華ノ悪徳

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

単なる支配欲や、好奇心だけで女性を虐げる殺人犯が、過去に居たようでして。特に死姦で七人もの女性に暴行を働いたあの犯人には……生きて居る内に詳しく話を聞いて置きたいものでした。…何度も言いますけど、僕は物書きです、おそ松さん。妻を組み敷き、首を絞めながら犯す事くらいが精々な物でね。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

暴力は好きじゃあ無いんですよ。特に、女性の肌に痣や傷痕が残る様な物は。だって嫌じゃ無いですかァ……、母を思い出すあの滑らかな白に、無駄な色が混じるのは(何処迄も無機質に喋りつつ徐にペンチの柄掴み直し向かって左下、奥から三番目の歯手早く挟み込むと砕かぬ様加減しつつ強引に抜き取って)

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

（何処か楽しげに、然し妻に対して愛情深くも感じる騙りに終始、この男も戦争で狂わされた一人なのだと。戦時中精神を狂わせた人間を何十人何百人と目の当たりにしてきた事を思い出していた矢先、脳髄に直接響く鋭い痛みに体が一瞬硬直。）…ッ…が、あﾞ…あﾞあぁッが…！！

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

（意識を飛ばしそうになる程の痛みに全身に汗が滲み溢れ出ては、前側で縛られた手を強く握り締め爪が肌へと喰い込み血を滲ませ。意思とは関係無く全身が震え。）

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

…あー…、成る程。生きてる人間には、拷問向けですねェ…これ。つまらないなァ…(己指先に唾液混じりの鮮血が付着するのも構わず傷痕爪先で抉れば微量に残る歯髄へ刺激送りつつ引き抜いた歯足元に放り捨て)…歯茎への損傷も考えると、死後直ぐに施せる物でも無さそうだし、専門的な知識も要る。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

……、…そういやァ前歯って、歯の中で一番痛いって、物書き仲間が言ってたっけ(独り言ちつつ咥内より抜き去り掌にて弄んで居たペンチ一瞥すると相手上唇へ親指掛けた後露わ成る前歯に先端押し当て再度柔く挟み込み、筋張る己手の甲観察し乍ら隻腕後方へと思い切り引いては二本目の抜歯実行し)

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

（抜歯された奥歯の根元からどろりと血が溢れ出ては飲み込み切れず、喉に絡み軽く咳き込んだ際に口端から赤黒くなった血を溢し。今度は前歯をペンチで掴まれなんの躊躇もなく引き抜かれれば、直後は声も出せず唯々耐える様に縛られた足を踏ん張らせ身体全体へ力を入れ込み。）

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

……ッ（抜かれた直後、直ぐ様口を紡ぎ神経に触れられ無意識下に震える身体に対し、この程度の痛みで圧倒されている自分に情けなさすら感じては腔内に溜まった血を男が居るであろう正面に向かって吐き出し飛ばし、抜歯されても尚笑みを浮かべ）…極道舐めてんじゃねえぞ…

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

(激痛に耐え忍ぶ声音の中滲む疲労の色感じ取り乍ら痙攣と荒い呼吸繰り返す姿静か洞察するも突如絞り出された言の葉とほぼ同刻相貌へ吹き掛かる血飛沫に脊髄震わせれば反射的に閉じた両の瞼緩り開放し、拭い取る所作もそこそこに冷めた瞳孔書斎内彷徨わせふらり立ち上がって)……忘れる前に、メモ。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

早く、早くメモに記さないと、「経験」が褪せてしまう。今の僕に必要なのは、絶対的な「経験」だ。妻を持ち、家庭を持ち、「平凡」に成り下がった僕に何が書けるって言うんだ？そうだ、もっと「経験」を得ないと、………世間の望む作品は、生まれない。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

(確たる信念を持った男の言葉残る片耳押さえ書斎机へと身を翻すと散乱する原稿用紙に万年筆走らせ歪な文字の羅列連ねれば、僅か咳込みつつ洗面所へと歩み進めては早急に顔の汚れ洗い流し再び彼の前に姿表して)…ご協力、どうも、有難うございました。とても良い「経験」になりましたよ。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

