僕らに愛を

はち公。 @funkastic_8er

76 チラッと 顔を見ると 『なんよ？』 すぐバレて 「なんでもない///」 すぐ俯く ･･･私ね？安田君が好きで 貴方が言ってくれた言葉や 何気ない笑顔が大好きで 初めて手を繋いだ今日は 大切な記念日になると思う でも 貴方にはどうなのかな？ #僕らに愛を

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77 やっぱり気になって またチラ見したら 『だから！なんやねんw』 やっぱりすぐバレて 『なんか聞きたいん？ それならちゃんと聞き？』 ビルの前に止めてあった自転車の前で 問いただされる 「聞きたいこと･･･」 そんなの たくさんあるよ？ #僕らに愛を

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78 手を繋いでて ドキドキしない？ というか どうして私を ここに連れてきてくれたの？ どうして そんなに優しいの？ ねぇ 私の事･･･どう想って･･･ 「あの･･･」 勇気を出して 聞こうとした瞬間･･･ ────《栞乃！！！》 「･･･え？」 #僕らに愛を

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79 振り返った先にいたのは 「裕･･･くん？」 その人だった 裕くんは 見たことない剣幕で近づくと 《離せ！》 強引に 安田君と繋いでた手を引き離した 《帰るで！栞乃！！》 「え･･･」 《おばちゃん心配してるから！》 「あ･･･うん･･･」 #僕らに愛を

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80 確かに いつもならもう帰ってる時間 「安田君ごめん、帰るね」 『ん。また、明日な』 「･･･うん///」 そうだ 私達には また明日がある その言葉にほっこりして 聞き逃してた 彼の その一言を 『ったく･･･ 相変わらず優秀な番犬やなぁ』 #僕らに愛を pic.twitter.com/CmHVWBkF3g

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81 家に向かう裕くんの自転車は いつもよりスピードが速くて 「裕くん？」 《･･･》 「ねぇ･･･裕くん」 風に負けて 声が届かない （もう･･･ダメ） 仕方なく ギュッとしがみついて 必死になると 《･･･あ》 ようやく止まってくれた #僕らに愛を

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82 《速すぎた？》 「うん･･･」 《･･･すまん》 謝るその顔は まだ曇ってて 「ねぇ、裕くん･･･どうかした？ なんか、おかしいよ？」 《･･･》 「どうしてあのビルがわかったの？ っていうか･･･」 《･･･》 「安田君を、知ってるの？」 #僕らに愛を

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83 さっきの雰囲気は 初めて会った人同士とは思えない 「ねぇ･･･裕く」 さらに問いただそうとしたら 《知らん･･･あんな奴》 裕くんは ピシャリと否定するだけで 《ええから･･･帰ろう》 ･･･これ以上聞くな って 一線を引かれたのがわかった #僕らに愛を

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84 ねぇ 誰なら分かるの？ 誰なら 教えてくれる？ 何とも言えない この歯がゆさを クリアにしてくれるのは ･･･誰？ #僕らに愛を pic.twitter.com/uSQXhFqMHw

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85 〈なんそれ･･･完全怪しい〉 その日は金曜日で 学校帰り彩香の家に遊びに行って 〈裕くん知らん言うてたけど 絶対なんか知ってるやん〉 「うん･･･」 先日の出来事を報告した 学校ですぐ言いたかったけど 誰かに聞かれるのも嫌で この日を待っていた #僕らに愛を

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86 〈安田君は？なんて？〉 「それが･･･ ただのヤキモチちゃう？って」 〈けっ！！はぐらかしてる訳ね！？〉 彩香はじゃがりこを バリバリ食べながら 悔しそうにした その様子を見てると 少しほっとする 〈それにしても･･･ 私が知らない頃の事で？〉 #僕らに愛を

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87 「うん･･･だから何かあったなら 中学の前？」 〈でも、小学校の思い出にも 安田君、かすらんのやろ？〉 「そうなんだけど･･･」 ひとつだけ 心当たりがあるとすれば 「6年生の･･･1年間」 そう呟くと 彩香はハッとした 〈それや･･･〉 #僕らに愛を

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88 〈その1年分･･･ 栞乃、記憶無いんやもんな〉 私は小さく頷いた ────そう、記憶がない 小学校最後の1年間 ごっそりと抜け落ちた記憶 〈事故ったんやんな･･･〉 家族や裕くんの話によれば 裕くんと遊びに行った帰り 事故に遭ったらしくて･･･ #僕らに愛を

