フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #5 「瘴気」

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「フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #4 「分隊」」をトゥギャりました。 togetter.com/li/1024112

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まとめを更新しました。「フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 まとめ」 togetter.com/li/1024051

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（俺は片桐。田舎町の風科（かざしな）に住む高校生だ。一見すると平凡な田舎町の風科だが、町の北には人を食う妖怪の出る禁忌の森がある。俺は幼馴染達と一緒に、奴らを倒す組織、僚勇会（りょうゆうかい）に所属してる。年が明けて暫くした今夜は、森の北東の妙な反応の探索に来ている）

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（謎の反応はどの種類の妖怪なのかも、そもそも妖怪なのかさえ分からねぇ奴だったが、左程デカくはねぇんで甘く見てたところはあった。でも油断してた訳じゃねぇんだが、部隊の先頭を行く俺たちは合計４０匹位以上のバケグモの集団と出くわしちまった。流石に真正面から戦うのはキツい数だ）

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（後衛と包囲してぶっ倒すべく一度隠れることにしたんだが、半分をやり過ごしたところで残りに見つかっちまって何とかぶっ倒した。連中が繭に入れて運んでいた女を助け出したが、エサを生かして持ち運ぶなんて普段のこの種類のクモならやらねぇ妙な行動だ）

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（助けた女によると、２日くらい前に風科から大分離れたところで捕まったらしい。しかも２０人は捕まってたという。妙な話だ。禁忌の森には結界が張られ、常に監視もされている。俺たちに気付かれずに外に出て、しかもそんなに捕まえて戻ってくるだと？訳の分かんねぇことだらけだ）

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（後方で俺達がやり過ごしたクモ共と大人たちの戦闘が始まる。ラッタに女を山小屋に送り届けさせ、３人になった俺達は捕まった連中を救助するため、先行して偵察に向かった。瘴気レベル３。俺達みたいに高い耐魔力がねぇと耐えられねぇ本物の禁忌の森はもうすぐだ）

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クモと戦闘をした林を抜けて３０ｍほどの雪原を渡り、次の林に入る。ここの途中からはレベル３だ。森が本格的に魔に近づいていく。棲息する雑魚妖怪の危険度が増し、常人は立ってるだけでも発狂や死の恐れがある。風科の戦士でも一定の耐魔力がねぇと体に変調を来たす。禁忌の森、その本当の入口だ。

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フォビドゥンフォレスト２話「バケグモ大進撃」 #5 「瘴気」 実況・感想タグは #禁森実況 です。

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深夜２時。木の感覚は狭まり、雪は膝上１０ｃｍくらいまでに下がってきた。先頭を行く恵里が熱の出る杖を持って雪を溶かしてるから、体感じゃもっと低い。でも代わりに雪の下の地面が石や木の根でデコボコとしてきてっから楽になったとは言えねぇ。この先はもっと酷くなる。 1

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空気は冷え込んできてるが、動いてっからむしろ蒸し暑い。ポケットや髪の中にいる俺の仲間のクワガタ達はもっと大変だ。寒きゃ動けなくなるし暑すぎりゃ死ぬ。一方、恵里はコートを脱いで腹の前で袖を結んで羽織ってる。お前が一番暑いんだろうし気持ちは分かっけど女子的にどうなんだソレ。 2

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月は雲の中に下がってさっきより大分暗くなった。明かりは星明かり以外は、俺の背負ってる通信機付リュックから出てる緑のトーチライトと前に伸びてる暖色のサーチライトだけだ。ヘッドライトじゃ視界が限られ、懐中電灯じゃ手が塞がっから俺達の場合はコレが基本の照明具だ。 3

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林に入ってから５分かけて３００ｍほど歩いた。早いと思うかも知れねぇが、俺達の身体能力は常人より高い。雪のねぇ平地ならこの数倍はいける。 「あ、あったわ」 恵里の声。前を向くと恵里の目線の先には細長い木…に擬態した高さ５ｍくらいの柱「ツリー」があった。僚勇会の設備の一つだ。 4

