入江の魔人外伝【リバース・デイ別伝：立つは芍薬】

えみゅう提督 @emyuteitoku

「グワーッ！――百合ト芍薬／時代巡レバ／再ビ共ニ咲コウ！」戦艦棲姫はハイクを詠む。ハイクを聴き届けたピオンは戦艦棲姫を真上へ投げ飛ばし、その場で踊るように回り、艤装から三連装副砲を取り外し両手に装着する。ピオンが砲を直上へ構えると、艤装も応じるように宙を舞う戦艦棲姫に砲を向ける。

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「さようなら、Lilly（リリー）」ピオンは戦艦棲姫への手向けとして、かつて呼んでいた名を口にした。中空のリリーの体に無数の穴が開く。九門の砲から放たれる砲弾が彼女の体を切り裂き突き抜けていく。首がちぎれ飛びリリーに死が訪れる。だがピオンは彼女が爆発し消滅することを許さない。

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許すわけにはいかない。全てがわずかな報告の差で起きた間違いだったとしても、復讐心は正しく彼女の心に存在しているのだ。形など残すものか、亡骸を前にした弔いなどさせるものか。弾け飛んだ臓腑を、舞い落ちる毛髪を、無数の砲弾が欠片も残さず切り裂きすり潰す。

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撃てる物がなくなり砲撃が止んだ。ピオンは骨髄にまで染み渡った恨みを洗い流すどす黒いシャワーを浴びる。復讐は何も生まないと最初に言ったのは果たして誰か？こんなにも満たされ、潤い、救われるというのに。「復讐しないなんてもったいないことですわ。自分を磨くなんてとても愚かしい」

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自分が劣っていると嘆くからこそ誰かを怨むことができる、怨み晴らすからこそ人は満たされるのだ。悔恨は断ち切った、深海棲艦であった証は消え、六甲第二位【忌まわしきムサシ】が改めてここに完成する。「たくさんの事を教えて頂きました。感謝しますわぁ、レムリア様。…いえ――エミハルカ！」

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「これからも、ずっとずっとついていきますわ！ウフフ、アハハハハ！ハーハーハァハハハハ！！」

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【リバース・デイ別伝：立つは芍薬　　了】