- S_Wakame_S
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3-50 え。 こいつらって、それ私も含まれてない?いや、私はまだ新参なので……と口から出るより先に、駆逐艦達からは「マジかよ!?」「木曾先輩より強いって!?」と声が上がって動揺が広がっていた。おいおい。
2016-10-11 13:31:143-51 「いやー、ハマーン期待されてるねぇ」 「明らかに金剛さんたちのお話だと思うのですが」 「いいじゃんいいじゃん。好きにやれとのお達しだからね、好きにやろう!前向きに考えることが、後ろを向かない秘訣だよ!」
2016-10-11 13:31:383-54 ドウゾーの声が、鳥海さんと金剛さんと木曾さんのものが重なった。って木曾さんまでですか。 え、所属しておいてあれだけど、私はこれが藻類基地所属しての初出撃だし、1年ぶりの出撃だからかなり感覚とか鈍ってるんだけど。
2016-10-11 13:32:133-55 何より、私はこの方々の戦闘スタイルを全く知らない。艦隊戦らしく隊列を組んでの海戦しか知らないから、スタンドアローン全開なこの方々と足並み揃えるにはどうしたらいいかさっぱりなんですけど。
2016-10-11 13:32:403-56 「それなら、私についてくればいいわ」 そんな私を見かねてか、鳥海さんから助け舟が。ありがとうございます、助かります。
2016-10-11 13:32:553-57 「時間だ。いくぞ」 木曾さんから気合の入った一声がかかる。その一瞬、緊張の一線が張られる。 言葉は一切ない。笑い声も動揺も消える。 木曾さんの出撃命令を待ち、キリリキリリと緊張の糸が軋み、私の意識からも無駄が削ぎ落とされる。
2016-10-11 13:33:063-58 この身体は武器。深海棲艦と戦う艦娘。提督の命に従い、任務を遂行する物成。 懐かしい戦闘前の空気に、意識の底から、過去出撃し戦った場面が去来する。あんな戦いもあった、こんな戦いもあった。
2016-10-11 13:33:143-59 そして、私が愛した提督の顔。 彼と共に戦い、彼を守る為に私は戦った。 そして次に思い出されたのは、金剛さんの言葉『死なないでね』であった。
2016-10-11 13:33:213-61 先んじて五十鈴が飛び出す。 あれだけの重装甲でありながら、その挙動は非常に軽い。速度も他艦と比較するまでもなく頭一つ抜けており、単独で駆け抜ける。
2016-10-11 13:34:353-63 五十鈴が宣言する。バックパックから、通常兵装とは異なる起動音が鳴り、回転数を上げる。五十鈴の視界、メットバイザーには、モニターのように計器の類が光で表示された。 そして
2016-10-11 13:35:073-66 ナガラシステム。長良型駆逐艦1番艦長良の人格が、五十鈴の身体を覆うアーマーには内蔵されている。これにより五十鈴は、個でありながら複数人分の処理を並列展開して戦闘を行う。
2016-10-11 13:35:503-67 『五十鈴。ソナーに敵潜水艦隊観測。カ級4隻とヨ級2隻』 「1番から3番までの爆雷を発射準備。発射タイミングは任せる、私は加速して突っ込むっ!」 『潜水艦から酸素魚雷ッ!2時方向安置』 「了解っ!」
2016-10-11 13:36:093-69 ナガラシステムに潜水艦隊への爆雷攻撃を全て委ね、五十鈴は軽空母から発進された敵艦載機への対空迎撃に集中する。 「『発射ァ!』」 潜水艦隊の進路先への爆雷投下と、艦載機へ対空射撃が同時に開始した。個対多数の圧倒的不利な状況を、五十鈴とナガラシステムが圧倒する。
2016-10-11 13:36:433-70 個ではあり得ない弾幕に、深海棲艦側に衝撃が走る。 艦載機は五十鈴の両腕に握られた10センチ連想高角砲に次第に落とされ、潜水艦隊も爆雷の前に足踏みを余儀なくされ、そして沈む。
2016-10-11 13:37:093-71 『1隻逃した!ごめんなさい!』 「問題ないわ。それは後方に任せましょう。艦載機が抑えきれない、援護をお願い!」 『了解!』
2016-10-11 13:37:213-72 ナガラシステムにより、バックパックから更に3連装機銃が姿を現し、五十鈴と長良による更なる対空迎撃が開始された。こうなると、いくら制空権確保のエリートたる深海棲艦軽空母でも、制空権を奪うことは叶わない。 まさに圧巻。正に一騎当千であった。
2016-10-11 13:37:30