これしか無いので、暫く噛んでてください(洗面所より持ち出した手拭い血の滴り落ちる口へと突き入れ下顎適度に押さえ付ければ噛んで止血する様促し)……もう七日も同じ空間に居るのに、不思議ですねェ、……妻に手紙を出しに行くと報告するのは、今日が初めてですよ。不吉極まり無い。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

暫く休んでくださって結構ですけど、…仮眠、取れます？睡眠も食事も排泄も、僕がずっと管理してるんで……狂った体内時計じゃあ上手く出来ないと思いますがァ、…まァ…頑張って、ください。宣言通り手紙を出す序でに、少し買い物もしてきます。

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はァー……、しかし、これも七回目となると、…洗脳効果を発揮するんですかねェ。おそ松さん、「逃げても、良いですよ」。

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………（未だ抜歯の衝撃で口元の震えが止まらないが、口に突っ込まれた布を噛み締めた状態で”手紙を出しに行く”と宣言し七回目にもなる言葉に何も答える事無く、黙り込んだまま鼻で呼吸を繰り返し。握り締めていた手の力を緩めた。爪が食い込んでいた傷口からは血が垂れ落ちる。）

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

（咥えている布も直ぐに真っ赤に染まり、男が最初に羽織っていた着物の色の様である。ふ、と、最初に此処へ連れて来られた時の事を思い出す。「アレ」は確か彼がよく言葉を自分へ投げかける時に居る場所。音だけではあるが左側にそれがある。そんな事を考えながら彼が出掛ける音を静かに見送る。）

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

(特に出掛けの挨拶を残すでも無く机の引き出しから手紙の入った封筒を取り出すと、小さく溢れる咳に肩口揺らしつつ玄関先へ向かい下履に足を通した後荒屋の戸を開け外気へと此の身晒し)…街まで往復小一時間、この天気だと降られそうだなァ…(背後手に引き戸閉ざして歩き出し乍ら曇天の空見上げ)

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（引き戸が閉まる音を聞けば暫し沈黙。自分だけになった屋内で、特攻を志願し飛行機に乗り込んだ際一度は死を覚悟した時に思い浮かべた一人の家族の姿を思い出す。血で真っ赤に染まり重たくなった布を口から吐き出し、ゆっくりと身体を横へと動かし息を吐いた）…随分と、残酷なもんだねェ…世の中は。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

ふ、…ふふ、はーぁ…（何が可笑しいのか分からないが自然と笑いが零れ落ち、暫く其の儘体を休めた後。膝を曲げながら重心を移動させゆっくりと体を起き上がらせた。あまり自由の利かない足で立ち上がり、手首は拘束されてはいるが手は自由に動かせる為壁に肩を預け凭れながら摺り足で移動）

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

（手の先の感覚のみで障害物を探していると硬い物に触れた。指先を滑らせるとそこには「紙」の様な物が無造作に散乱しているのが理解出来た。）…此処だ。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

（よく彼がこの場所で書物をしているのは五日目に気づいた。ゆっくり手を滑らせながらとある場所を探す。…机が途切れ、指先が落ちた。引き出しを探り当て静かに指先を引っ掛け手前へと引く。中に手を入れ感覚を頼りに動かす。この中に「アレ」が隠してある筈だからだ。）

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

（指先に、何かが触れる。紙ばかりが入ったその引き出しの中に、万年筆よりももっと太く硬い其れに確信する。）…やっぱりねェ…此処に、隠してると思ったんだ。返してもらうぜ、小説家さん。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

（一旦ソレを机の上に置き引き出しを閉めれば、落とさないように持ち再び自分が寝ていた屋内の隅へと壁を伝いながら移動する。見つからない様にと敷かれたままの薄い敷布団の下、壁側の方に隠せばソレを踏むように座り込み）…はぁ…やれやれ、…逃げてもいいですよ、か。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

（彼が帰ってくるまで暫くまだ時間がある、そう思い目を閉じた。）…これでいい。

【GRAND FINALE】 @GREAT_NONSIX

(雑木林を抜け段々と喧騒の音強まる方角へ左右危うげに揺れる身泳がせると忙しなく行き交う人の群れすり抜ける様闊歩し、草臥れた赤道外れに見付ければ迷う事無く其方へと向かい懐に収めた封筒至極大切そうに取り出し手元離れる間際微か名残惜し気に眼伏せるも投函済ませては次の目的地へ)