺りだ。恵里は杖の熱出力を弱めて、表面を軽く程度に留めている。魔力の節約の為だけじゃねぇ。熱で気温が上がって、樹上に積もった雪が落ちてくるほうが困るからだ。さっきより歩きにくいが、それでも熱が篭もらねぇ様に早足で歩く。 7

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レーダーと楽進盤を頼りに歩いていくと、離れたところで黒い影の群れが蠢くのを感じる。レベル２までの雑魚は俺達に気付くと向こうから逃げていくが、ここの連中は違う。一定の距離を保ちながら俺達の様子を遠巻きに伺っている。隙を見せれば一気に襲ってくるだろう。 8

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…１５分ほど歩いて、２時２０分。あと１０分くらいで目的地に着く筈だ。定期通信によると桐葉さんもロープ台が見えてきたようで、後方部隊はその手前で待機を始めているそうだ。 「片桐くん」 通信を終えた先輩が話掛けてきた。 「さっきのお話…どう思います？」 9

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「本人が覚えてねぇんじゃなあ…二人とも実際は風科まで来てたかも知れねぇでしょう」 繰り返しになるが、妖怪が結界と監視をやり過ごすことは滅多にねぇ。しかも風科より数十キロ遠くへ出て、かつ戻ってくるとなると聞いたことがねぇし、考えらんねぇ。じゃあ何だ？って言われても困るが。 10

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「遠くから人を誘き寄せる妖怪もいますけどね」 「にしても遠すぎるでしょう」 「…そうなんですよね」 その手の妖怪にも心当たりはあるが、引き寄せ可能範囲は精々隣町くらいまでだ。行方不明者の増加が妖怪の仕業とすると、範囲も人数も規模がおかしい。 11

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「私は全然別のこと考えてたんだけど…言っていい？」 恵里が前を向いたままで話しかけてきた。 「例えば、飛べる妖怪が外に出て人を拐って、巣に戻ろうとした途中で、餌の人間を落としたかしてクモに盗られた、とか」 「そっちのほうがまだ可能性はありますよね」 12

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恵里にしちゃ良い発想だ。回復薬に知能増強の副作用があるとは知らなかった。陸生のクモが外と往復するよりは有りそうな話だ。結界に、人を攫えるサイズの妖怪が通れる穴が空いてたのを何故見落としたのかって謎は残るが、そこはクモ単独犯説でも同じだ。森に戻ってくる説明がつくだけマシだ。 13

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「問題はなんで風科の人間を拐わねぇで遠出したのかってことっすよね。まして二十人くらい拐われてんですから」 「拐われた人か場所に条件があるのか…二例だけでは分かりませんからね。いずれにせよ難しい話は他の人達を助けてからですね」 結局は平行線だ。先に行かなきゃ話も進まねぇ。 14

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先を急ごうとした時、俺の頭上のエイジが腹とハサミを鳴らした。静かな雪道によく響いたようで、俺が口を開く前に、恵里は振り向いて俺と目を合わせてから楽進盤を覗き込み操作した。 「５０ｍ先…これは１匹？何これ？」 俺が近寄って覗き込むと、盤は妙な反応を映し出していた。 15

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デカい光点の中に小さい光点が無数にうっすらと入り込んでいる。それぞれＡ級とＤ級くらいだ。まさか…。１分ほどして、先輩が飛ばしていたドローンが戻ってくる。敵らしき反応はまだ３０ｍ先だ。迎え撃つか避けるか考えなきゃいけねぇ。俺達は盤を気にしながら映像を見る。 16

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「これは…コモリバケグモだ…！」 端末に移した映像を見て、俺は思わず呟く。コイツは戦闘用の子グモを大量に体内に飼い、それを打ち出して攻撃する厄介な奴だ。子グモを出す前に不意打ちで蒸し殺すのが最適だが…出来るか？いやそれより、何で別種のバケグモが同じ方向から来やがるんだ！？ 17

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フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #9 「強敵」 終わり #10に続く 実況・感想タグは #禁森実況 です。