人工知能のための哲学塾「現象学と人工知能」について

デカルトのフレームを超えて、今世紀初頭に、フッサールは「現象学」を立ち上げました。人工知能はデカルト的な機械論、記号論、分析哲学を汲む流れの中にありますが、現象学は人工知能をそこから解放し、より広い可能性に導く役割を持っています。ここでは、現象学と人工知能の関係について語ります。また、これに伴うイベントを10月23日(日曜日)19時から青山ブックセンターで行います。 人工知能のための哲学塾 http://www.bnn.co.jp/books/8210/ 続きを読む
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三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 「意識体験を私たちが志向的とも呼ぶ時、この志向性という言葉は、何かについての意識であること、すなわち思うこととしてその思われたものを自らのうちに伴っていること、ほかならぬまさにこのことを意味している。 」(デカルト的省察、岩波文庫、P.68)

2016-10-23 10:02:57
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 志向性は、現象学では、あらゆる精神活動が持つ内から外へ向かう流れです。そしてその活動は何らかの対象を持ちます。つまり経験をある方向に定義するものと言えます。

2016-10-23 10:23:55
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 対象は経験の中にいろいろな現れ方=様相(アスペクト)を持ちます。また対象に対する精神の志向性の流れを作用と呼びます。さまざまな対象と様相に対する作用の総体として経験を記述する(ノエシス・ノエマ)のが現象学と言えます。

2016-10-23 10:28:28
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 対象と言うのは、ここで現実に物質的に成立している必要はありません。たとえば、ユニコーンについて考えることも、イメージすることも、「ユニコーンの香り」について語ることも我々には可能なのです。

2016-10-23 10:30:53
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 さて、そういった見地に立てば、人工知能、人工知性は、あらゆる精神の作用の総体として作る、というアプローチが考えられます。単にロジカルなものだけではなく、そこにより広い精神活動を加えた知能を実現する、という立場です。

2016-10-23 10:34:27
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 さらに言えば、それ以前の経験の総体を人工知能の中に実現できるのか、という目標も見えて来ます。

2016-10-23 10:36:06
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 そんなことは可能なのか、と言われれば、やはり可能だという立場を私は取ります。と言うのも、人工知能を作る場合には、我々は常にフレーム(問題設定)を与えます。現在の人工知能とは、与えられた問題を解く存在なのです。ディープラーニングであろうとワトソンであろうと同様です。

2016-10-23 10:37:28
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 そういったフレームはいわば世界の解釈の仕方を固定した形で人工知能に与えることです。ちょうど子供に食べ物をかみ砕いて食べさせてあげているようなものです。世界を溶かすだけの胃袋を現在の人工知能は持っていません。

2016-10-23 10:40:02
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 しかし、それを持たない限り、人工知能は真に世界に立ち向かうことはできないし、自律した知能とはなり得ないのです。

2016-10-23 10:40:13
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 人工知能が世界から収集するさまざまな情報、信号をそのままの形で受け止めながらも、その情報の流れを、人工知能が主体的に世界から獲得しようとする志向性の流れと対決させること、が経験を生み出す。

2016-10-23 10:44:12
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 内側からの波と、外側からの波をその中間で対決させ、かき回す、ことで自分と世界が溶け合う状態を実現することができます。それはニューラルネットのリカレント型のアプローチそのものであり、またそこから記号的人工知能にも応用することができるでしょう。

2016-10-23 10:45:34
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 たとえば、現在KAISTにおられて理研でチームリーダーもされていた谷淳先生の研究は、そういった外部からの情報を入れて、自己判断がアウトプットされるニューラルネットワークを作り、その出力を外部からの入力に並列して再入力する、というリカレント型NNを研究されています。

2016-10-23 10:47:58
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 そこではニューラルネットワークの中に、自己構造化した力学系が出現します。私はこういったものが自我の発端ではないかと、考えています。そこには自己参照性があり、いわば意識がそこに再現されているのではないかと。

2016-10-23 10:48:57
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 こういったアプローチは谷先生の仕事を参照しながらも、記号的人工知能でも可能ではないかと考えています。その研究はこれから進めねばならないでしょう。しかし、ゲームの中でそれを再現することが可能なはずであり、実際に作っていくことで課題を克服して行きます。

2016-10-23 10:50:35
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 さて、このように現象学は、これまで無意識のうちに機械論的、思考偏重に閉じられていた人工知能の世界を、もう一度広い平野に解放する役割を果てしてくれます。

2016-10-23 10:51:39
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 今は、現象学そのものと、そういった解放の力として現象学を強調する双方が必要です。人工知能と現象学を合わせて考えることは、人工知能の次のステージを視るために必要なのです。

2016-10-23 10:53:09
三宅陽一郎MiyakeYouichiro @miyayou

#ai哲学塾 本日のイベントでは「現象学と人工知能」「人工知能と現象学」について語りたいと思います。aoyamabc.jp/event/philosof… 青山ブックセンター本店。19時から。予約なしに直接お越し頂いても大丈夫です。

2016-10-23 10:55:07