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89 完治に時間がかかったせいで 卒業式には出られず 卒業アルバムも 母さんが無くしてしまったらしい そのおかげで 中学にあがっても 同じ小学校だった子からは 接し方に迷うって感じで 距離を置かれ ひとりぼっちだった ･･･その時出会ったのが、彩香だった #僕らに愛を

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90 〈思い出すん･･･キツイ？〉 私を気遣って彩香は 小学校の話を避けてくれている 「大丈夫･･･だって 今はとにかく、手がかりが欲しい」 裕くんが隠してる何か 安田君が知ってる何か それを知らなきゃ 私はずっと部外者のままで 前に 進めない気がする #僕らに愛を

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91 「ねぇ、彩香･･･ 頼みがあるんやけど」 〈ん？〉 「明日さ･･･一緒に 小学校行ってくれへん？」 私ひとりで行くと言えば 裕くんに止められる気がする 母さんも 私が小学校に行くのを嫌がる ･･･だから、彩香と どこか別の所に行く振りをすれば #僕らに愛を

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92 〈私が一緒や言えば 小学校行くとは思わんやろうしな〉 「うん･･･どうかな？」 〈もちろん！ええよ！ あんのバカ裕の 隠し事見つけてやるw〉 「ふふw」 ･･･彩香を誘ったのは カモフラージュの為だけじゃなく 彼女が居てくれたら 心が楽になるから #僕らに愛を

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93 例えどんなに 裕くんが隠したくなるような 真実があったとしても 彩香となら 〈大丈夫！ 凹むような暗い事実やったら ストレス発散にカラオケ行こーな♡〉 「うん！頼りにしてるwww」 ────こうして私は パンドラの箱を開ける その日を迎えた #僕らに愛を

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94 ────そして翌日 彩香のおかげで 家族と裕くんの警戒を突破し 「うわ･･･懐かし･･･」 約4年ぶりの小学校へ 〈うちは隣町やからなぁ･･･ へぇ、栞乃と裕くんの母校は こんなんなんやね！〉 彩香も興味津々 〈どうしよ、まずどこ行く？〉 #僕らに愛を

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95 「そうだなぁ･･･」 キョロキョロ辺りを見回していたら ［かのちゃん！］ 頭の奥で またあの声 ［ちょ、プールんとこ来て！］ 「･･･プール、行く」 〈え、あ？うん〉 キョトンとする彩香をよそに 私はそこに向かった #僕らに愛を

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96 季節外れのプールは 草が生い茂っていて でも 微かに残る記憶･･･ ［俺な！今日あめちゃん持ってきてん！こっそり食べよー♡］ 〈ここに･･･何かあったん？〉 「うん･･･私、誰かとここで アメちゃん食べた･･･」 誰？ 君は、誰？ #僕らに愛を

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97 〈そか･･･ちょ、寒い！中はいろ？〉 「うん･･･」 校舎に入ると また声がして ［かの･･･こんな所で泣くなって］ 廊下の隅で 泣いてる私を 君が慰めてくれてた 〈わー！ 椅子も机もちっちゃいなぁ！〉 それを見たら また溢れる記憶･･･ #僕らに愛を

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98 ［かの･･･もうええってw］ 君の机に書かれたひどい落書きを 私は泣きながら消してたね 〈やっば･･･先生来たで〉 いきなりの来訪者を 怪しんだ教員がやって来ても それは止まらなくて ［かの、こんな時はあそこ行こ！］ 「うん･･･今行く」 #僕らに愛を

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99 〈え？栞乃？！えええ！？〉 引き止める彩香を無視して 私は 近くにあった階段を昇り始めた ［泣きたくなったらここにおいで］ そうだ そこが君と私の 秘密の場所 ［俺も悔しくて泣きたくなったら ここに来るからw］ そうだ 君はよく、泣いてたね #僕らに愛を

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100 階段を昇りきって 最後のドアを開けようとノブに触れる ［オレが手ぇ握っててやるから 怖ないやろ？］ 「そうやね･･･ 君がいたから、怖くなかった」 ────ガチャン 開いたドアの向こうに 広がるのは 廃墟ビルより 高校より 背の低い景色･･･ #僕らに愛を