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ツリーは太さ２ｍの奴と、その東西南北に配置された太さ１ｍの奴の５本１セットが基本だ。食料や武器を補充出来る。数は少ないが有線通信が出来るのもある。これが森のあちこちに設置されてる。一つ見つけりゃ現在地と他のツリーの位置が分かる目印にもなる。迷ったときの生命線だ。 5

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恵里が見つけたのは太い中央の奴だ。レベル３が近いと書いてある。今は食料も武器も充分あるから補充の必要はねぇが、帰りのことを考えて簡単な点検をする。つってもスマホ型の端末を近付けるだけで一発で終わる。暇がありゃ周りの４本も含めて中身まで見るんだが、流石にそんな場合じゃねぇ。 6

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恵里が回復薬を飲んで休んでる間に、俺が一跳びして小高いとこにあるツリーの前に行く。木の皮風のカバーをスライドさせ液晶画面にスマホを当てる。 「どうでしょう？誰か使ってますか？」 「無いみたいですね」 物資の残量は満タン。誰がが開けたり立ち寄った痕跡もねぇ。 7

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秋に補充してから誰も来てねぇ筈だが何でそんなことを聞くんだ？ 「捕まった人がこっちに逃げてれば、と思ったんですけどね。期待はしてませんでしたが…」 残念そうに溜息を吐く。謎の反応の近くとは言え、捕まってきた経緯が謎な上に、瘴気も濃い。生存者がここを通る可能性は小数点以下だ。 8

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「先輩、大丈夫ですか？」 「ええ…まあ念の為ですからね。先を急ぎましょう。恵里ちゃん、行けますか？」 「あ、行けまーす！」 恵里はストレッチを一発で中断して、移動態勢に戻った。俺達も移動する。いや、話は終わっちゃいねぇ。 「いや、それもですけど…瘴気の方です」 9

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森の瘴気は心身を侵食する毒だ。森の中にいる限り徐々に体に蓄積され、その量によって様々な症状が出る。無闇に腹が減ったり全身に不気味な発疹が出たり気が狂ったり、ロクなことにはならねぇ。外に出たり禊をすれば回復するが、症状が進行するとそれでも戻らなくなる。 10

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耐魔力次第では瘴気の侵食に耐えたり自力で浄化も出来るが、瘴気は森の奥に行くほど濃くなる。レベル３以上に何時間もいられるのは今の風科には俺らのほか、大人の数人程度…全隊員の１割も行かねぇ数だ。耐魔力は戦闘力に比例する傾向はあるが、生まれつきの部分が多く鍛えるのは難しいらしい。 11

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耐魔力は護符だとかで強化することは出来る。邪悪な魔術や妖術相手ならそれで良いが、全方位から常に空気やら水分として襲い掛かってくる瘴気相手だと全身を密閉しないと防げねぇ。放射能や細菌汚染対策の防護服か宇宙服みてぇな奴だ。そんな鈍重なのじゃデカい妖怪の攻撃を避けきれねぇ。 12

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そんな訳で耐魔力の高い俺達みたいなのが先頭を行く様になってる。桐葉さんや雷牙のおやっさんみたいな耐魔力の高い大人もいるが、レベル２以下でも場所によっては瘴気の濃いホットスポットもあるんで、後方にも配置するようにしてる。 13

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先輩の話に戻る。俺や恵里はレベル３で数時間どころか数日は平気だが、実は先輩は水準に足りてねぇ。代わりに高い魔力がある。瘴気を寒波、耐魔力を防寒性能に例えると魔力は燃料兼熱源みてぇなもんだ。先輩は防寒性能の低さを燃料を燃やしまくって補ってる感じになる。 14

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短時間なら俺らと互角以上の耐魔力だが長時間になると低下してく。しかも魔力は戦闘で消費するから戦闘力も落ちてく。だから自前の魔力量が多いのにもかかわらず、術と魔力が篭ってるレコードを武器にしてる訳だ。術だけ欲しけりゃ、魔力容量が少ない代わりにもっと軽いＣＤ型とかもある。 15